Case 75-4
2021年6月14日 完成
『また、悲しませちゃった……
でも今は、今だけはあきらめきれない、の』
『その為になら……』
【2月16日(日)・昼(14:19) 篠鶴駅4F・北会議室前】
「おい! しっかりしろ!
クソッ! 依代が立ちどころに……ッ!」
「無理に異能力を発動しようとするな、消耗するぞ!!」
「だが……ッ!」
「焦るなよ、今俺が何とかしている所だ」
そう言って左壁が複雑な手順を手の中に展開している。
恐らくは先程言っていた封印結界に対する解除式なのだろうだろうか。
だが、圧倒的に時間が足りなさすぎる。
『■■! ■■!
……ッ! 暦を踏みて、我等は糧を得る!』
だが全てが霧散する。
無意味な罰則が己の身体を蝕むのみ。
それでも柚月に纏わりつく死の気配がどんどんと濃くなっていく。
(何か……手は無いのか!?)
窒息が致命的になるのは約1分から15分程度。
この段階では酸性化が完遂し、脳に深刻なダメージを与える。
即ち速やかな昏睡、心肺停止……そして死。
もう既に柚月は窒息から70秒近く経過している。
「……ッ! ……。」
目に光は……多分無い。
あれほど暴れまわっていた身体もぐったりと動かなくなっている。
まず、左壁の封印結界解除は間に合わない。
例え、何らかの奇跡によって間に合ったとしても
体内の死体漁りが無制限に魔力を吸い込んで霧を崩壊させる。
そもそも死体漁りとは異能力者に『回復死』を引き起こさせる兵器である。
「あ……」
目の前の現実が受け止めきれない。
自分の日常のうちの1つが、痛々しい苦悶と共に失われつつある。
この時になって、自分が如何に『他人』に寄り掛かっていたのかを自覚する。
非常に残酷であるが、あの下っ端の言ったとおりであった。
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考えれば考える程に不足が目立ち、自分を二つに割ってもなお回答が見つからない。
どころかそんな離れ業に慣れていない八朝の頭から悲鳴の如き激痛が迸る。
『縺昴?逶ョ窶ヲ窶ヲ雋エ譁ケ縺セ縺ァ縺ゥ縺?@縺。繧?▲縺溘?繧茨シ』
『蠕?※?∵昭縺輔?繧九↑?∫クョ迸ウ窶ヲ窶ヲ閼ウ蜃コ陦?縺具シ?シ』
『縺オ縺?■繧?s?』
段々と正常な視界が保てなくなり、どころか平衡感覚すら崩壊する。
真っ暗闇の中で見たのは
いつかの『転生の間』の……『創造神』が不在で不気味なほどに静寂な光景。
(どうして、こんなものが……)
理由は分からない、だが先程の『思考』が致命的だったのは分かる。
そして風景が瞬き一つで『影割鬼との決戦』、『紫府大星との遭遇』、『暴走』へと変わっていく……
これは、走馬灯と呼ばれる物なのだろう。
(ちょっと考えただけで死ぬとか
いよいよもって、俺は脆いんだな)
八朝が自嘲気味に吐き捨てる。
だが、それが失いかけていた気力を叩き起こし、正常へと戻らせていく。
ふと、この走馬灯とやらが疎ましく思い始める。
(どうせ思い出すのなら、もっと有用な物を思い出しやがれよ)
(そう、例えば謎の大樹の影とか……)
すると突然風景があの時の覚醒の時に見た謎の大樹の影が出現する。
いや、何かが違う……動かなかった筈の影がゆらゆらと揺らめいている。
(これは……燃えているのか?)
振り返ると緑の天空を為した大樹が真っ赤に燃え盛る風景を目の当たりにする。
そして、ようやくここが灼熱地獄である事を体感し始める。
「……ッ!」
まるで悲鳴のような轟音を上げて真っ黒に崩れ始め
漂う灰がこの大樹を巡るであろう『血』のようにべたべたと纏わりつく。
死にゆく竜を見る様な、そんな幻覚に塗り替わっている。
(……ッ!
こんなの俺は見てない筈だ!!)
八朝の指摘は正しかった。
確かにあの時の彼が見たのは穏やかな光景、決してこのような地獄の筈がない。
思い出している筈が、現実の自分とリンクして捻じ曲げられつつある。
(そういえばあの時は影で覆われた砂を……)
一掴みした砂が、有り得ざる粘稠性を以て手に纏わりつく。
みるみる内に砂から人間の血のような姿に変わっていく。
「……ッ!」
振り払おうとしても一向に離れてくれない。
どころか血のような物に焼かれた手から激しい苦痛が迸り始める。
痛みから身体を蹲らせ、更に逃げるように前を向いた八朝。
(……なんだこの影
まるで形が、セフィロトの樹のような)
それは緑の天空に浮かんでいた筈のものだった。
だが、影がその形を為している。
その特徴的な形で、今の自分が『王冠』と『美』の間にいる事が分かった。
そこは番外のセフィラにして天使と神霊を分かつ暗きヴェール。
第11のセフィラ、深淵。
そのセフィラが、燃え盛るように影を伸ばしている。
「な……何が起きて……ッ!?」
影の先端は地面から剥がれ、少しずつ霧へと変わる。
段々と鉄のような生命のような劈く臭いで充満し始める。
そして、謎の声を聞いた。
『さあ来たれ……清涼の鬼、厳霊の器、汝の怨敵ここにあり
この不埒な『いざなみ教』を奉る魑魅魍魎に、自在なる毒の一撃を!』
①受け入れる
②抗う
次でCase75が終了いたします
考えすぎで脳出血とか随分と斬新ですね()




