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Case 82-2

2021年7月18日 完成(5分遅刻)


 一目という少女に案内されて『サト』に辿り着く。

 一人目からして歓迎の色が見えていた……




【2月22日(土)・朝(9:00) 『サト』・旅籠】




 『サト』の住人に案内された旅籠は質素な服装に似つかわしくない豪華なものであった。

 受付の人は八朝(やとも)達の外見を確認するなり、驚きの一言を口にする。


「ええ、外の人という事で宿代は要りません」

「おいちょっと待て、流石にそれは……」

「心配には及びません、その代わりにやってもらいたい仕事があるんです」


 受付の人が外の方を見る。

 そういえばここは『妖魔』の巣窟だと聞いていたが今の所人間にしか会っていない。


「そういえば妖魔を見かけないのだが、それと関係があるのか?」

「ええ、その通りです

 貴方たちには『サト』に侵入してきた妖魔を退治していただきたく……」


 条件があまりにも重すぎて思わず顔が強張ってしまう。

 その反応も見越しているのか、受付の人も苦笑ながら話を続ける。


「といってもここに入って来るような妖魔は

 山の禽獣とそう大差が無いぐらいです、貴方達でも追っ払えると思います」

「……うりぼうと同じぐらいだと言うなら、どうして『サト』の人間がやらないんだ」


「そういう『仕来り』ですので、いやぁ申し訳ないです」

「それは『アルセニコン』と呼んでいる奴と……」

「ええ、それなんですよね!

 いやぁ、外の人にしては随分と理解が早いようですね」


 受付の人も感心したように笑みを見せてくる。

 今まで篠鶴市(いせかい)に合わせてきた八朝(やとも)の経験が活きた瞬間でもあった。


 帰ったら掌藤(たなふじ)にお礼を、と考えながら話を聞き続ける。


「それでは六ツ半(午前7時)昼九ツ(正午)宵五ツ(午後8時)にお食事ですので」

「了解した

 荷物を置いたら早速外に出る」


 八朝(やとも)は宛がわれた2階の奥の部屋に入ると室内の備品を確かめる。

 布団や卓袱台、歯ブラシに水道、1984年と刻印されたブラウン管テレビまで置かれている。


『ふうちゃん、何か色々と文明の利器が……』

「恐らく外から流入した物だろう……っと!?」


 蛇口をひねると普通に水が出てくる。

 近代的な上下水道設備の無い文明で、如何に蛇口が役割を果たしているのか気になるところである。


「何にせよ助かった

 生活用品の一つも持たずに出発してしまったからな」

『ふうちゃん、次は準備してからにしようね』

「まあ、な」


 全てを確認し終えたところで、現在の目標を確認する。


 まずは受付の人から言われた『妖魔退治』について

 特にどの程度のタイムスケールなのかを把握しておきたい。


 何しろ第二目標である『ウラ』の捜索の為の時間も作っておきたい。


 とはいえ、まずはアルセニコンについて知らないことが多いので

 ここの住人から『妖魔退治』も含めて聞いておく必要があった。


 そして、もう一つ確認事項があった。


「エリス……さっきの橋は間違いなくアレだったよな?」

『うん、学園大橋だよね

 ということはあそこから見えていた『海』って』

「まあ、あの『青い大地』だよな」


 案内してくれた一目が説明した万物を焼却する『青い大地』。

 更にはその分布からして篠鶴市とある共通点があった。


『だよね、『青い大地』と篠鶴市の水面の分布がある程度一致してるし……』

「ああ、となると気になるのは水瀬(みなせ)地区が『青い大地』になっている事だな」


 その一点だけが篠鶴市と異なっていた。

 だが、エリスの走査(スキャン)結果とも異なる物言いに唸っている。


『それって見間違いとかじゃなくて?』

「……そうかも知れないが、妙に気になる」


 唯一(ウラ)と呼べそうな場所が此処ぐらいにしかない。

 とはいえ、ここで話し合っても進展が無さそうなので話を切り上げる。


 廊下で受付の人と挨拶をしてから八朝(やとも)達は外に出た。




【2月22日(土)・四ツ半(11:00) 『サト』・大通り】




「『ウラ』? すまんね、聞いたことは無い」

「カルクスの山からあっち側? ああ、そこは『(ルビドス)』だね」

「妖魔がいつ来るかって、そいつは俺の方が聞きたいぐらいだぜ」

「ああ君たちが新しい『退魔師』か、今後ともよろしくな!」


 人が一番いそうな大通りで色んな人から話を聞く。

 『妖魔退治』については興味深い単語が出てきたこともあり進展はあった。


 だが、『ウラ』については思った以上に情報が集まらない。


「ああ『退魔師』の、『ウラ』ってのを探しているらしいな」

「何か知ってるのか?」

「俺にはわからんが、それを知ってそうなヤツはいる」


 彼に情報提供料として外から唯一持ち込んだ『食料』を渡し

 上機嫌で連れられると、そこは少し薄暗い店棚であった。


「ここは?」

「貸本屋さ、情報を探るならここしかない!」

「そうか助かった

 ところで、ここに荒事専門の組合はあるか?」

「あ、荒事かい?

 ああ、そういや北の方に『緑柱』ってそれっぽいのがあるな」


 そう言って彼と別れ、件の場所へと向かう。

 その道中で耐えきれなくなったのか『エリス』が聞いてきた。


『ねえ、どうして組合なの?』

「……まず話を聞く限り、妖魔退治に明確な報酬はない

 それは宿屋の料金体系を見ても分かるだろう、必要が無いからだ」

『それは、分かったけど……あっ』


 エリスが漸く八朝(やとも)の目的を把握する。

 貸本屋を利用する為に路銀が必要不可欠なのである。


 それを稼ごうにも退魔師には報酬が約束されていないのでこのままいけば一生無一文。

 外の人は素寒貧でも生きてはいけるが、八朝(やとも)達には『ウラ』を探すという明確な目標がある。


「まぁ、後は無償で妖魔退治なぞしたくないからな」


 八朝(やとも)がそうぼやいていると、先程の男が言っていた暖簾が見える。

 名前の通り緑柱石(エメラルド)があしらわれた立札が見える。


 ここが『緑柱』で合っているらしい。


『で、ここからどうするの?』

「まずは『緑柱』の組合員として登録する

 専門は妖魔退治で、と言っても向こうは納得しないだろうな」

『え、なんで? 妖魔退治も立派な仕事なのに』

「無償で、だろ

 利得が発生しないならどれだけやっても相手は納得してくれない……だが」


「妖魔が化物(ナイト)と同じ性質なら、あるものを落とす筈だ」


 八朝(やとも)はエリスを小突いて、端末内にデータ化した『鱗』を暗に示す。

 だが、エリスは不安な表情で更に聞いてくる。


「でもこれって……」

「大魚はENIAC(アルキオネ0)の踏み台だ

 今更それに乗るつもりはない、退治に見せかけて欠片を渡しておけばそれでいい」

続きます

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