Case 69-4
2021年5月12日 完成(24分遅刻)&ストーリー変更
突如として生徒会長に攻撃を仕掛けた『虹弓』の異能力者。
虚を突かれた生徒会長は為す術なく稲妻となって大地に何度も叩きつけられた……
【2月10日(月)・夕方(16:39) 用賀所有の廃ビル・辰之中】
「な……!?
一体全体何を……」
「決まっているだろ、攻撃だ攻撃」
全く答えにもならないことを口にする『虹弓』。
それで満足できる筈が無く、八朝が抗議する。
「それは知ってる
だがそれがどういう意味かアンタでも知らないはずが……」
「ストップ、俺の名前は埴堂史則だ、よく覚えとけ」
依頼書では秘匿されていた彼の本名が告げられる。
依頼者からの注文であるため、以後そう呼ぶことにする。
「それとお前、ああいうのはもう止めとけ
赤の他人に言って聞かせる様な秘密じゃなかったぞ?」
「そう……だな」
熱狂の冷めた頭で先程の事を振り返る。
客観的にも頭のおかしい行為に頭を抱えたくなる。
その様子に埴堂が溜息を吐く。
「本当にお前ダッセェよな
んで、そのダッセェお前の裏で命乞いしてる俺はどうなんよ?」
余りにも自嘲的な物言いに言葉が無くなる。
その虚ろな笑いからも、彼の中で既に答えが決まっていたのだろう。
転生者の後塵を排するわけにはいかない。
「それとお前、誰も犠牲にしないって言ったよな?」
意地の悪い笑みを向けてくる埴堂。
ああ、彼のスタンスは先程から1ミリも変わっていないのだろう。
「ああ、言った
その挑戦受けてやるから、とっとと後ろに下がれ」
「ちゃんと話を聞いてたか、転生者野郎?」
味方同士で火花を散らしていると
土煙を伴う烈風が八朝達に吹き付けてきた。
「……つまりは、貴方も見逃さないという事でよろしいですね?」
爆心地にいたのはボロボロの生徒会長。
所々が破り落ちた制服の隙間から、依代の如き罅割れが走っている。
よく見ると彼の手足は依代であった。
「憐れまなくても結構
意外と便利なのですよ、コレ」
右手の形を音叉に変更し、地面に突き刺す。
それを抜くと、音叉の周りの土が電磁気で引っ付き、赤熱し始める。
土塊は丸く圧縮され、二又の奥まで火花を散らしながら滑るように移動し始める。
「……!?
エリス!!」
『Hpnaswbjt!!』
轟音と共に土塊が発射される。
それは障壁魔術の6層のうち5層までを吹き飛ばし、なおも減速しない。
所謂レールガンともいうべき超音速の一撃に窮地に陥る。
『Ektht!』
やがて障壁を打ち破り、土塊が眼前まで迫る。
その進路上の不可視の糸に遮られ、まるでスリングショットのように反射した。
「その異能力、中々に厄介ですね
ですが……これならどうでしょうか!!」
生徒会長が更に2発のレールガンを発射する。
狙われていると勘違いした埴堂がそれらを『虹弓』で捕らえるも、狙いは明後日の方向。
その隙に埴堂の目前にまで迫る。
『1110010110』
『Vrzpyq!』
八朝は『空気』を指定して灯杖の相殺で押し出す。
まるで心を読んだかのようにエリスが電子魔術でその初速を大幅に上昇させる。
結果として巻き起こった突風に生徒会長の不安定な足が地から離れる。
「くっ……!」
音叉と化した足に反発の電磁気力を纏わせて転倒を防ぐ。
摩擦が無くなり、壁に激突するまで地面を滑りながら姿勢を整える。
それからはこの近接戦闘が続いた。
電磁反発によって目にもとまらぬ速さと
テスラコイル・ペンチ・銅線とあらゆる形に変え戦法を変え八朝達を圧倒する。
逆に八朝達も数で攻められれば灯杖でまとめて吹き飛ばし
電磁反発による瞬動も埴堂の虹弓が捕え、カウンターを成立させる。
銅線で受けた火傷から生み出した焜炉剣で袈裟斬りを浴びせ
放心している生徒会長に鳴下神楽の体術を打ち込んで吹き飛ばす。
「はは……!
君たち嫌い合いながらも息がぴったりじゃないか!」
音叉を打ち鳴らして賞賛を送る生徒会長。
だが、今度は近づいてきそうにない。
それは手足の累積ダメージを気遣っての行動なのか
或いは八朝達の足りない攻撃バリエーションに気付いての事か。
「ですが、これで終わりです
互いに残り少ない魔力をぶつけ合いましょう!!」
生徒会長は両手を音叉からテスラコイルに変え、中空に掲げる。
積み立てていた運動量をコイルで圧縮し始める。
そして両足は杭となって大地に深々と突き刺した。
これで八朝の突風すらも封じた。
「おいおい、どうすんだよお前?」
埴堂が笑いかけているが口が引き攣っている。
そんな彼に対して、倒すべき敵へと目を向ける八朝。
「どうするも何も、これがお前の望んだことだろう
丁度、先程弾みで思い出したことを試してみようと思ってな」
その返答に思わず天を見上げる埴堂。
それも無視して集中に入る。
これより始めるのは、未だに使いこなせない第三の依代。
あの気恥ずかしい宣言と共に、何らかの回路が通る感触を覚えた。
その淵源である女教皇のタロットを取り出す。
『我より袂を分かつ、汝の名は■■』
それは恐らく22もある『魔術』の祖となった始まりの能力。
本来なら恩恵害毒の区別の付かない霊魂を相手に憑依させる力。
だが、自分の過去を思い出したことでそんな生易しいものでないと知った。
周囲の雑霊よりも悪しき己自身。
それを相手に『汚染』させた方がより『自然』に違いない。
『我が瑕疵を以て、22の苦痛を為す!』
すると霧散するはずだった■■が細い形となって凝集する。
三日月のように滑らかな弓と、羽も尻もない単純な白い矢が顕現する。
それを番えて放つ。
矢は吸い込まれるように生徒会長に直撃するがダメージはない。
「な……!?」
余りにも呆気ない失敗に目を剥く埴堂。
だが、生徒会長はそれ以上に致命的な事が起きて青ざめるだろう。
■■の状態異常は『(ステータスの)汚染』
即ち、一時的に八朝と同じステータスにしてしまう状態異常である。
だがMGIが0なので持続時間は1秒しかないが、それで充分である。
異能力の制御に欠かせないSTR・MGIが0のステータスを押し付けられた相手が一体どうなるのか。
やがて、生徒会長の大技がその場で炸裂し
暴走によってタガの外れた爆風に生徒会長が飲み込まれた。
次でCase69が終了いたします




