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Case 85-3

2021年8月4日 完成(37分遅刻)

2021年8月5日 ストーリー修正


 死に物狂いで間割(まわり)を下した八朝(やとも)

 だが、もう片方の戦況は彼に絶望を与える程に酷い状況であった……




【3月13日(金)・九ツ半(1:46) 『ウラ』・鬼里邸】




断罪者(デコレーター)の名が泣いてるよ! この弱虫ちゃん!」


 鍵宮(かぎのみや)が投げ放つ石やらコインやら木の枝。

 それらが別々の呪いを爆散させて、柚月(ゆづき)を絡めとろうと猛追する。


 だが流石は学園五指、距離を取る事で同時に回避する呪いを一つに絞り

 後退しながら全ての攻撃を凌ぎきることに成功する。


 だが、方違(カウンター)を得意とする彼女にしては珍しく一切反撃しない。


「んんー? 理世ちゃん負けちゃったの……?

 ええー、こんな奴に負けちゃうなんてなんかすっごくムカつくけど」


 八朝(やとも)の無事に気付いた瞬間、柚月(ゆづき)を捨て置いて猛然と襲い掛かる。

 恐らく魔術(ルーン)による強化、そう思い目を閉じて柚月(ゆづき)の苦境を思い知ってしまう。


「すっごく面白いね、キミ!

 ちゃんと殺して、肉の一片まで残さずコレにしまってあげる!!」


 八朝(やとも)の挨星歩のカウンターを悠然と避け、試験管(シリンダー)のいくつかを見せてくる。

 余裕ある鍵宮(かぎのみや)に対して、八朝(やとも)は先程の怪現象を心裡で反芻する。


(魔力が……一切見えない……!?)


 突如別の方向からの殺気を感じ取る。

 今度はハッキリと瞼裏に映る攻撃だったので、挨星歩で回避する。


 だが先程の猛進から考えて今一つ迫力に欠ける様な……

 まるでこちらを向いていない中性子星(パルサー)のような……


「あー! 邪魔しちゃ『めっっ!』だよ一箇(いちか)ちゃん!」

「はて……邪魔とは一体何のことでしょう?」


 いつの間にか鍵宮(かぎのみや)一箇(いちか)が口論を始める。

 鍵宮(かぎのみや)の後方の物体がまるで長年の風雨に晒された様に浸食さ(けず)れていた。


 その間に柚月(ゆづき)の元へと駆け寄り、状況を聞きに行く。


柚月(ゆづき)、一体何が……」


 彼女の肩に触れた瞬間に、既視感のある魔力に思わず呻く。

 それは(taw)がエリスに食われる寸前の、魔力同士が擦れ合う悲鳴の如き音。


(……死にかけてる)


 八朝(やとも)の驚愕を察したのか、顔を上げた柚月(ゆづき)は精一杯の笑顔を見せる。


「だいじょうぶ、ふうちゃんが無事なら……

 だから、わたしも大丈夫だからあんしんしてほしい……な」

「……」


 こちらに戻ってきたエリスも無言を貫く。

 画面には■■(taw)を使い切ったアイコンが虚しく浮かび上がっている。


「ああもういいや! そ・れ・よ・り・も!!」


 突如、目の前に現れた鍵宮(かぎのみや)からの縦薙ぎに■■(alp)で受け止める。

 いや、『相殺』の状態異常が鍵宮(かぎのみや)の踏み込みを後ろに一歩吹き飛ばす。


『汝は知識(Chokmah)に至り……』


 ■■(alp)■■(digg)に変え、遂水桃花で小径(パス)を捻じ曲げ『消去(AZLVT)』と為す。

 狙うは鍵宮(かぎのみや)の身体のいずれか、そして文字魔術の代表格たるルーン文字。


 姿勢が崩れた相手に一撃を与えるなぞ、神楽の修行をした八朝(やとも)には造作もない。


『二重の歪みを以て理解(Binner)を為せ!』

「くっ……!」


 針先が服の肩口を裂き、確かな肉の抵抗する感触を覚える。

 血は流れたなくとも、『消去(AZLVT)』の呪いは確かに彼女に通った。


 今更ながら後退する鍵宮(かぎのみや)は一頻り閉口した後、呵々大笑へと変じる。


「気でも狂ったのか?」

「そうかも、狂っちゃったよ!

 まさか理世ちゃんの言ってた脅威が雑魚(おまえ)の事だって思いもしないよ!!」


 またも鍵宮(かぎのみや)は外套の内ポケットから小物を握り締める。

 血迷ったのかと言いたいが、既にそのタネは割れている。


 縦横に四指で十字を作り、それらを斜めに切り裂くように投げ放つ。

 即ち九字切りの原型たる道満印……陰陽道の訣の一つたる符呪。


 だが、陰陽十神に近接した魔術(がいねん)が災いして

 ノーマークだった柚月(ゆづき)に一蹴され、入れ替わるように(アーム)と青銅剣が鍔迫り合う。


「ありがとう、これで……ッ!」

「調子に……乗るなぁ!!!」


 魔力の動きに反応した柚月(ゆづき)が弾かれるように後ろに下がる。


 一瞬だけ見えたのは、青銅の剣を握る腕が何重にも分身し

 その後只の光の針となった多重薙ぎが大地を熱しながら引き裂く。


 視界が戻った時にはいつの間にか自分が転ばされ

 傍らに柚月(ゆづき)が何かを零しながら倒れているのが見える。


「……うっそー! まだ生きてんの!?」

「それは神聖文字(ヒエロクリフ)のアンク……さしずめ『太陽(アテン)の一撃』って所だな」

「そういうの厨二病って言うから、早くやめた方が良いと思うよ!」


 柚月(ゆづき)にもう一つ■■(taw)を施して立ち上がる。

 これで八朝(やとも)柱と形(奥の手)を失う形となったが、何一つ公平ではない。


 相手は人類から文字が無くならない限り魔術が尽きない正真正銘の魔女。

 先代の退魔師にして、妖魔渦巻く黄の大地(アルセニコン)にて『サト』を守り続けた英雄。


 方や自分は、あの時の3分の1に成り下がったX(バツ)級寸前の弱小異能力者。


(黄昏てる暇はない……何としてでも奴のつけ入る隙を……!)


 龍脈すら焼き切る太陽(アテン)の針が、至近距離にて横薙ぎとなる。

 それを見越して、意を決した前方へのタックルでもう一度体勢を崩させる。


 魔術(ルーン)の身体強化の無い鍵宮(かぎのみや)は堪らず体勢を崩される。


『冲蓬桃花 朏魄之武』


 即ち座山挨星歩にて導き出した(qup)小径(パス)

 『魅了』は通らなくとも、一瞬相手の意識を奪えば後は何とでもなる。


 服を握りこみ、こちらに引き寄せるように左後ろ(天蓬星)へと投げ飛ばそうとする。

 だが朏魄(暗い月)と称する力では零落の退魔師すら大地から引き剥がせない。


「力比べ? 更に妖魔っぽくなったけど負けないよ!」


 そのまま組み合い勝負へと変じる。

 鍵宮(かぎのみや)も、今度は種字(マントラ)を用いて諸仏の力を乗せてくる。


続きます

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