Case 07-9
2020年7月16日 Case 07より分割完了
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
2021年2月9日 ノベルアップ+版と修正内容を同期
【時刻不明 辰之中・所在不明】
目の前には数十体のゴーレムと、躯から生まれた3つ目級。
通称『霊体級』と呼ばれる彼らに物理攻撃は効かない。
「さあ蹂躙せよ
魔術皇の名の下に!」
号令と共に砂のゴーレムと化物が襲い掛かる。
だが、彼らが灰霊から生まれたのであれば話は別である。
『我より袂を分かつ、汝の名は■■!
即ち、毒を巡らせる二十二の呪いなり!』
八朝が地面に手を付き、不可視のページを捲る。
100mサイズで捲れた紙には霊体級すら触れられない。
だが、開いたページに引っ張られるように数体の騎士がポップアップされる。
「……ッ!」
八朝が何かを引っぱると、騎士が槍による突きを放つ。
それと衝突した3つ目級が麻痺したかのように動きが止まる。
そこに三刀坂の投げ飛ばした騎士槍が落ちてくる。
「これは……」
毒という状態異常にこんな行動阻害のバステもあるのか?
その疑問が灰霊から攻撃の手を止めさせ
八朝達の連撃を懐に至るまで許してしまう。
『くっ!
銀の靴よ、竜巻で拐せ!』
三刀坂の渾身の突きと
灰霊の起こした竜巻が衝突する。
それと共に不可視のページが烈風で次々と捲れ、騎士が姿を消す。
『……Libzd!!!』
重量増加も乗せた一撃が竜巻の壁を突き破る。
……だが、その先には何もなかった。
「これは……!?」
「オズの魔法使いに出てくる銀の靴だ
靴音を鳴らすだけでどこにでも移動できるが、竜巻が起こせるとは聞いたことが無い」
周囲を見渡す。
すっかりポップアップが茨に変わり不便となったが、ゴーレムの姿すら見えない。
恐らく風が全てを吹き飛ばしたのだろう。
……その風が、三刀坂の真上に落ちてくる。
「くっ……!」
『■■よ、紙を巡れ!』
残り一枠を操作可能かつ攻撃的なポップアップ出現に賭ける。
結果として出てきたのが一人の弓兵であった。
急いで引っ張り弓矢を発射させる。
矢が衝突するや否や灰霊を覆った竜巻の壁が消し飛ぶ。
「な……!」
「お前が水星を使うなら
俺は敵対する木星を用いる」
「相性とはそういうもんだろ?」
「何を……分からぬことを!!」
灰霊が再び3つ目級を生み出す。
先程は迎撃主体の騎士であったが、今は連射力のない弓兵。
「キミの切り札も、この数ではさすがに無理でしょう?」
灰霊は1秒ごとに戦況を読んでいる。
だがここで諦めるわけにはいかない。
思い出すのは弘治との議論。
それは神出来の空間移動を成立させる理屈。
僅かにも質量がある『魂』が瞬間移動を為せるかどうか。
「三刀坂アイツ等に過重は掛けられるか?」
「そっちは無理だけど電子魔術なら……!」
「分かった!
エリス……■■を食べてくれ!!」
裏で神出来の救出を果たしたエリスが茨の下に駆け寄る。
それをノイズで取り込んだ瞬間、視界にも無数のノイズが走り始める。
「……ッッッ!!」
「八朝君!?」
「大丈夫だ……
それよりできたか?」
無言で頷く。
と、同時に数をそろえた3つ目級達がこちらに狙いをつける。
『Hpnaswbjt!』
『Ogrmglakil!!』
3つ目級が過重増加を食らい、身動きが取れなくなる。
「それでどうするの!?」
「動きが鈍いうちに攻撃しろ!」
三刀坂が騎士槍を投げ放つ。
投擲が化物の身体に深々と刺さり、その体を消去させる。
やはり質量が0でなくなれば物理攻撃が通じる!
「調子に……乗るな!!」
これ以降は灰霊有利に戦況が動く。
恐らく闇属性電子魔術に拠るものであろう『無限湧き』に徐々に追いつめられる。
『■■!』
八朝はRATによって移動された神出来を守るべく、余った雑霊を灯杖で殴打している。
こうして何体も雑霊を抉って潰したとしても、代わりが魔法陣から無限に湧きだして止まらない。
「三刀坂!
一旦態勢を立て直して……」
「うるさい!
コイツだけは……コイツだけは……ッ!!!」
こうして撤退を提案しても三刀坂は聞き入れてくれない。
彼女の殺意を反映するように騎士槍が颶風の壁に食い下がる。
騎士槍に入った罅割れが徐々に広がっており、彼女も能力の限界に近い。
(駄目だ……このままではジリ貧に……)
ふと、ポケットの中から何かが聞こえ始める。
そこには件の赤い石……
そういえばこの石を作ったのは……
「鹿室なのか?」
赤く光る石を受話器のように耳に近づけて確認する。
『はい
よかった……通話魔術も生きているみたいで』
「早速だが、何かあったのか?」
『屋頭一信って人を知ってますよね』
「……」
『護衛対象の一人ですよね、掌藤さんの相手の』
その声は疑り深く、まるで八朝の腹を探るように慎重であった。
であれば、屋頭がどういう人物なのかもう知っているのだろう。
敵がこちらの信頼関係を崩すには丁度良い爆弾なのだから。
『八朝さんは知ってて黙っていたのですか?』
「ああ」
『じゃあ……!』
「残念ながらそれは教えられない、そういう契約なんだ」
鹿室の心配そうな声を叩き潰すように答えを拒絶する。
「降りるなら自由だ」
『じゃあそうさせて……』
彷徨い出た雑霊を叩き潰す。
そこに竜巻の残り香である砂塵旋風が襲い掛かり、八朝が吹き飛ばされる。
幸いにも神出来への直撃は免れたらしい。
「立て込んですまないな、じゃあ」
『待って』
予想に反して鹿室の方から制止が入る。
『今、君はピンチになっているよね?』
「何の話だ?」
『ふざけないでください! さっきから聞こえてる轟音は何ですか!?』
どうやら鹿室にも今の混沌とした状況が伝わっているらしい。
と言っても、先ほど鹿室はこの依頼から降りると宣言したので、その決定を尊重したいと思い……
「三刀坂の能力が原因だ。意外にもハッスルしていてな……」
『嘘ですね』
それを告げるように、遠くで瞬間移動の竜巻が起動する。
最早八朝と神出来に興味ないと言っているかのように新入りの気配が遠い。
『依頼も嘘、新入りが弱いのも嘘、ついでに今順調なのも嘘』
「おい……」
『本当に困って無いんですか?』
何も言えず、沈黙を晒した八朝は……
①「大丈夫だ。少々の計画変更ぐらいこちらでなんとかなる」
②「すまん……本当は今すぐにでも加勢してもらいたいぐらいだ」
ここでようやく分岐します
元々のCase7(4~5)の内容の4割が削減された上に3分割されています
(原形なんて)ないです




