Case 91-5
2021年9月14日 完成(92分遅刻)
最早殺し合いと化した体育の授業。
勝利を目前とした所で沓田の異能力をモロに食らう……
【4月14日(火)・放課後(16:30) 篠鶴高校1F・保健室】
授業終了のチャイムにつられて八朝が目を覚ました。
「ここは……ッ!?」
目が覚めて、上体を起こそうとした八朝に激痛が走る。
霧による自己診断で火傷のダメージが残っていると見抜く。
直近の記憶からして、沓田にやられたのだろう。
(……結局昼休みはアウトだったな)
ベッドの傍らにある棚に一枚の置手紙があった。
内容と筆跡からして柚月のものに違いなかった。
因みに彼女は一足先に帰宅していた。
「ああ、君はあとちょっとは動かないでおくれよ」
八朝が起きた事に気付いた保険医が言葉だけを寄越す。
彼に言われるまでもなく暫くは動けない状態であった。
「そうか、思った通り君は異能力者にしては温和なようだ」
「……そう見えるのか?」
「4時限目の話は既に聞いている
何でもたった一人の非能力者を守るよう戦ったらしが……」
「どうしてそんな意味の無い事を?」
それは奇しくも助けた非能力者の言い分とほぼ同じ。
八朝は呆れ果てたように溜息を吐いた。
「意味のない行動をするのが趣味なので」
「そうかい、随分と変わっているね」
「そりゃどうも」
まだこの世界がどういったものか判然とはしない。
だが、道理が全く通じない以上は話をしても無駄。
ということで、痛む身体を無視して帰り支度を進める。
歩いているうちに自然回復で元通りなので気にする必要はない。
「まあ待ちたまえ」
保健室のドアに手を掛けようとした所で呼び止められる。
「僕は磯手李四
君とは長い付き合いになりそうだからね」
握手を求められたので一応握手で返すことにする。
その様子を磯手は興味深そうに頷いている。
「何か?」
「いや、些細な事ではあるがね
君……少し他の人に絶望し過ぎてはいないかい?」
核心を突く指摘だが、八朝にとっては一歩遅い。
単なる妄言の一つとして無視することにした。
「ああ、些細な事だからね
その反応になるのも分かるよ、だが……」
「……まぁ、それも『些細な見落とし』でしかないからね」
それをさよならの代わりに言い残す。
保健室の外は、圧政さながら不気味な静寂が広がっていた。
【4月14日(火)・放課後(17:00) 抑川地区・某所】
帰り道は想像以上に渾沌を極めていた。
誰しもが端末を睨み、前を一切向いていない。
その理由は言うまでもなく異能力者対策である。
「死ね!」
遠くで爆発音と悲鳴が迸る。
恐らくは異能力者によるものだろう。
何しろ爆発なのに肌を刺す冷気が漂ってきたからである。
そんな電子魔術が存在するわけがない。
彼等は化物を倒す訳でもなく
更に弱い非能力者から金銭や生殺与奪権を巻き上げている。
(……ここまで、なのか)
辰之中が無いだけで異能力者の実力が顕著に出てしまっている。
だが疑問はある、際限なく連発できる電子魔術の方が強い筈……
その答えは端末画面にあった。
(……RAT_Visionが無い?)
それは電子魔術発動に必須のアプリだが画面には存在しない。
代わりに、付近の異能力者の位置情報を伝えるアプリが入っていた。
牙は抜かれたが、逃げ道は用意されているというべきか。
だが、非能力者も丸腰という訳ではなかった。
(……化物が販売されている?
だが、一つ目級だと気休めすら……)
一番手ごろな値段の化物のスペックに頭を抱える。
これではワンチャン転生したての八朝すら勝てるレベルである。
そんな社会の闇を素通りしながら家路を急ぐ。
(……)
歩くこと数十分程度、ようやく太陽喫茶前の通りに出る。
この付近は大通りかつ衆目ということもあり比較的平和である。
だが、何故か後ろから視線を感じる。
(気のせい……か……?)
ここで霧を使えば素性を明かにしてくれるだろう。
だが、敢えてここでは異能力を誰も使わないという状況に躊躇する。
考えているうちに太陽喫茶の屋外テラスへと辿り着く。
そこには意外な人物がいた。
「あっ、八朝くん!」
「……三刀坂なのか?」
「聞いたよ今日の体育
沓田くんに吹っ飛ばされたって」
「何だ、失望したか?」
その返しに三刀坂が否定する。
いつも通りの心配するような目で、だが少し何かが違うような。
まるで願うように八朝に問いを投げかける。
「もしかして、私の事覚えてる?」
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Return 0;
Interest RAT
Chapter 01-e 変容 - Alteration
END
これにてCase91、■■■■の回を終了したします
始まりました第4章、最初からエリスがいません
ということでタイトルに付随する情報がこれからバグります
つまりは、まあそういうことです
変わり果てた篠鶴市に、いなくなったエリス
主人公はどう動くのだろうか?
次回は『偵察』
それでは引き続きよろしくお願いいたします




