Case 80-5-2&3
2021年7月11日 完成(36分遅刻)
Case80-4にて②或いは③を選んだ方はこちらからどうぞ
三刀坂に宣言した通りに隠しルートを使用する。
果たしてこの選択は未来へと繋がっているのだろうか……
【記憶遡行処理開始:Case 80-5-2】
結論から言うと、驚くほどに何も無かった。
隠しルートにも、その先にあった剥き出しの『妖魔の世界』にも、そして彼らを塞ぐ『妖魔』の姿すら。
まさしく『虚邑を升る』の言葉通りの快進撃であった。
一つだけ問題があるとすれば、飯綱の言った『ウラ』が一体どこなのかぐらいである。
「……」
「拍子抜けなのは俺もだよ
取り敢えず、最初の風景でも思い出してみるか」
そう言って八朝が『退魔師の家』から見た『世界』の俯瞰図を思い出す。
だが……何故か上手く思い出すことができなかった。
(……やはりか
思った以上に『記憶遡行』が使えないのが影響しているのか)
八朝は焦りそうになる気持ちを抑えて初心に帰ろうとする。
だが、その手掛かりとなる『頭痛』が天象による『激痛』に上塗りされて過去が黒靄の中に散る。
隣から柚月の不安そうな視線を感じる。
最初に隠しルートを使うと打ち明けてからこの調子なのである。
「……柚月、あの道について何か知っているのか?」
「……」
「柚月?」
この時になって漸く気づいた。
柚月の口は動いている……そう、声がもう出ていない。
「な……!?
どうして俺は今更気付いて!?」
『ふうちゃん!
ここら辺の地形全部をスキャンし終わって……』
エリスも柚月の異変に気付いたらしく、言葉が途中で途切れてしまう。
落胆の影響は思ったよりも激しく、エリスからの報告を開けるのに丸々一日掛かってしまった。
「……もしかして『ウラ』ってのは」
『うん、東西で逆だけど篠鶴市で言えば水瀬・北篠鶴・北抑川
この地区が丸々海の中に沈んでいて、まるで『浦』みたいだよねって』
漸く光明が見え始めた。
柚月を助ける為にも、何としてでも人間に戻らなければならない。
『ふうちゃん、ほんとに大丈夫?』
「心配はない
柚月を戻す為にも、この不審な島へと向かうぞ」
『……よっし、頑張るぞー!』
そんなエリスの空元気に気付かぬまま
篠鶴市にて『月の館』の位置に存在する小島へと向かう。
『浦』は濃密な霧に閉ざされ
波の音はするのに一向に水の気配がしない不思議な場所であった。
(……)
猛烈な違和感に苛まれながら約一刻
再び砂利の音がして、件の小島に辿り着くことができた。
「これ……で……?」
まず、この小島は八朝達にとっても救いではなかった。
そもそも小島でもこの世界特有の『静寂』が晴れる事はなく、何もかもが同じであった。
そして、飯綱の証言通りにお屋敷が立っていた。
だがそこからするのはご飯の匂いでも深窓の閉鎖感でもなく、懐かしの血風の名残である。
「……」
霧の中に一つの人影が見える。
その傍らに二人の少女の死体が転がっていた。
『まさか、わしの知らぬ『穴』があったとはの
やはりあの『妖魔』の言を信じるべきではなかったようじゃ』
「鳴下文……ッ!」
『では最後の掃除を致そうか
貴様には柚月すら居らぬ、勝てるとでも思ったかえ?』
◆◆◆◆◆◆
DATA_ERROR
Interest RAT
BADEND xx 四十九日 - Last Judgement
Return 1;
【記憶遡行処理開始:Case 80-5-3】
『間もなく
玄達中央、玄達中央』
ぽかんとする3人。
まさかテキトーに思いついた『越境』が、こうも容易く成立するとは思わなかった。
『ふうちゃん、大丈夫?』
取り敢えずは『飯綱』の言った通りに篠鶴市の東の先に辿り着くことはできた。
このまま南下すれば目的の場所に辿り着けるかもしれない。
そう言って柚月の手を引き、電車から降りる。
篠鶴駅が霞むほどの摩天楼の風景に思わず眼が眩みそうになる。
『ふうちゃん、本当に大丈夫なの?
さっきから全然喋ってくれないみたいだけど』
何を言うのか。
結構自分としては喋っている方だと思う、初めての景色に浮かれてしまって……
すると、ようやく柚月の表情に気付いた。
いや、彼女の眼で反射した自分の姿が『真っ黒』に変色している事に……
『ふ……ふうちゃん!?
本当に大丈夫なの!? やっぱり戻った方が……!』
いや……もう遅いかもしれない。
お前たちだけでも『あの町』から……
そうだ、思い出した
篠鶴市が一体何なのか、周りから隔絶して異能力者と転生者を飼殺す理由。
ああ、見落としていた。
アレがやっていたことに、自分が一体何なのかに……
『ニゲ……テ
アノ……鬲碑。鍋汲縺ョ谿矩ェク蜈アカラ……ハヤ…………ク………………』
◆◆◆◆◆◆
DATA_ERROR
Interest RAT
DEADEND xx 途絶 - Flat Line
END
はい、という訳で謎の死2連発でございます
これはCase81以降にも付きまとう問題であります
ええ、以降なので何もDルートだけでなくそれ以外にも……
そしてギャグルート風の選択肢だった③も悲惨な末路
いえ、あれこそが八朝風太の『核心』の一端が垣間見えた瞬間であります
さて、彼は一体何者なのでしょうか?
400話ぐらいやっておいて今更『あらすじ』の伏線回収と相成りました
それでは次回も引き続きよろしくお願いいたします




