Case 07-2
2019年9月1日 完成
2019年9月6日 終盤の文章を修正+日付を確定
2020年5月21日 第一次修正完了
2020年7月16日 第二次修正完了
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
【4月24日12時20分 DATA_ERROR】
剥き出しのコンクリートの一室で、物々しい人影たちが集っている。
全員がフードを着込んで仮面を被り、隣の人間が分からない状態で魔法円を取り囲む。
『それでは掌藤親衛隊臨時集会を始めます』
『『『我等の妖精女王に栄光あれ』』』
示し合わせてもいない掛け声が全員揃うところが余計な不気味さを与える。
元々一人の女生徒の取り囲みでしかなかった掌藤親衛隊がまるで別物になってしまったかのようである。
そして魔法円の中に何かの物体が投げ込まれる。
『それでは昨日の成果につき、No.3より報告してもらいます』
『ああ、了解した
先日我らの集会に踏み入った不届者をあのようにバラバラにしてやったのさ』
親衛隊随一の荒事担当のNo.3……飼葉倉次の言葉に全員がどよめく。
雰囲気は様変わりしても、殺人を忌避する常識はどうやら残っていたらしいが……
『女の方は女王に嫌がらせをしていた奴だった
そして男の方はNo.18……つまり我らの女王を裏切った』
生徒証の写しが配られると、次第に不審そうな声が歓声へと変わっていく。
『我等の女王を捨てた!』
『裏切りは抜け駆け以上の大罪である』
『裏切者には死を!!』
歓声が全員に伝染する前に一人が手を挙げて制止する。
周囲に響き渡る電子音が、彼らの恐怖心を刺激したからである。
『我々は未だかつてない作戦を遂行中である
その内容は周囲に知られてはいけない、努々忘れぬよう』
親衛隊のNo.1……雨止蓮司が暴力を以て統制を図る。
今のところは、このような強硬策が通っているが一つ不安な事があった。
(作戦とは具体的に何だろうか
未だあの男より語られてはいない……)
その視線の先にNo.19……『新入り』の姿があった。
『では本題に戻りましょう
No.19……進捗の報告を』
『分かりました
現在『亡霊抹殺』はフェーズ2……盗聴の段階まで入りました』
再び驚きの声が上がりそうになる。
だが、明確な成果に進行を務める用賀浩明すら仮面の下の表情を綻ばせる。
『亡霊抹殺』
即ち女王に一番近い八朝風太の合法的排除を目的とする計画である。
『新入り』が管轄して以来、計画の進行度が段違いに進み始めた。
『我らと志は違えど恨みを共有する協力者により盗聴が実現された』
では御覧に入れよう、という掛け声と共に砂嵐の音が響き渡る。
但し、数秒以内に明瞭な人の声に変っていく。
『ええ、オマエの言う通り親衛隊の『新入り』だろうな』
『……そうか
奴は前の依頼での下手人の可能性もあるから猶更だ』
八朝の声に歓声と怒気が充満する。
確かに盗聴に成功したが、忌むべき『抜け駆け』の場面に親衛隊達のボルテージが上がっていく。
「二度は無いぞ?」
再び雨止の電子音に水を打ったような静寂が広がる。
(貴方にはいつも苦労を掛けます)
(気にするな
これでも俺はNo.3並に荒事に慣れているつもりだ)
端末の個別メールにてリーダーを労わる用賀。
だが逆に気を遣われてしまい、曖昧な表情しか返せなかった。
筒抜けとなった怨敵の情報から、一つ奇妙な音が聞こえる。
『オマエに渡しとくものがあるな』
「……何だ、ノートか?」
『アイツ等の異能力だ、これでもオマエなら大丈夫だろ?』
『出来なくは無いな』
それは親衛隊に入るときに全員が行った『開示』の証を記したノートの音である。
だが女王が気を遣ったのか完全なものではなかったらしく、一同に安心の気配が漂う。
『お前が第二異能部の『亡霊』だな』
突然入り込んできた異能部部長の声に再び緊張が走る。
誰も彼もが今朝のニュースで学園が本腰を入れた事……即ち異能部が動いている事を察知していた。
『……何か用か?』
『先日は部下が粗相をした
この場を借りて謝罪する』
『……そうは言われてもな』
『安心するといい、証文も用意している』
『……そうか』
それっきり異能部部長の声が届かなくなる。
間一髪の状況を脱した親衛隊たちが各々胸を撫で下ろす。
(しかし、本当に危険を冒してまで『亡霊抹殺』を進める理由とは?
我々も女王の約定より不殺を誓っているが『新入り』が来てから明らかに雰囲気が……)
用賀が雨止と同じ思考に至ったころ、驚愕の言葉が盗み聞きされる。
『まぁ、オマエが逃げないようアタシからレイズしてやるよ』
『……25日にデートだと!?』
『アタシは異能力者じゃなくて普通の非能力者と恋がしてぇんだよ、分かるか?』
『と、言われてもな……』
『この護衛が出来たらたんまりと鱗くれてやるよ』
背中を叩く音と共に盗聴を終了させる。
それと共に、全員が憚りのない宣言を下す。
『抜け駆けには死を!!!』
お久しぶりです、斑々暖炉です
毎週投稿……ちょっと無理っぽい
あうあうあー(^q^)
今回は2人ほど新キャラが出ていますが
同じ出自のキャラクターなので覚えやすいと思います(当作品比)
引き続き楽しんで読んでいただけたら幸いです
次話は……9月中旬で




