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Case 84-1:妖魔天象・壁雲

2021年7月27日 完成(23分遅刻)


 何とか桔梗を倒すことができた。

 だが、外には自分たちを狙う住民達の怒号が引っ切り無しに届き……




【3月12日(木)・宵五ツ(20:20) 旅籠・地下屠殺室】




「さて、運べるか?」

『うん、でもどこに?』

「……取り敢えずは『緑柱』に、無理なら連れていく」


 だが、肝心のここから抜け出す手段に気付けず、エリスが葛藤する。

 それを見越したのか八朝(やとも)が更に話を続ける。


「エリスは気付いているよな

 偽物の地名が篠鶴市の地区とリンクしていることに」

『うん、でも……あっ』

「想像通り、ここから篠鶴地下遺跡群と照応するものを探す」


 そう言って八朝(やとも)■■(taw)を使用して(taw)が出ないことに気付く。

 同じく幽霊(taw)柚月(ゆづき)が割り込んで実体化し、こちらにピースサインをする。


「確かに柚月(ゆづき)の方が早そうだな」


 そうは言ってみたが懸念事項が無いわけではない。

 今の彼女の肉体は実物ではなく、八朝(やとも)の低耐久から生み出された依代(アーム)なのである。


 それを示すCONは『属性スキル』も加味され、柚月(ゆづき)脆い杖(アーム)と同じ『(最悪)』。

 なるべく彼女には霊体状態でいて欲しかったが、時は待ってくれない。


『ふうちゃん、こことぎれてる』

「ああ、破壊も頼めるか?」


 即座に柚月(ゆづき)が異能力で壁を切り裂く。

 その先には冷たい風が吹き込む大空洞が広がっていた。


「……時間稼ぎに■■(samek)で塞いでおくか」


 八朝(やとも)幻惑(samek)で壁の幻影を生成し、追手を欺くことにする。

 そして慎重に大空洞の底へと降りていく。


『すご……』

「ああ、見渡す限りの水だな」


 大空洞は、その半分以上を地下水で湛えていた。

 そうなると着地が覚束ない……何か方法は無いかと柚月(ゆづき)を見てみる。


『ん、どしたの?』

「いや、俺らは歩けないのに随分余裕そうだなと……」

『だいじょうぶ、脈弓があれば立てる』


 そう言って先に降りた柚月(ゆづき)が脈弓による水面歩行を実践する。

 八朝(やとも)(taw)で龍脈の位置を把握してから水面に足をつける。


 思いのほかすんなりと水面の上に立つことができた。


『それで、何処を目指すの?』

「ああ、あっちの塔に向かう……覚えているか?」

『あっ、地底探検部の!』


 エリスが八朝(やとも)の目論見に気付き、声を上げる。

 即ち、学園島から榑宮南部を経由して篠鶴北部に向かうルート。


 これならミナミの暴徒の捜索範囲外で安全に違いない。

 だが、問題は榑宮(トーライト)の地勢が貸本屋の本では一切不明な事である。


 『サト』でも『ヤマ』でも『モリ』でも『ウラ』でもない。

 最悪妖魔すら寄り付かない危険地帯の可能性もある。


「とはいえ、一瞬でも掠る榑宮(トーライト)には警戒しないとな」

『うんうん、でも今は先に進まないとね』


 そう言って、辰之中にも似た大空洞内を足早に駆けていく。

 地底探検部のダンジョンもそれなりに警戒していたが、妖魔の気配すらなく拍子抜けであった。


 只管階段を登る事20分弱、漸く本物の夜空を拝むことに成功した。


『ついたー!』

「気を抜くなよ、それで『榑宮(トーライト)』は確かあっち側で……」


 その瞬間に全員が硬直してしまう。

 見渡す限りの木々、ああ間違いなく『(トーライト)』は桔梗の本拠地である『モリ』なのである。


『……こんなの、気付かなかったんだけど』

「ここはそういうのが多いな、地区ごとに世界が分断されているようだ」


 まるで市境(どうろ)を挟んだ向こう側の家が見えないような違和感に一同が困惑する。

 だが、『サト』の方向から怒声が近づきつつある……最早時間は残されていない。


「進むぞ」


 八朝(やとも)が残り一枠にも幻惑(samek)を用い、意を決して『モリ』へと入る。

 『青い大地』の向こう側は、数メートル先も見通せない鬱蒼とした森林だった。


 歩けども歩けども、先に進んだ感触がしなかった。

 そのまま四半刻(30分)も無駄に彷徨う羽目となった。


(輪形彷徨か? いや、柚月(ゆづき)が龍脈を見ている筈で……)


 だが、程なくして肝心の柚月(ゆづき)が恐ろしいことを口にした。


『おかしい……龍脈がとじてる……』

「閉じてるとは?」

『ふつう龍脈はみんなとつながるから閉じない

 せかいの果てとかじゃないのに龍脈が外のどれにもつながっていない……』


 どうやら柚月(ゆづき)お手上げな状況であるらしい。

 だが、そこに見知らぬ足音が加わって来る。


(拙い……ッ!)


 急いで八朝(やとも)が隠れられそうな大木の洞を探し出し

 そこを目指して皆で駆けていく。


「ぐぎ……」

「……きい」

「げはは……」


 足音に気付いたのか、弱小の妖魔が俄かに騒ぎ始める。

 何とか洞の中に避難できたが、今度はそこで袋小路となる。


 深い森の中での百鬼夜行が終わるまで、全員で息をひそめていた。


「……もう、大丈夫か?」


 そう言って八朝(やとも)が外に出ると

 その瞬間に妖魔と目が合った。


「……ッ!」


 妖魔がこちらに気付いたのか、すたすたとこちらにやって来る。

 他の妖魔の様に完全な人型なのも、その妖魔が実力者である事を暗に示すのみ。


 後ろには柚月(ゆづき)達がいる……何としてでも守る。


「おい、お前」

「……何だ?」




「こっちに来るがいい、そこの連れと一緒にな」





続きます

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