Case 07-10-1
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2020年 5月15日 完成
2021年 1月26日 ノベルアップ+版と同期
2021年 2月 9日 ノベルアップ+版と修正内容を同期
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【TIMESTAMP_ERROR ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】
(ごめんなさい……天ヶ井さん……!)
文字通り鬼に変化した鉄砲玉が放った謎の異能力によって視覚聴覚が封じられてしまった鳴下と天ヶ井(妹)。
今まで天ヶ井(妹)が鬼の猛攻を捌けたのは鳴下の神経掌握毒によるものであった。
鳴下神楽
伝説に名高い双子の創始者により鳴下家一族にしか伝えられることの無かった異能力とも電子魔術とも異なる魔力操作法。
一つ一つの技に『竜』の名が付けられる中、鳴下雅は所謂火事場の馬鹿力を安全に励起させる『竜眼』を修めていた。
これによる超回避も五感を封じられては意味を為さない。
来るべき衝撃に備えて眦を滲ませるほど固く目を瞑る。
……。
…………。
………………。
(あれ……一体何g……ッ!)
無音からの絶叫をそのまま聞いてしまった鳴下は、頭を金属で殴りつけられるほどの激痛に顔を顰める。
光に慣れた視界の中で、あの屈強そうな鬼が右手首を押さえ、血と苦悶を漏らし続ける。
「ようやく見えた
あなたの『色』が」
「舐めるなッ! 断罪者!」
再び鬼の姿が掻き消える。
砂煙と微量の血飛沫を伴う高速移動で翻弄する中、天ヶ井(妹)は杖で地面を一突きして瞑想を始める。
やがて弾かれたように振り向いて突きを放つ。
鬼の一撃とかち合ってお互いが弾き飛ばされる。
(嘘……)
絶句する鳴下。
今、天ヶ井(妹)は竜眼も無しに鬼の一撃を防ぎ切ったのだ。
「くっ!
此れなる上尸よ閉眼すべし / 加えて中尸よ馬耳東風を為せ!」
再び五感封じの異能が発動する。
即ち、鬼の怪力乱神等ではなく日光の霊廟に住まう三猿。
見ざる、聞かざる、岩ざるの呪い
それが鬼の能力の全容である。
今度こそ終わりと思っていたが……
(天白地紫・七殺星 丙け)
そう聞こえた気がした。
再びあの大音響とともに感覚が元に戻る。
今度は鬼の右腕が根元まで真っ二つに引き裂かれていた。
このダメージでは流石に依代の回復すら追いつかない。
やがて途切れるように絶叫が止んでいき、辰之中の冠水に倒れ込む。
だが素直に喜ぶことが出来ない。
ある恐ろしい気付きに囚われてしまったからである
……この魔技を知っている。
(これっておばあ様が言っていた『竜尾』の一撃……
十の気を捉え、相手の強みを破壊する■■の……)
余りの衝撃に鳴下が言葉を失う。
それが事実なら、目の前の少女はおばあ様と同い年でなくてはならない。
『……ッ!
やりましたわ! これで……』
喜び勇む鳴下とは異なり顔面蒼白となる天ヶ井(妹)。
まさか自分の考えが漏れ出たのかと心配する鳴下。
思わず目をそらし、己の蛇頭を天ヶ井(妹)の服の中に滑り込ませて隠す。
だが、特に変化が無い。
伺い見てみると、涙を流して焦っているようである。
今更罪悪感が襲い掛かったのかと思い、心配で声を掛けてみる。
『どうしたのです?』
「はやく……はやくいかないと!」
『そこまでする必要ないですわ。
相手も殺す気で私たちに襲い掛かって……』
弾かれたように走り出した天ヶ井(妹)が、目の前で昏倒している鬼を無視して更に向こうへと急ぐ。
「ちがう!
はやく、ふうちゃんを病院に連れて行かないと!」
その瞳の中で何を見たのかは鳴下には分からない。
だが天ヶ井(妹)の目にははっきりとその証拠を捉えてしまっている。
生命と喩えられる甲尊を、無慈悲に殺戮する六庚の白。
命を散らしたものが流す真っ青な気の流れを……
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「大丈夫だ。
少々の計画変更ぐらいこちらでなんとかなる」
やはり何度も鹿室に泣きつくわけにはいかない。
決意と共に相手からの援助を断る。
それ以降は沈黙を続けるのみで、最早通話自体が無駄となった。
赤い石をポケットにしまい、何ができるか頭を巡らせる。
(そういえば、三刀坂の能力を考察したことが無いな……)
もしも三刀坂の依代を完全模倣し、あの壊れかけている騎士槍と取り換える事が出来るのならば……
そうと決まればいつものイメージ探しである。
幸いにも、三刀坂の奮戦の甲斐もあり雑霊の数が目に見えて減り始めていた。
(重量を操る能力とは聞いていたが空も飛べるとは……
まるで負の重量を許容しているようにも思える?)
