Case 83-5
2021年7月26日 完成(63分遅刻)&誤字修正
2021年8月1日 異能力情報を追加
旅籠の地下には解体された人体が並んでいた。
発狂する『若』に加えて、追手である妖魔まで姿を現し……
【3月12日(木)・宵五ツ(20:09) 旅籠・地下屠殺室】
悠然と姿を現し、暗に気化した麻薬が効いているかどうか聞いてくる。
「……生憎、対策はしているんでな」
『どうやらそれっぽいね、ひと嗅ぎで正気を失う量なのにさ』
「こちとら香料対策については基礎中の基礎なんでな」
西洋魔術は場を清めるのに神道の様に祝詞ではなくハーブを用いる。
故に曲がりになりにも魔術師をしていた八朝は麻薬の毒に耐える事が出来た。
『さっきなんて言ってたってっけ?
私が妖魔かどうかって、そりゃあ妖魔だよ妖魔』
桔梗は何故か苛立たしそうに返してくる。
勘所は分からないが、これ以上触れない方が良いらしい。
『妖魔天象・怪雨
まぁ訳あって『モリ』から出しゃばってきたんだが……』
「だが……?」
『正気だってなら耳済ませてみろよ、面白いぞ?』
そういえば外から雑音のような物が間断なく聞こえてくる。
物を壊し、声を荒げて、細やかであるが十分に相手側の苛々が伝わる。
「山狩りか?」
『面白い冗談だな
全然間違っていないのが最高に笑える』
程なくして彼女の言葉の真意を雑音から聞き取る。
それは八朝がよく知る人物……旅籠の人のものであった。
『今代の退魔師は我々を裏切った!
キタに通じ、我々の生活を脅かす〇人を殺せ!!!』
……最早、どういう顔をしていいのか分からない。
『すげぇだろ、アイツら』
「……ここの屠殺も上の麻畑も、お前の指示なんだな」
『そうだよ、んでそれを『お父様』に頼んでみたんだよ、そしたらさ……』
『キタのゴミ共を始末するのに『都合がいい』だってよ!
いやー、同じ人間の癖に恥も外聞もなく見下してやがるよ』
言動が荒々しいが、一部で彼女の言い分に同調する心もあった。
故に、次なる言葉に虚を突かれてしまう。
『だからさ、お前も人間に戻らず妖魔のまま暮らそうぜ?』
「よう……ま……?」
随分と都合よく狂気から開放された『若』が此方に掴みかかる。
その眼には一欠片の容赦がない、間違いなく憎しみと敵意によるものである。
「おい! 何とか言えよ、嘘だろ!?」
「……事実だ」
「ふざけんなよ! 今まで俺達を騙してたのか!!」
「利用はしていた、『ウラ』で人間に戻るための手掛かりとして」
「人間に……?」
信じられない、という顔で睨まれる。
どうやら『若』は妖魔が人間になることについて嫌悪感を抱いている。
無理もない、先程の桔梗の一件から妖魔を信じる心を残している方がおかしい。
一度相手が『妖魔』だと分かれば、もう既に聞く耳すらない。
『見ろよ! ちゃんと見ろよ目の前の人間をさ!
お前は本当にこんな物に戻りたいと思ってるのか、私は絶対に嫌だねぇ!!』
妖魔は人間に対する憎しみを露わにしている。
『どうだ、来迎……私と組まないか?
お前の話を聞いてから、私ら相性がいいって思っててな』
「断る」
八朝の即答に態度を豹変させる桔梗。
彼女が語る『人間の悪性』、それに真っ向から挑む。
それは『紫府大星』との戦いにも通じている。
『あ?』
「残念だが、俺には守るべき人がいる
人間を憎むなら一人で勝手にやってろ」
『若』を引き剥がし、桔梗と対峙する。
だが、『若』も日頃の鍛錬によって意識を保つことに成功する。
「……ッ!」
「絶対に許さないか……」
『■■、■■!』
『若』が全てを言い切る前に意識を消し飛ばされる。
そして空を切るように待針が桔梗の頬を掠め、壁に突き刺さる。
「……どうやら、本当に賢者の石らしいな」
『何をした? 今のお前はそれが使えない筈だろ』
「教える訳が無いだろ?」
『……まあいい、お前こそ私の天象の名を忘れたらしいな』
ぽつぽつと、地下室に雨が降り始める。
怪雨、または『空から蛙』と称される天候は雨水以外のものが降り注ぐ。
即ち、桔梗が生成した毒、それらやがて煙となって充満する。
「ぐ……!」
『安心しろよ、お前は助けてやる
その代わり、コイツは表に突き出してやるだけだ』
そう言ってすれ違いになった彼女の足を掴む。
悪あがきにも似た抵抗は、一蹴の下に反対側の壁へと叩きつけられる。
『まあ、眠らんのは知ってるし
だったらまぁ部位ごとに解体して運ぶしかないな』
そう言って桔梗が悠々と天象を発動させようとする。
だが、怪雨は現れず、代わりに桔梗の口からまとまった血しぶきが迸る。
どうやら、本当の奥の手の出来は上々であったらしい。
『ぐ……ぁ!』
「柚月によると、俺は遂水桃花なら辛うじて使えるらしい」
『おのれ……!』
即ち天壬地乙、もし風水刀法であれば斬撃を体内に仕込む方術となる。
だが八朝にそんな力はなく、せいぜい体内の龍脈を捻じ曲げるのみ。
そう、天象として発散される脈の末端を結んで塞ぎ、体内で爆発するようにした。
そして先程の『消去』もその応用である。
知識と理解の間を走る■■を二つ用意し
そのうちの一つを王冠を経由するよう捻じ曲げる事で至高の形を形成した。
これにより、2枠でも消去、??、??が使用できるようになった。
「身体を壊すほどの魔力も問題だな」
桔梗も体内を爆散される苦痛に耐えきれず意識を手放す。
そして、外の喧騒が静かに室内を満たしていった。
◆◇◆◇◆◇
使用者:不明(妖魔・元人間)
誕生日:不明
固有名 :なし
制御番号:なし
種別 :妖魔天象・怪雨
STR:2 MGI:5 DEX:9
BRK:1 CON:※ LUK:1
依代 :溶液
能力 :人為甘露
後遺症 :なし
備考
・※=10
・本名はメレニア・パラクル
・怪雨:蛙や魚が降ってくること、ファフロツキーズ現象とも
Interest RAT
Chapter 83-d 呪祭 - Invert Carnival
END
これにてCase83、変わらぬ風景の回を終了いたします
実は今回の敵も更に描写したかったが、如何せん枠が足りない。
それでも彼女の強さ厄介さは狭い枠内にできるだけ詰め込みました
ところで、外はとてもじゃないが出れる様子では無いようで
地下の袋小路で彼らは一体どのような選択をするのでしょうか?
ヒントは『照応』であります
随分と雑に設定した為にこんな隙が生まれたんですね
次回は『楓の濃霧』
それでは次回もよろしくお願いいたします




