表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
393/582

Case 72-5

2021年5月30日 完成(33分遅刻)


 記憶遡行処理開始

 Case72-5:Hexen Zvmoc




◆◆◆◆◆◆




 ふと、懐かしいものが目に入る。


 小さいときによく見た菓子箱の外装、昔家にあった置物、箪笥にしまい込んだ小さな服

 そういったものが郷愁と共に懐かしい思い出を搔き立てる。




 でも僕は、半年よりも前のものを思い出せない。




『……』


 あの時の、まだ異能力に囚われるより前に書いた文字。

 篠鶴市遠海松浜101-23、それは僕の……ごく普通の辻守(つじもり)一家が住んでた家の住所。


 今や、焼け焦げた廃材が転がっているだけの廃墟。


『ああ、その家なら十年前ぐらい前の火事で無くなったよ』

『一家全員死んだんだって、可哀想に』

『何でも普通の火事じゃなくて爆発みたいだったよ、ドーンって』


 それぐらいが僕に許された過去の欠片。

 思い出そうとしても、頭の奥の致命的な『熱さ』に邪魔される。


 だが、6ヶ月しか覚えていないのも案外悪くはない。

 何しろ6ヶ月先も見え続けるからだ。


『素晴らしい

 お前は未来を見通せるらしい』


 そういったのは後に異能部部長を名乗る向葉日次(むくばひつぎ)であった。

 今は何故か禁戸(いみど)を名乗っているがそんなことはどうでもいい。


『では試しに聞こう、半年後の俺はどうなっている?』

『……異能部の部長になっています』


 嘘は言っていない、名前は様変わりするが確かにその地位を手に入れる。

 気を良くした彼によって誘ってもらい、俺も異能部の部員となった。


 そこで目にしたのは、異能部という権威に縋りつくゴミみたいな人間の博覧会であった。


『この依頼は……面倒くさいし破り捨てろ』

『幸運だね、ここにいれば篠鶴機関の内定が転がり込む……最高だ!』

『ああ辻守(つじもり)、ポテチが食いたいから買ってこい』


 別に不幸だと言いたいわけではない。

 これぐらいなら小さい時のスラム生活と比べれば月とスッポン。


 無表情で雑務をこなす僕に、彼は更に気を良くした。


『君にはこの『秘儀』を受けるだけの価値がある、さあ!』


 彼よりも小さな寄生虫(にんげん)がシリンダーを持っている。

 だが、よりにもよってその時にこの世で最も悍ましい光景を視てしまった。


『どうしたんだい?

 そんなに闇属性電子魔術(コレ)が嫌なのかな?』

『……いえ、謹んで受け入れます』


 そうして僕に『反転』の闇属性電子魔術(グラムアンブラ)が芽生えた。

 見るしかできなかった逆光地球(ズーモック)の理をこちらに呼び寄せる魔術(ヘクス)


 それが俺の異能力、逆光摂理(ヘクセンズーモック)である。




 そしてこの力は来る2月の審判に抗うための力。

 俺は何としてでも八朝風太(やともふうた)に抗わなければならない。




『気分が優れないようだが、どうした?』

『……来年の2月に僕が異能力で洗脳されると言ったら信じますか?』

『…………』


 禁戸(・・)ですらも即答を避けた。

 今や『占師(シャーマン)』の二つ名を戴くのだから、その重みも計り知れない。


 最後まで答えは出してもらえなかった。


 そして夜な夜な、元々の異能力が夢の中で見せる6ヶ月先は

 背筋が凍る程の変容と、不気味なほどに暖かい光景という地獄となって現れる。


八朝(やとも)さん! 待ってましたよ!』


 待ってなどはいない。

 ■■■■■に敗れて僕を消した癖に、その顔をしないでくれ。


『姉さん! そんなこと言って、失礼ですよ!!』


 姉さんとは一体誰の事だ?

