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Case 77-2

2021年6月22日 完成


 能力(ギフト)と『神楽』で篠鶴機関の監視網を順調に突破する三刀坂(みとさか)達。

 だが、最後の最後で彼女らには解けない『仕掛け』が用意されていたのだった……




【2月17日(火)・深夜(0:46) 月の館隔離病棟・G区画『回廊』前】




「……」


 薄らぼんやりとした明かりの中、二人して門の前で呆然と座り込む。

 その門に備え付けられたモニターを見るに、多数のウィンドウといった激戦の跡が見られる。


 三刀坂(みとさか)の顔に困惑の顔が浮かんでいる。


(もしや貴方、この『回廊』目当てに案内したんですの?)

(え……そうだけど)

(はぁ……忘れましたの?

 『回廊』は八朝(やとも)さんが破壊してしまったって)


 数秒固まった三刀坂(みとさか)が目当ての記憶にぶち当たり頭を抱える。


 そもそも三刀坂(みとさか)が覚えている通路風景も半分以上が『回廊』という瞬間移動機構によるものであった。

 篠鶴機関はこの『回廊』によって機関施設内だけでなく篠鶴市中に即時展開できる強みを持っていた。


 それが封じられた今、篠鶴機関は地下遺跡群の立入禁止区域と同じく『未踏領域』である。


(ど……どうしよっか?)


 三刀坂(みとさか)の問いに鳴下(なりもと)が溜息を吐く。

 途方に暮れたかと思った鳴下(なりもと)の目に、異界を除く光が灯り始める。


「……」


 鳴下(なりもと)が周囲をきょろきょろと眺める。

 そして何かに気付いたのか、ジェスチャーで三刀坂(みとさか)を誘導し始める。


 驚きの余りに声を出しそうになるが、口を押えて鳴下(なりもと)の先導に従う。

 すると、10分もしないうちに外壁から人工物の整然とした風景が消え去っていった。


 すると三刀坂(みとさか)が足を止めて端末(RAT)に文字を打ち込む。


(何ですの、急いでいるんです)

(それ、何なの? 何か見えてるの?)

(……これは『竜眼』ですわ

 花形の『竜哮』には遠く及ばない『龍脈を視る眼』の秘儀ですわ)


 鳴下(なりもと)が浮かない顔で自分の力の説明を始める。

 曰く、浅い方が赤く、深い方が青く視えるので、今は青い方へと向かえば『月の館』から出られる、という。


 即ち篠鶴機関本部だけでなく、その下地の地下遺跡群の全貌を把握する眼であった。


(え、でもどうして青い方に行けば出られるって分かるの?)

(施設が『祈りの地(最深部)』まで達してるとは思えませんの

 だから、地下の深い方へと抜けて、目的の真下で浮上すれば……でしょう?)

(凄いじゃん!

 凄いのに、何でそんな顔なの?)


 その答えを鳴下(なりもと)が打ち込むことは無かった。

 恐らくは自分たちの知らない『鳴下家時代の彼女』に纏わる事なのだろう。


 それに触れないよう話を変える。


(でもここ地下だよね?

 地下なのに龍脈ってあるものなの?)

(普段はあり得ませんわ

 水脈の表面現象としての龍脈があるので、地下にある意味が無い……ですけど)


(この地下遺跡群は建築狂(シムノン)の最高傑作ですわ

 それにおばあさまは地下遺跡群を『祈りの地』の泉水を地上に引き上げる為の水路だって言ってましたの)


 どうやら元々竜眼で見える赤と青は魔力の『純粋さ』を表す色であった。

 だが、鳴下家から離反し篠鶴市中を歩き回った鳴下(なりもと)は先の教えから以下の法則を見出した。


 龍脈の色は地下遺跡群の深度を表す。


 そして彼女の狙い通り、周囲を岩盤で囲われたセキュリティーゲートが見え始める。

 様子からして、これこそが彼女たちのスタートラインとなる『月の館』の出口であった。


「……」


 余りの正確さに舌を巻く三刀坂(みとさか)

 だがここで鳴下(なりもと)の快進撃が止まってしまった。


 彼女に任せていたコンソールの操作音が唐突に途切れ、疲れを孕んだ溜息が聞こえた。


(ど、どうしたの?)

(どうしたも何も何ですのこれ!!

 ただでさえ意味の分からない記号を、どう置けばいいってのよ!!)


 珍しく怒気の迸る鳴下(なりもと)の文章に三刀坂(みとさか)がぽかんとする。

 やがて鳴下(なりもと)から端末画面を見せられる。


 四重円の中の外側に12のマーク、そして中側にバラバラに配置された6つのマーク。

 内側には丸と点の記号があり、これを自在に動かして謎を解くという仕掛けである。


 そして円の片隅に火で炙られた五芒星のマークがあった。


「……」


 三刀坂(みとさか)がすかさず『♂』のマークに丸と点のマークを重ねて10秒そのままにする。

 やがて五芒星が下から真っ赤に染まった瞬間、重苦しい音と共にゲートが開き始める。


「な……な……!?」


 鳴下(なりした)が叫びそうになるのを必死で抑える三刀坂(みとさか)

 そして、扉の先には人工のへったくれも無い暗く広々とした隧道が広がっていた。


(一体何をしたのですの!?)

(あーえっとね、あの星って『コンバスト』の事だから

 唯一ペレグリンになってた火星と合わせればできるかなーって)


 説明されたのに頭を傾げ、何かを思い出そうとする鳴下(なりもと)

 その様子を得意そうに、そして意地悪な微笑みで書き込みを突き付ける。




(全部八朝(やとも)くんがやってた異能力なんだよね)




 それを見た鳴下(なりもと)が一瞬で感情を無くし、三刀坂(みとさか)を睨みつける。

 両者で仮想の火花を散らす中、鳴下(なりもと)がお返しに『ある事実』を見せつける。


(それを言うなら貴方

 『竜眼』は八朝(やとも)さんでも出来ましたの、貴方はどうです?)


 そして悔しそうに三刀坂(みとさか)が更にレベルの低い口論で喧嘩を吹っ掛ける。

 小一時間浪費した挙句、肩で息をする両者が同じタイミングで口を開いた。


「こんなことしている時間はありませんわ|(無いよね)」


 そして二人は急ぎ足で隧道を突き進む。

 ここからは隔離区画特有の『災難』が彼女達を待ち受けていたのだった……

続きます

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