Case 81-4-1
2021年7月16日 完成（2時間以上遅刻）
Case81-3にて①を選んだ方はこちらからどうぞ
窮地に陥った八朝が最後の賭けに出る。
記憶遡行により得た情報を元に、柚月を強化する……
【2月22日(土)・朝(7:31) 鳴下駅東口・辰之中】
『■■！』
あの人からの声が聞こえる。
それは鷹狗ヶ島でしてくれたものとは違うけど、よく覚えている。
『杖』を握り締める。
全てが重く、遅く、これでは戦いにならないと思っていた。
「なんじゃ柚月や
とうとう騙されたと気付いたのかの？」
あやちゃんの挑発に乗るつもりはない。
今はふうちゃんから受け取ったものを最大限に使う。
その為に目を閉じる。
『……ッ！』
あやちゃんが息を呑んでいるのが分かる。
言ってたよね……私は『眼』に関しては天才的だって。
あやちゃんたちが頑張っても私の『10色』には遠く及ばない。
その眼で自分の『中心』を見つめてみる。
（外も内も黄色……
山のような『色』が空気の様に漂っている）
その瞬間にこの力の使い方が分かった。
賭けかもしれない……上手くいけば『一撃』でも時間をかけ過ぎたら『死』。
そうしたらふうちゃんが……
「なんじゃいきなり自分の頬を叩きおって」
あやちゃんは驚いているのに弓を番える手はまるで流れるよう。
いつ見てもあやちゃんの『神楽』は凄いと思う。
『妖魔』相手じゃなかったら、本当に凄いのに……
『……』
六に裂き、月読、八の日霊、堕つ
みやちゃんにも受け継がれた『哮』の祝詞。
天象で魔力が無くても、私を吹き飛ばすぐらいの威力は出る。
ましてや私は霊体……魔力しかないわたしには良く効くと思う。
でもそうはさせない。
『天丁……』
陰火の気配、春の蔓草のように勢いよく『伸びる』刃。
驚くかもね、いつもなら黄色で攪乱してたけど、この力は届けばいいの。
『地癸』
「……！？ なんじゃと！？」
黒の力が私と杖を引っ張っていく。
騰蛇妖嬌……式占において最悪の組み合わせの一つ。
でもこれを相手に当てれば、最強の攻撃になる。
『占術を頼りにするなら凶も恐れるな
凶を相手に押し付ける術もまた歴史には存在する』
凄い勢いで流れていく景色から目を外し
あやちゃんの神楽の『起こり』である矢先だけを見つめる。
わたしの変な動きにびっくりして、気を中途半端にしている。
本当なら籠目のような壬で絡めとって吹き飛ばす『哮』が只のザル。
これなら杖先を通して広げるだけで……
「な……にぃ！？」
でもあやちゃんは更に驚くと思う。
まず、杖先の癸だけを外して、私を覆う戊と合わせる。
すると癸は丁に、戊は丙に。
つまり、丁びて丙く……山塊の気があやちゃんを押し潰す。
多分、ふうちゃんが期待してたのもこれだと思う。
目を開くと、杖先から何度も雷の火花が迸っている。
これなら……今のあやちゃんならわたしが……
『う……ぐっ！』
突然、胸から口まで全部苦しくなる。
上手く力が入らなくて杖が手から抜けそうなのを必死で耐える。
不愉快な錆びた鉄の味がする。
こういう時はいつも寝たきりになるのに……でも今は少し耐えて！
『ぐ……ぅぅああああ！！！』
力一杯に全ての色の糸が通らない直線に杖先を通す。
何一つの邪魔が入らないここで、私の杖は鋭さを生み出す。
この速度が杖なのに鋼鉄を両断する理由で
そこに純粋な『二色』だけを絡めて、不思議な形の『一撃』を生み出す。
私が見える異能力はこれで全て。
でも……
『……ぅ』
そうだ、今の私は……
ふうちゃんがくれた黄色の糸で雁字搦めにされてて……
「……なんじゃ、まさか柚月もかい？
そりゃあ助かったものだよ、何しろわしの『神楽』は……」
まずい……こんな近くで『哮』を受けたらわたしは……
でも多分、わたしはこれ以上何もすることができない。
「■■！」
ふうちゃんの悲しそうな声が聞こえる。
折角エリスちゃんと『約束』したのに、ごめんね。
もうちょっと私が丈夫な子だったら、もう一度『黄色』をあやちゃんに張り直せた。
もっとふうちゃんの話をちゃんと聞いてたら、不可能すら可能にする『不思議な色』をわたしも使えてた。
「……さらばじゃ」
一か八か、杖を振り下ろす。
でもやっぱり『三食』以上に絡めとられ、私の貧弱な体力しか乗らなかった。
そんなへろへろな攻撃、あやちゃんの『哮』の前では無意味で。
ああ、最後の風景がふうちゃんの顔だったら良かったの……
◆◆◆◆◆◆
「気は済んだかの？」
冷酷な一言が響き渡る。
唯一彼女に対抗できる筈だった柚月が目の前で消滅させられた。
『ふうちゃん！』
エリスの声で再び正気を取り戻す。
柚月がいないなら今度は自分の番だ。
今まで仲間に頼っていたツケを支払う必要がある。
「……」
だが、既に依代の枠は使い切ってしまった。
相手が異能力者なら、その能力に割り込んでどうにかできた。
だが鳴下神楽は龍脈を使うだけで魔力は一切使っていない。
冗談のようであるが、故に彼等は『死体漁り』と同じく『異能力者殺し』と呼ばれている。
「当然じゃろう、貴様はあの魔術に全てを掛けた
だが貴様は柚月が病弱なのを失念して高負荷の呪詛を託した」
「その罪……死を以て贖うがよい」
◆◆◆◆◆◆
DATA_LOST
Interest RAT
DEADEND xx 禊祓 - Exorcising
Return 1;
ということでこちらはハズレでございます