 そいつは■■■■■の筈だ、いい加減目を覚ましてくれ。


 10月、11月、12月

 余命を宣告された者の悲哀を噛み締めながら無常にも時が過ぎていく。




 それでも禁戸は、答えを示してくれなかった。




『まずはここで勝利を納め、この場の全員が犠牲にならない道の始めとする』


 それは逆光星(ズーモック)では有り得なかった彼の振る舞い。

 掌藤(たなふじ)と呼ばれる『転生者たらし』に矯正された現実主義の彼(4月以前の八朝)では有り得ない理想。


 この場とは無論、自分も含まれていた。


(……)


 何かが起きている、まるで4月以降の彼が何らかの理由で今に逆戻りしたかのような。

 いや、そうでないと有り得ない事態なのだ。


 だとすれば彼は……

 逆光星(ズーモック)で見た宣告(オーディール)が何なのか察している。


 あの『審判』を覆せるのかもしれない……




『……どうして、我等を裏切る?』

『……』


 言うまでもなく、禁戸ですら異能部に毒されていたからだ。


『何?』


 禁戸は大層心象悪く眉根を顰める。

 やはりこの世で最も悪いものは善意なのかもしれない。


『火事で無くなったよ/可哀想に、でもまだ若い』

『一家全員なくなったよ/でもキミは生き残った』

『爆発みたいだったよ/そりゃ、あの『辻守家』じゃあね……』


 全部逆光星(ズーモック)でお見通しだ。

 どいつもこいつも自分可愛さにリスクを避けようとする、愚かしい。


 あの異能部は慢心のせいで裏表が無くなって余計に歪だが

 その中心にいる禁戸(かれ)は、最も正気で最も汚らわしい


『まだ考えている、安易に答えは出せんよ』

『知ってましたか?

 もうその日は目前にまで迫っているんですよ?』


 2月12日、それが俺の命日。

 『悪魔』との取引により八朝(やとも)が愚かしい選択をする日。


 だが、目の前の禁戸(いみど)は彼とは違い6ヶ月後も何も変わっていない。


『貴方が面倒臭がった結果です』


 そして血で血を洗う逃亡戦が始まった。

 『あの時』と同じように周りが全て敵の、懐かしくも一切無い光景。


 メモに込められた怨念以上の地獄が間断なく襲い掛かる。


 ああ、これがあれば自分なんて簡単にひん曲げられてしまう。

 過去の僕は、それすらも忘れてしまっていたらしい。


 それでも、未来の僕の為に筆を執る。


『僕は彼に賭けたいと思う

 何故か4月以降の忘却・決意の彼がこの場にいる奇跡に』


『彼ならば……

 この場にいた僕ですら犠牲にしない『審判』の先を見つけてくれる』


『そしたら……』




◆◆◆◆◆◆




 使用者(ユーザー)辻守晴斗(つじもりはると)

 誕生日:3月23日


 固有名(スペル)Ndxig(ヌジューク)

 制御番号(ハンド)Nom.19356(アルゴル)

 種別(タイプ)  :T.UMBRA(最上級・闇属性)


  STR:3 MGI:5 DEX:3

  BRK:1 CON:5 LUK:0


 依代(アーム)  :眼(魔眼)

 能力(ギフト)  :逆光摂理(ヘクセンズーモック)

 後遺症(レフト) :記憶制限(6ヶ月)




Interest RAT

  Chapter 72-d   希望 - Straw Bond




END

これにてCasw72、和解と願いの回を終了いたします


実はこれで菜端の依頼は完了致しました

とすると、ようやくあのフラグが立ちそうですね……


それはそうと、辻守のあの性格は『作られたもの』だという

しかも『悪魔』に負けた代償……相当穏やかじゃありませんね


実は、あの悪魔に勝つには『4月以前』だとどうあがいても無理です

その点ではこの主人公は成長しているのかも……?


次回は『祓魔のダエモン』

それでは引き続きお楽しみに……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