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Case 70-2

2021年5月16日 完成


 (戦況は思った以上に酷い

  我々も死体漁り(コープスピッカー)に寄り掛かった余りに多数の犠牲者を出した)


 (止むを得ない……『羽衣』の配備を)




◆◆◆◆◆◆




『汝はこれより我の巫女である

 男の巫女とは開闢以来でも聞かぬが、汝は霊性が卓越している』


『これまで通り、島の為に励むがよい』




 ……。


 …………。


 ………………。




 社殿の隅、亡き先代の巫女達の頭蓋骨達がこちらを虚ろに睨む。

 島の為とは何たる皮肉か、ここまで酷いとは誰も思いもしない。


 まるで積年が物質化したかのような埃屑傷泥の群れ。

 神聖な場とは名ばかりのゴミ捨て場。


 それが◆◆◆◆の巫女というものであった。




『あの子最近調子乗ってない?』

『いくらテストで百点取れても、それだけじゃんよね』

『ねー』


 数人程度の女子の集まり。

 高々この数人程度が『分校』の意思を代表しているのである。


 全校生徒50人すら満たさず、学年という概念は存在しない。

 そして彼女らは『島長の娘』、『島唯一の商店の娘』、『伝説の一族の末裔』の肩書きを持つ。


 即ち天上人にして処刑人。

 彼女たちだけが巫女(ゴミ)を選ぶ権利を持っていた。


『ねえ、そんなことやってないでちょっと付き合ってよ』

『えっ……でもあとちょっとで……』

『いいから……!

 ほら、帰りに悩みとか聞いてあげるから』


 彼女たちの言う相談とは校舎裏でのイジメである。

 良識を持つ人であれば心を痛めるはずが、誰一人として見向きもしない。


 そして相談のターゲットとなったものは

 8月の祭りで巫女となり、この世から消えてなくなる。


 彼女らの今回のターゲットは■■■■。

 よりにもよって俺の家族に手を出した。


(………………)


 余りの憎しみと行き場のなさに周囲を見渡す。

 無論、誰も止めはしない……どころか面白がる奴までいる始末。


 『お前』も無視し続けたのに、今更人道を説くとは身勝手な。

 ああ、彼等に期待するのが馬鹿であった。


『で、でも今日は■■くんと……』

『そんなの大丈夫っしょ!

 そうだよね、■■■■くん!』


 災いのように降ってきた天上人の御言葉。

 もちろん従うよね、楯突いたらどうなるか分かってるよね?


 俺は立ち上がり、自分の机を叩き割った。


『!!?!!??』


 その轟音で全員の視線が恐怖へと塗り替わる。

 ただ、半分に割った机は振り回しにくい為、何度か地面に打ち付けて形を整える。


 俺はどうやら鬼と呼ばれているらしい。


 『家族』が拾うまで半分崩れた家で半死半生のまま住み続け

 その結果として苦痛の通りが悪くなり、身体の故障を厭わぬ膂力と胆力を得た。


 漸く振り回しやすいコンパクトな形になった時には

 全身の至る所の骨がきしみ、握る手と腕に数か所の肉離れが起きていた。


『やめて!!!』


 ■■■■が両手を広げ立ち塞がる。

 目に見えるほどの震えと、涙目の意味を俺は理解できなかった。


『もう、■■がそうなるの……見たくない!』


 可哀想に目まで瞑ってしまっている。

 もう、といえば過去に一度だけこうやって暴力を振るった事があった。


 そう、あの天上人に引っ付いている(おとこ)にである。

 ■■が嫌がっているのに迫り続けたので、警告を兼ねて石を投げた筈だ。


 彼女たちの後ろで彼は右肩に包帯が巻いて騒いでいた。

 今は全員分を上回る恐怖の視線を投げている。




 ああ、理解した。

 その顔は実に良くない。


 反省もせず、またその顔にしたのだから、次はお前の左肩を抉ってやろう。




『■■■■■■■■■■■■■■■■!』

『お前……!?

 家族だろ! 何しやがってんだ!!』

『こんな鬼を匿うだなんてどうかしてるよ!

 今年の◆◆◆◆さまへの『イケニエ』は決めた!!』


 この先は覚えていない。

 でも今なら、確信を以て言い切ることができる。


 縺昴?蜑阪↓雋エ讒倥i繧堤嚀谿コ縺励↓縺吶l縺ー隗」豎コ縺?。




「……」


 ふと、油断した隙に思い出したくもない過去が蘇る。

 だが、これこそが巫女になった理由……そしてこの島を殺す理由。


 ◆◆◆◆の巫女(イケニエ)を見て見ぬ振りをした全てを地獄へと。

 彼等を島の外は疎か、次の時代まで生かしておく事すら許さない。


 ふと見えたのは◆◆◆◆の井戸。

 伝説によれば、この井戸の蓋から豊穣の気が溢れ出し、島の食料を満たすという。


 普段は4分の1だけ開ける蓋を破壊する。

 神道の教えによると『ケガレ』とは気の枯渇(かれ)より来た言葉らしい。


「まずは糧から穢そう

 復讐はまだ始まったばかりだ」


 ふと■■■■が別れの際に渡した髪飾りを手に取る。

 呪詛に使用した名残で可愛らしいキャラのプリントが赤く汚れていた。




 もう、約束は果たせそうにない。




◆◆◆◆◆◆




「……!?」


 気がつくと風景はアジトの殺風景な灰色に戻っていた。

 そこに用賀(ようが)が近づいてくる。


「お疲れ様です

 30分ぐらいに5人全員の回復が完了しました」

「そうか……世話を掛けた」


 という事で情報収集に立とうとすると用賀(ようが)から制止された。


「駄目です、本日はお休みください」

「……どういう事だ?」

「貴方、蘇生する間譫言(うわごと)が止まりませんでしたよ?

 医師の倅として宣言しますが、今の貴方に正常な思考は不可能です」


 用賀(ようが)から話を聞いて、思い当たるところはあった。


 所謂『本物』が持っていた異能力が変化した『記憶遡行』。

 トリガーは他の異能力の情報であるが、状況を考えて触れる機会は多かった。


 他人の依代(アーム)を直している間、『記憶遡行』が止まらなかったのだろう。


「分かった、今日は休ませてもらう」


 そう言って居住区の上階へとすごすごと退散する。

 破れた窓から吹き付ける寒風が先程の『記憶遡行』を蘇らせる。


(アレが島を殺した動機か……?)


 余りにも身勝手な理論に身体の震えが止まらない。

 自分とは思えない程にかけ離れている筈だが、その激情に見覚えがある。


 即ち『前の6月』にて練兵所と化した学園での生活。

 実効支配する職員に対し、自分の命を厭わぬ程の殺意を漲らせていた。


(……今は考えるのを止めよう)


 そうして休むために宛がわれた部屋の戸を開ける。

 エリスの元気な声と、トランプを持って笑顔の柚月(ゆづき)に出迎えられた。


「……隣の部屋、だよな?」


 表札は間違いなく自分の名前なので、困惑するしかできなかった。

続きます

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