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Case 01-4

2019年9月19日 改修完了

2020年7月13日 第二次改修完了

2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期

2021年02月03日 上記修正内容と同期

2021年02月10日 上記修正内容と同期

2021年03月29日 内容変更


 創造神により用意された身体から恐ろしい気配を感じた八朝(やとも)は、自分で自分の身体を作成することで事なきを得る。

 意識を取り戻した元キャラメイク用の身体達(?)と共に、地上を目指す最終試験とやらに巻き込まれたのであった。




【TIMESTAMP_ERROR 篠鶴地下遺跡群・深層】




「ロ……T……何だコレ?」


 小一時間歩き続けてようやく建物の数が減り始める。

 また、空と思われていたものが単なる青色の光る岩壁である事に気付き始める。


 その先にある架線が接続された建物にたどり着くと、岩壁は目前に迫っていた。


 建物内は劣化が激しく判別がつかないものに溢れていたが

 辛うじて横並びに置かれている装置からこの建物が駅である事が分かる。


 その中で陽気な声が響く。


「ステータス!

 ……ってアレ?」

「何やってんの、端末(これ)で出てくるでしょ?」

「おっ!

 マジでありがとう!」


 ここが迷宮(チュートリアル)……もとい最後の試練だとは思えない程の賑やかな道中であった。

 八朝(やとも)とあの女の子以外は盛んに『異世界転生』のテンプレというものを試している。


 八朝(やとも)も試しに端末(RAT)を操作すると以下の表示が出た。




 使用者(ユーザー):八朝風太

 誕生日:9月12日


 固有名(スペル)Ghmkv(ガムガブ)

 制御番号(ハンド)Sln.117287(うみへび座R星)

 種別(タイプ)  :Q.AQUAE(中級・水属性)


  STR:0 MGI:0 DEX:4

  BRK:2 CON:3 LUK:1


 依代(アーム)  :不定

 能力(ギフト)  :状態異常付与

 後遺症(レフト) :気絶無蜉ケ




(そもそもこれが何を意味しているか分からない)


 そう思っていると、背中を無遠慮に叩かれる。


「おっ!

 お前のゴリゴリの支援特化(デバッファー)だな」


 話しかけてきたのは東岸宏保(とうぎしひろやす)という青年であった。

 あのアバター群での美丈夫であり、見た目通り親しい女友達も侍らせている。


「ま、お前の『推論』で強くなった身としては予想通りであったけどな」


 快活に笑う東岸(とうぎし)


 というのも、こういった能力の推論をする度に頭痛が発生し

 大なり小なり記憶を手に入れることができたので、積極的にその役を負っていただけである。


支援特化(デバッファー)というのは何だ?」

「『盗賊(シーフ)』や『踊り子(ダンサー)』みたいに仲間の支援をする役だ

 DEX(器用さ)が高いから罠解除や偵察の『盗賊(シーフ)』の方が向いているな」


 声のトーンからして褒められているのにも拘らず

 字面が犯罪者然なので微妙に嬉しくはない。


 話題を変えるついでに、そもそもの話を聞いてみる事にする。


「今更だが『異世界転生』って何だ?」

「お前はそれも忘れてしまったのか……」

「まぁ簡単に言うと、死んで次の人生を超すごい力で全部やり直すっていうお話だよ!」

「超すごい力……」


 取り巻きの一人が後ろから八朝(やとも)に抱きつく。

 だが、まるで弾かれたかのように八朝(やとも)が離れる。


「ど、どうしたの?」

「……すまん、こんな風になってしまった」


 先程触れた手を見せてみる。

 夥しく手の形に腫れあがった様子に取り巻きが思わず口を塞ぐ。


「アレルギーか

 これでも使いな」


 東岸(とうぎし)から軟膏を渡される。

 短く礼を言って、背中をさすろうとする手を止める。


(一体どういう事だ

 さっきからこいつらに触れたところが妙に熱い(・・)


 それ故にいまいち友好に接しきれないのがもどかしい。

 そんな現実から逃げるように遠くを見る。


(あれは……最初から意識があった子か

 そういえば彼女の声、どこかで聞き覚えがあるような……)


 全員から離れてとぼとぼと歩いている。

 そんな少女を塞ぐように、目の前を大音響と土煙が現れた。


「な……!?」

東岸(とうぎし)君……何アレ……」


 絶句するのも無理はない。


 雪の結晶文様(・・・・・・)の体長5メートルクラスのダンゴ虫が

 本来持たない筈の大きな牙で数人程貫いて天高く掲げている。


「た……たすけ……あああああ!」


 ダンゴ虫はまるで己の名を冠する菓子を頬張るが如く

 牙で串刺しにした数人を捕食し、大量の血と悍ましい破砕音を零しながら咀嚼する。


 ……その向こうであの女の子が無事であることも確認する。


「!?

 待って! どこ行くの八朝(やとも)君!?」


 仲間の制止を振り切ってダンゴ虫の方へ全力疾走する。

 その裏へ抜ける途中二回ほど節足からの足踏みを貰いそうになるが、紙一重でかわしていく。


(間に合え……ッ!)


 まずはあの女の子の下に来ることに成功する。

 次はこのダンゴムシから逃げる方法……。


(そうか、周囲を見渡す!)


 時間はない。

 ついでにダンゴ虫に邪魔されて仲間たちの方にも戻れない。


 何もない岩壁に、ポツンと一つの扉が張り付いているのを視認する。


(……今は耐えてくれ!)


 意を決して女の子の手を握りしめ、全速力で駆け出す。

 八朝(やとも)はすんでのところで扉をタックルで押し開け中に転がり込む。


 巨大虫の突撃では扉を通ることはできず、大音響で壁に激突して止まる。

 恨めしそうに粘液を撒き散らす威嚇音で叫ぶ。


 蟻の如く巨大化した頭側第一顎の全貌を現し、執拗に地面を突き刺す。

 そうしてめり込んだ顎を梃にして壁に何度も頭突きを食らわせる。


「取り敢えずは……」


 巨大ダンゴ虫を仲間から引き剥がすことに成功する。

 その奇跡のような状況から更にもう一つの奇跡である『女の子の安全』を求め、扉の先の通路を進む。


 やがて、それすらも叶ってしまう。

 通路の途中、青ざめた顔でこちらを見る女の子……後ろからは洪水の如き謎の足跡達。


「嫌だろうけど、もう少しだ」


 後ろを振り向かず、通路を全力疾走する。


 洪水の(ヌシ)たる小ダンゴ虫と、それから放たれた五本指形の糸が壁面にべたべたと貼り付く。

 振り向きもせず、女の子をもはや引きずるように狭い隧道を逃げ回る。


 通算10個目辺りの丁字或いは十字分岐を適当に曲がったりしてようやくやり過ごした。


続きます

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