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Case 88-3

2021年8月19日 完成(109分遅刻)


 柚月(ゆづき)と合流し、お互いの無事を確認する。

 一刻も争う事態なので『裏』ではなく『表』の出口である中央監視塔を目指す……




【3月13日(金)・夕方(18:26) 隔離区画(Section・G)・観音通路】




『ふうちゃん、これで主要通路に出れる!』


 監視の目を掻い潜り、増員された職員を撒き

 ようやく隔離区画(Section・G)のメインストリートに出れた。


 この区画は、監視塔『大鬼』を中心とする放射状の通路で構成され

 メインの6方向を『観音』、それらを互いに繋ぐ『九字』、末端収容区画の『別処』。


 つまりこの通路は唯一の出口である『大鬼』に通じているのだが……


「な……これは……!?」


 メインと名を打った『観音』はまっすぐ伸びず複雑に折れ曲がり

 遠くで『大鬼』の高塔が霞んで見える(・・・・・・)だけの迷宮であった。


『そ、そんな!

 確かに反応では一本道で繋がってたのに……』


 単に監視の死角を増やすだけの『九字』が

 まさか本来の通路だとは誰も思いもしない。


 後ろから職員たちの足音が微かに聞こえてくる……


「仕方ない、道順通りに……」


 そう口にしようとして柚月(ゆづき)に袖を引っ張られる。


「何かあるのか?」

「ふうちゃん、これ……一度やったこと、あるよね?」

「一度って……」


 八朝(やとも)が何かに気付いて突き当りまで走る。

 壁の前で右後・稍左前・稍左後・前・右後・右前・前・稍左後……


 そして稍左前に大きく一歩、壁に突進する。


『ふうちゃ……え!?』

柚月(ゆづき)、助かった

 まさか篠鶴家本邸の仕掛けと一緒だとは」

『あっ、反閇の!』


 エリスもこの壁の仕掛けにようやく気付く。

 恐らく構造を調査できる人対策で魔力を乱す『壁』が採用された。


 傍らの操作盤(コンソール)から、職員のみは突破でき

 律儀に『九字』の迷宮を暴進する脱走者を挟み撃ちにする。


 そしてその『壁』の突破方法は『前の6月』で既に編み出した。


「ふうちゃん、いそご……!」

「ああ!」


 八朝(やとも)が念のために幻影(samek)

 わざと迷う一向を仕立てて時間稼ぎの一手を繰り出す。


 そして壁を反閇で突破しながら、真っすぐひた走る。

 後方で職員が挟み撃ちに失敗し狼狽する叫びが聞こえる。


 じきに相手も正面突破を使うだろう。


(逆にこの壁の星の位置を変更出来たり……いや)


 またも、八朝(やとも)の頭に妙案が去来し

 突破したばかりの壁に手を当てて『遂水桃花(かたたがえ)』を使う。


桃花曲脈(まがれ) 漏星勅令(いちにち) 天盤虚遷(てんのほし)


 中央と後方の丙を踏み、壁に掛けられた式盤を回す。

 それだけで九天の位置が変わるので先程の反閇の手順では突破不能。


 ましてや、操作盤(コンソール)認証に頼る彼等なら尚更である。


「……!」


 何度か認証エラーの警告音が響く。

 企みは2度に渡って上首尾となり、更に優位を確保していく。


「ふうちゃん……これおわったら、しゅぎょうしない?」

「……俺の才能ではこれ以上やっても意味無いと思うが?」

「ううん、ものすごく、すじがいいかも」


 柚月(ゆづき)が食い気味で八朝(やとも)に注目する。

 少々こそばゆい気がして話題を逸らすことにする。


「……まだ、この通路を封じただけだ

 あと5つがどう出るかは分からない、待ち伏せも視野に入れるぞ」


 それを聞いて柚月(ゆづき)も戦闘態勢を取り始める。

 小細工が効くのはここまでで、ここからは八朝(やとも)の苦手な力押し。


 通路の先に『大鬼』に相応しき巨大な塔が聳え立つ。

 そしてその入口にある人物が立ち塞がっていた。


『驚いたな

 電子操作は妖精(RAT)の領分と聞いたが、お前までもか』

金牛明彦(かなうしあきひこ)……!」


 篠鶴機関の長がたった一人で八朝(やとも)達に対峙する。

 不思議な事に5方向からも大鬼の口の奥からも気配が全く無い。


「……どういうつもりだ?」

「どういうも何も、忌まわしい事にお前が全ての壁を封じたのだろう」


 その一言で八朝(やとも)とエリスが呆れ果てる。

 この構造体全体を共通の設定のみで塞いでいたとは思うまい。


「次からは通路ごとに設定を変える事をお勧めする」

「ふむ、言われるまでもないがそうしよう」

「なら俺達は見逃してくれるか?」

「そうはさせぬ

 如何に功績を積まれようがNo.116843(天ヶ井柚月)は無理だ」


 当たり前であるが、話は平行線となった。

 物量は無いにせよ、彼一人だけでも一騎当千といっても過言ではない。


 時空間を歪め、そのエネルギーで全てを破壊する潮汐弾性(ギフト)

 それを街中にまで拡大する大量破壊兵器・アングル。


 これで妖魔ではないというのが冗談にしか聞こえない。


「『アングル』があれば妖魔も倒せるだろ」

「……理解の速さからして既に対面している筈だ

 ならば妖魔の恐ろしさは身に染みただろう、違うか?」

「……ああ、アレの『速さ』を捉えるのは不可能だ」


 その答えは、この状況が雄弁に語っていた筈だった。

 この機関長すらも匙を投げて、妖魔の意向に従っている。


 そう、柚月(ゆづき)からも聞かされない意向によって……


「俺は妖魔を倒す、それ以外に余計な事はしない」

「平時であれば支援するが、篠鶴市を守る立場から許容し難い」


 無言で機関長の宣戦に応える。

 もう今は飯綱もいない、だが彼を倒せないであの妖魔に適う筈もない。


 避けられぬ試練に、灯杖(alp)を握り締めて立ち向かう。


続きます

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