Case 77-5
2021年6月26日 完成(120分以上遅刻)
地竜の猛攻を突破した三刀坂達。
そして、念願の篠鶴機関本部への侵入を果たす……
【2月17日(火)・深夜(1:55) 篠鶴繧「繧、繝ェ繧ケ遉セ本部・中枢区画『セトの回廊』】
着いた瞬間に辰之中を解除し化物化の危機から脱する。
そして、落ち着いた心に周囲から圧される程の静寂に二人して呻く。
「ここは……?」
「待ってくださいまし
セトの回廊……いずれにしても中枢区画の最深部のようですわ」
セトという単語に僅かに反応する三刀坂だが
それよりも遥かに良さそうなものを空間の片隅に見つける。
「これ端末だよね、起動してみよっか」
「待っ……!?」
鳴下が制止するよりも早く、モニターに電源が入る。
バツ印と、右側の区画に足の折れた『P』のマークが数秒表示された後、簡素な入力ボックスが現れる。
どうやら彼女たちの求めていたものはこれで合っているらしい。
顔を見合わせて、どう調べようかと頭の中で思い浮かべる。
「ねえ、エリスちゃんは異能力者じゃないからここには載っていないよね」
「ええ、ですから最初に調べるのは彼の方でしょうか」
そう言って鳴下がボックス内に八朝の制御番号である『117287』を入力する。
その瞬間に横から見た押印のマークと少しカールした『4』のマークが表示された後に彼のステータスが表示される。
一見RAT_Visonによる分析結果画面に近いのだが、備考欄が凄まじく多く表示されている。
「よっと!
ええっと……神力の降下を示した大樹に基づく秘儀、龍脈を認識しその組成を変えられる」
どうやら備考欄の単語にはハイパーリンクが張られているらしく
単語の詳細を示した画面へと遷移する。
(どうやらこれでエリスさんに纏わる情報へとアクセスできるみたいだね)
三刀坂がもう一度備考欄の全体を眺める。
その中で注目すべき単語は『既知の単語』ではなく『初出の単語』。
即ち『マクスウェルの悪魔』『間在の鼠』『無理数法』『玉の兎』。
「開くね」
鳴下は無言で見守る。
最初に表示したのは『マクスウェルの悪魔』……それは篠鶴市に存在しない熱力学の矛盾。
だが……
マクスウェルの悪魔
我々が『■■■■計画』似て初めて手にした成果にして全ての根源。最後には計算できぬ『乱数』の前に敗れ去った『属性収集法』なのだが我々はこれを利用する。即ち彼を打ち負かした『誤差』を上手く収集すればいずれは自然法則を破る力を手にするだろう。そう、古の歴史に幾度か登場し、時に人々を救い、時に人々を苦しめた『魔力』の如く……
「魔力の……お話ですの……?」
「そう、なのかな……」
いまいち判然としない説明に首をかしげながらも次の単語へと進む。
今度の単語は『前の6月』にて八朝が最後に戦った戒律のコードネームである。
間在の鼠計画(Project InterEstRAT)
『魔力』の具現化には成功したが、このままでは秩序を失い害を与えるだけの存在となる。そこで我々は『魔力』に色を付けることにした。これが『間在の鼠』である。我々は彼等に『古の教義』と『翠玉板』を与えて神の道を遡り、我々の切なる訴えを届けようとした。だがここで一つ問題が生じた。鼠では駄目だ……疫病の分別すら覚束ない害獣では神に届きやしない。
お陰で『異能力』とかいうリークが発生し、我々の秘儀の一つを手放す羽目となってしまったではないか!
「何かの実験をしておりますわね」
鳴下が二つの単語の妙なつながりに、思わずそう漏らした。
確かに無作為に選んだにしては筋書きが出来過ぎている、だがまだ2つ目である。
そして3つ目のハイパーリンクに触れる。
これは本文中には『彼は無理数法の生存例である』と不穏な一文の中に含まれていた。
無理数法
そう、鼠ではなくもう少し有用で名前の近い……例えば食用ウサギとかはどうだろうか? 幸いにもこの無理数法、またの名を『187の挿入』という都合の良いものが手元にある。素材の指定は無いが周囲の被害が少ない無戸籍の人間の方がいいだろう。
何しろ繝ゥ繝ウ繝?繝?縺ォ諠??ア繧堤オ舌?莉倥¢縺ヲ蟄伜惠縺励↑縺?ィ俶?繧剃ス懊i縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨↑縺……
三刀坂が思わず画面を叩いて目を閉じる。
凡そ実験体の尊厳を片っ端から踏み躙る内容に、失われた『本物』と嘲られた『偽物』の姿が脳裏を過る。
「……彼のみが『円環』の無理数を飲み干し
■■が想定した『異世界知識』も同時に発現した」
「もういいよ、酷過ぎる……」
「ええ、でしたら私に貸してくださいまし」
三刀坂に代わり、鳴下がコンソールと睨み合う。
残るは玉の兎のみだが、エリスの情報に繋がるよう祈りながら単語に触れる。
玉の兎
我々は一つの犠牲を以てこの探求に終止符を打つ。その間に鼠共が撒き散らした『異能力』や『化物』、特に玉の兎にほど近い『鱗』なぞは最悪である。我々が求めるのは自然法則を超えた『魔力の塊』が引き起こす『奇跡』であって、決して平民共のくだらない人生の足しに浪費されるような物に甘んじてはならぬ!
故に以上のように名付けた。神に供される冤罪……或いは『魔王』として汝を玉の兎と呼ぼう
(最早これでは説明になっていませんわ)
鳴下が落胆と共に画面を閉じようとする。
その際に間違えて触れた文字列『六十花甲子』の遷移が始まる。
六十花甲子
彼が残した物の中では比較的使えそうな機構。60日という限定的な縛りなのだけど、その間は内と外の情報を完全に断つ事が出来る。これで篠鶴市全体を無理数法の効果範囲内に収める事はできた。それを無視できる『玉の兎』と『エメラルドの蠅』は邪魔だけど、後者に関してはもう私たちの手中なのだから特に問題はない。
私は彼とは違う手段で■■■■計画を完遂し、いずれは奴等に目にものを食らわせてやる
「エメラルドの蠅……もしかしてエリスさんの……」
そこまで言おうとして、突然後ろから衝撃が入る。
こんな時にやかましい三刀坂が黙り込んでいる異常事態に気付くべきであった。
「ふぅ……まさかこんなところに入り込んでいるとは」
鳴下は朧げな意識の中で、身近で信じ難い『敵』の声を確かに聞いて気絶した。
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Interest RAT
Chapter 77-d 成果 - Falsed Memory
END
これにてCase77、虎の子の回を終了いたします
今回は八朝ではなく、ABルートのヒロインである三刀坂と鳴下メインの話でした
途中、某映画のアクションシーンに感化されて文章量が倍増した部分はどうぞ御目溢しいただけたら……
さて、何やら核心に近い情報を得たようですが詰めが甘いようです
敵と言うからには篠鶴機関なのでしょうが、まぁそんな感じでしょう
再び捕まってしまった彼女たちの運命や如何に!?
次回は『187の欠片』
それでは引き続きお楽しみくださいませ(今回大変遅れてしまってすみませんでした)




