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Case 92-5

2021年9月19日 完成

2021年9月20日 ストーリー修正+誤字修正(前書き日付)


 少し時を戻し、柚月(ゆづき)の状況を見る。

 襲い掛かってくる化物(ナイト)達にある『法則』が見え始める……




【4月14日(火)・夕方(18:00)  鳴下地区・駅前大通り】




 八朝(やとも)達が先を行って通算6体目の化物(ナイト)を引き裂く。

 どれだけ切り殺しても湯水のように湧いてくる化物(ナイト)達。


「……」


 どれもこれも攻撃方法は非常に単調。


 食肉目なら首筋への食らいつき、節足動物は物量、人型は道具使用。

 いずれにせよ攻撃後の致命的な隙を狙って(アーム)で引き裂けばいい。


 特に相手の攻撃が(エレメント)で見える柚月(ゆづき)なら尚更。

 負ける要素が何処にも存在しない、だが……


(……さすがに、多いかも)


 強すぎる知覚が疲労を引き起こし、徐々に足を重たく鈍らせていく。

 呼吸と能力(ギフト)がトレードオフとなる彼女は長期戦を避けるべきであった。


 段々と取りこぼしてかすり傷程度のダメージが蓄積していく……


(ふうちゃんたちはだいじょうぶ、かな?

 あっちの『群れ』はみんな亀裂にすいこまれていったけど……)


 それにしても奇妙な現象であった。

 あれだけ多様な『気』を発する化物(ナイト)達が例外なく亀裂へと落ちていった。


 羽虫型(アステロペ)鳥型(ケラエノ)霊獣(マイア)も例外なく。


「……ッ!?」


 またもこちらへと群れが襲い掛かって来る。

 もう既に一匹ずつ対処する体力も観察力も残っていない。


 朧げに、『灰』の気配を視認しながら立ち向かう。


(あれ……これって……)


 柚月(ゆづき)が思い出したのはいつかのテレビ番組の内容。

 なぜ埃が灰色をしているのか、その仕組みは至って単純なものであった。


 あらゆる色の糸が絡み合って色が混ざってしまったから。

 小学校で初めて絵具を混ぜた事がある人なら誰しも想像がついたのだろう。


 それと、目の前の状況が非常によく似通っている。

 そしてもう一つ、似たような妖怪伝承について八朝(やとも)が確か……


「……ッ!」


 『灰』の気配は至近距離にて『極彩色』へと変じた。

 読みは正しかった、だが正しかったが故に柚月(ゆづき)では対処不能である。


 そもそも彼女の能力(ギフト)は『属性(エレメント)』の法則から外れている。

 即ち、集合離散の四元素説ではなく生々流転の陰陽五行説。


 彼女の視界の中の『属性(エレメント)』とは季節のように移り変わる。

 故に『色』として見えているのである。 


 だがそちらの考えでも『雑気(ごくさいしき)』が癸になる筈が無い。

 精々、四庫の丑辰未戌、或いはそれらを代表する戊己(黄・茶)である。


(どうして灰色(みずのと)に……? それに……)


 恐らく八朝(やとも)達の交戦が始まった後、もう一つの色が現れた。

 灰よりも少し白いだけの(かのと)、恐らくは見間違いだと思っていた。


 正しいとすれば、辛金と癸水を孕む気……それは一つしかない。

 だが、それよりも前に化物(ナイト)の群れに押し潰されて絶命するだろう。


 見覚えのある闇色の帳が群れを地面に縫いつけるまでは……


「……!? みっちゃん……?」

「間に合った!」


 駅の方から三刀坂(みとさか)八朝(やとも)の姿。

 だが注目すべきは化物(ナイト)達の『振る舞い』であった。


(あれ……押しのけられていく……!?)


 化物(ナイト)達は『弾圧(グラムアンブラ)』の超重力に囚われている筈なのに

 少しずつ、じりじりと滑るように闇色の帳の外縁へと逃れていく。


 そして復活した化物(ナイト)は前に進んでいく。

 統率は取れていないのだが、全方位へと散っていく。


 ……まるで、水のように。


■■(alp)!』


 八朝(やとも)が近づいてきた化物(ナイト)灯杖(alp)を叩きこむ。

 倒すのではなく防御するための一撃……だった筈がそうならない。


 弾き飛ばされた化物(ナイト)が塀にぶつかって再びこちらに襲い掛かる。


方違・青竜天耀(ふえて、のびる)


 天戊地丁、即ち柚月(ゆづき)の十八番の一つの斬撃による機銃掃射。

 殆どが化物(ナイト)へと命中し、その身体をバラバラに砕いていく。


 それがあと2回続いて、漸く化物(ナイト)の群れが収まった。


「今のうちに逃げるぞ!」


 八朝(やとも)柚月(ゆづき)を負ぶって北の鳴榑橋へと走る。

 化物(ナイト)は最後まで追いすがるも、橋のたもとで様子がおかしくなる。


 大半が橋のそばの川辺へとなだれ、残りは橋の両脇へと段々と落ちていく。


「これは……」


 どうやら八朝(やとも)も同じ考えに至ったらしい。

 橋を渡り切った頃には、最早『鳥居印(屋内)』に頼るまでもなく。


「ねえ、あれって……」

「……今は家に急ごう

 夕飯もあるし、落ち着いてからの方が頭が回ると思う」

「それもそうだね」


 柚月(ゆづき)も訊かれるまでもなくうんうんと頷く。

 色々と手掛かりはあったものの、整理する時間が必要である。


 それにはまずマスターの許可が必要な筈だが……


(あれ……れんらく、しないの?)


 八朝(やとも)が一向にマスターに報告することなく三刀坂(みとさか)と談笑する。

 柚月(ゆづき)も事情があるのではとツッコむ声を抑えておくことにした。


 なお、それが二重の過失となってしまったとは言うまでもなかった……




◆◇◆◇◆◇




 NO_DATA




Interest RAT

  Chapter 02-e   錯覚 - Fairy Tricks




END

これにてCase92、鳴下駅東口の衛士Ⅰの回を終了いたします


なんか、全体的に水っぽい話でしたね?

それと騎士みたいな出で立ち……まるで『ある人』のようにも見えなくもない


何にせよ有力すぎる情報は入ったようです

さて、主人公たちは七災に対して初勝利をもぎ取ることはできるのか?


次回は『魍魎』

引き続きよろしくお願いいたします

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