それは神出来の事件を彷彿とさせる異常さであった。
結局あの時の夢遊病は水星の魔方陣によるものであり、魂が負の質量を持っているという暴論は机上の話で終わった。
別の可能性があるのかもしれない。
(……何故砂の巨人を抉れるんだ?
俺がRATを電子魔術で射出した時は確か透過した筈だ)
そう、三刀坂の騎士槍は確かに砂の巨人に大きな穴を開ける事に成功している。
挙動としては流体に近い筈の砂の体を固めて……
(水で固めてる……?
そういえば飛んでいる時も水が流れているみたいに慣性が残っていて……ッ!)
だがそこで強烈な頭痛が思考をぶった切る。
垣間見た風景は二つ。
一つは極寒の川の畔の都市で、意思を持たない筈の青銅像に挑みかかるほど狂った男の姿。
もう一つは見覚えのある情景であった。
八朝が三刀坂に告白し、満面の笑みでOKを貰う暖かな馴れ初めの記憶。
(そうか……
涼音、なんて呼んでいたんだな俺)
鈍い頭痛と共に次々と記憶が蘇っていく。
ああ、そうだ自分は■■■に復讐しなくてはならない。
(鬧?岼縺??√◎繧後?蜷帙?險俶?縺倥c縺ェ縺?シ∵?昴>蜃コ縺励※縺ッ縺?¢縺ェ縺?シ?シ)
何かが聞こえた気がした。
でももう関係はない、この力を使えばあんな奴なぞ簡単に粉砕できる!
『Libzd』
三刀坂の能力の固有名を呟くと、手の中にあの騎士槍が出現する。
あんなに難しかった能力の模倣が簡単に終了した。
だがこれだけでは足りない。
(ああ、やろう。
涼音の能力が勝利に属するなら、慈愛の柱が使える!)
蘇った記憶と、八朝が極めた秘術を応用させる。
即ち、八朝が■■の為に磨き上げたカバラ魔術擬き。
『Ghmkv
運命の輪、教皇! 我が手の勝利をロゴスの座へと導け!』
騎士槍に新たな力が宿った……気がする。
試しに寄ってきた雑霊に新生した騎士槍の威力を試す。
『Libzd……ッ!?』
騎士槍では触れられない霊体を霧散させたどころか、地面を大きく凹ませる威力を発揮した。
三刀坂の異能力と、愚者の相殺がどちらも発現している。
「これならいける……!」
これまた丁度良く近くまで飛ばされてきた三刀坂を呼びつける。
「涼音!
これを使って………………」
三刀坂が、八朝の腹を騎士槍で貫く。
『!?
ふうちゃん!?』
「お前が……お前みたいな悪魔が!
その名で私を呼ぶなッ! 死ね! 死に晒せ!! ■■■!!!」
敵に見せていた憎悪をこちらに撒き散らしながら、何度も騎士槍で八朝を貫く。
八朝は卒倒できぬまま依代が砕けた時の罰則痛と腹を抉られる激痛に呻く。
助けに寄ったRATを騎士槍で叩き落され、本体が致命的に損傷する。
障壁魔術を張る余裕もなく、もうあの元気な声が出てくる事は無かった。
「よく……ました…堂!
そうでなくては…ら十死の諸力の………でしょ…」
(何故だ……
なぜ……こうなったんだ……)
恐ろしく冷たい瞳でゴミムシのように足掻く悪魔と、産業廃棄物を睥睨する三刀坂。
やがて新入りと三刀坂の姿が竜巻の中に掻き消える。
(三刀坂……お前は……)
何か重要な事を言おうとしていたが、その思考を巨大すぎる影が遮ってしまう。
あの時と同じ、全身を痺れさせる毒の感覚。
(そういえば
依代の自然回復がある俺らが、どうして化物の一噛みに弱いんだろうな……)
(なあ
Ekaawhs Edrumn)
八朝の身体が化物の咀嚼に耐えきれず、魂の一片になるまで意識を保ったまま砕かれていった。
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DEADEND 1 悪魔憑き - Demon Posession
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1日ぶりです、斑々暖炉でございます
如何でしたでしょうか?
天ヶ井(妹)と八朝の能力の覚醒
熱い展開が書けて本当にテンションが上がりました!
この調子でバッタバッタと敵を倒していく展開が見えますね
皆さんもそんな『ほぼリ』にご期待して頂けると有難いです!
……まぁ、この選択肢では続かないんですけどね




