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Case 95-5

2021年10月5日 完成(2時間以上遅刻)


 『七災之肆(嘲笑う卵の子攫い)』の正体である肉片達と対峙する。

 彼等の渾身の一撃を粉砕するや否や、旗色悪しと千々に逃げていく……




【4月19日(土)・朝(9:11) ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】




「……ッ!」


 黒霧が薄れていく、肉片達が埃となって消えていく。

 彼等は昔日の『殺人』と同じく逃散を選んだのである。


 生きる為に、理想郷とやらを目指すために

 己が傷つかぬよう、相手の所為にし続ける為に……


(全然追いつけない……このままでは……!)


 相手は八朝(やとも)達を簡単に捻り潰せる力を逃げる為だけに使う。

 これでは追いつきようが無い、だが一つだけ相手を殺し得る技は存在する。


 一震反閇……震脚と反閇の良い所取りのこれなら今からでも殺せる。

 だが、使おうとしないのは『次の反動で死に至る』という確信に他ならない。


 つまるところ、返し風が問題である。

 呪詛の際に取り残された分が術者を蝕む、これが一震反閇では驚異的である。


 周囲の龍脈を捻じるのだから、返し風も大地の力が単位となる。

 土石流に抗える超人がいないように、その一吹きは人体を容易に壊滅せしめる。


 八朝(やとも)が無事なのは『辰之中用の複製』という特異性に加え

 異能力による身体強化という相乗効果(シナジー)を抱えているだけに過ぎない。


 そう、2度目は無い。


「逃げるな……逃げるな……ッ!」


 だが、人知を越える『七災』を前に言葉はただ虚しいだけ。

 圧倒的な力量差を前に、八朝(やとも)は無力であった。


 そう、八朝(やとも)は……である。




『Libzd!』




 明けゆく視界は突如として顕れた闇色の帳によって閉ざされる。

 八朝(やとも)すら巻き込んだ超重力の『弾圧(グラムアンブラ)』が『七災』を捉える。


 そして、化物(ナイト)と同じく魔力の塊である黒霧も例外ではない。

 己の眷属たちを別枠で電子魔術(グラム)を使用できるよう改造したのが仇となった。


 前半では八朝(やとも)達の戦う力として利用され

 今現在では、肉体を得たばかりに崩壊という名の『死』と向き合わされている。


 先程とは異なりボロボロと怨念が崩れていく……


『おのれ……!

 この……我等の分際で(・・・・・・)……ッ!』


 肉塊は動くことすら許されず、空震に晒されるだけの小石と化した。

 その中で出てきた悪態は、肉片達の本性を的確に表すものであった。


三刀坂(みとさか)……?」


 その中を三刀坂(みとさか)が悠々と近づいてくる。

 八朝(やとも)に一瞥もくれる事なく、ただ肉片の下へと近づく。


「最後に一つだけ聞いていい?」

『我等について知りたいのであれば汝も旅に……』

「そんなのどうでもいいから

 もしかしてでいいけど、『別の世界から来た』だなんて言わないよね?」


 八朝(やとも)三刀坂(みとさか)の突拍子の無い質問に唖然とする。

 相手は人間ですらない、神隠し症候群が発症する余地が無い筈。


 だが、肉片たちが嘲笑うように……


『そうだ、と言えば?』

「だったら、異世界人(わたしたち)を大切にしない貴方達に掛ける言葉は無い」


「死ね」


 三刀坂(みとさか)の冷酷な一言と共に、重圧が爆ぜたように強くなる。

 八朝(やとも)は身体を捻じられるような苦痛の中で『七災』が消滅する様子を目撃する。


 そして、自分も巻き込まれた意味を漸く察する。


 三刀坂(みとさか)の『弾圧(グラムアンブラ)』は罪の数だけ重くなる電子魔術(グラム)

 込められた罪とは先程述べた通り『異世界人をぞんざいに扱う事』である。


 重圧が開け、元の世界へと戻る。

 それでも背を向けたまま三刀坂(みとさか)が問いを投げる。


「ねえ、まだ守ってくれてるよね?」

「……」




「もう戻る必要が無いから何してもいいだなんて思ってないよね?」




 もしかすると、彼女はあの一瞬で察してしまったのかもしれない。

 一震反閇が『八朝(やとも)』を破壊しかねないのだと、それを使った真意を。


 故に、問うているのだろう。


「……その為の『鎮圧』だ

 それでも信じられないなら、ずっと俺を監視してくれてもいい」

「うん、それは言われなくてもしてる

 でもね、一回ぐらいはこうやって締めないといけないって思って」


「大丈夫だ、心配しなくてもアレの所為で漸く俺の身体の限界が分かった」


 随分と情けない物言いであるが、八朝(やとも)が答えられるのはここまで。

 振り向いた三刀坂(みとさか)は、眦に涙を浮かべながら微笑んでいた。


「だったら、次は本当に気を付けてよね……

 これでも八朝(やとも)君の素直さには期待しているんだからさ」

「それは痛み入る」

「さ、集会もまだ終わってないし体育館に戻ろ?」


 三刀坂(みとさか)の差し伸べた手を掴み体育館へと戻る。

 既に議題は『電子魔術(違法アプリ)の禁止』の採択にまで及んでいた。


 ここに、篠鶴高校という名の『聖域』が誕生したのであった。




◆◇◆◇◆◇




 ………………。




Interest RAT

  Chapter 05-e   道連れ - Extended Suicide




END

これにてCase95、七災之肆(Ⅱ)の回を終了いたします


最初は被害者だったものが、加害者へと豹変する

ありそうで無い怪現象があまりにも身近になってしまいましたね……


それはさておき、主人公君も気を引き締めてくれるといいのですが

全然触れなかったのも問題ではありますが、三刀坂ちゃんは元々そういう人なんですよ


だって、大切な人がどこぞの馬の骨に乗っ取られて好き勝手にされたら……


次回は『闇市』であります

それでは引き続きよろしくお願いいたします

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