Case 65-5
2021年4月23日 完成
掌藤親衛隊の会議に参加する八朝。
だがタイミングが悪く、異能部への宣戦布告に巻き込まれ……
【2月10日(月)・深夜(0:25) 抑川地区・辰之中】
『これは!?』
エリスは周囲のスキャン結果に度肝を抜かれている。
化物どころか、あの人影以外の生命体反応が無い。
即ち辰之中の決戦モード
これが使えるのは異能部か『巻き戻す前』を覚えている人物か。
いずれにせよ、一筋縄ではいかない相手である。
「早速来やがったか」
人影は悠々とその姿を明らかにする。
『岩猿』を纏い、鬼の如き姿を手にした飼葉本人である。
『よぉ、数十分ぶりだな?』
「こんな時間に何か用か?」
『とぼけるなよ新入り
お前には親衛隊の切り札として動いてもらう』
これにて勧誘の真意が判明した。
『前の6月』にて異能部の親組織である十死の諸力を破った功績が翻り
女王を殺された掌藤親衛隊の復讐に強制的に付き合わされそうになっている。
「嫌だと言ったら?」
『だったら先程の言葉を真実にするだけしか無いな』
飼葉が両手を組んで大地を叩く。
まるで水面の如く隆起した大地の衝撃波から間一髪逃れる。
『■■!』
八朝が霧を展開し、目潰しを行う。
足音で背後の瓦礫に隠れる様子が相手に知れ渡る。
『その程度で逃れられるとは思うな!』
もう一度地面を叩く。
人体を木っ端の如く跳ね飛ばす大地の奔流を前に霧が形を変える。
一瞬姿を見せたのはדからנוへの変容。
(え……!?)
(イーチンの火山旅か……このまま突っ込む!)
八朝は4wayの一撃と悟り、瓦礫を乗り越える。
余りにも呆気なく飼葉の懐に潜り込む事に成功した。
『な……に!?』
『■■、■■、■■』
八朝が選択したのは拳に纏う3重の霧。
それらの対応する星辰は金羊・金牛・双児……春の星座である。
即ち木剋土による岩石破壊。
『!?』
八朝から鳩尾に一撃を貰い、纏っていた岩の鎧が砂に返った。
咄嗟に八朝から距離を取り、空気を震わせるほどの合掌をする。
『此れなる上尸よ閉眼すべし
加えて中尸よ馬耳東風を為……』
相手の詠唱が完了するよりも早く、その場から逃げる。
前半の詠唱を聞いてしまった為、視界は消されているがエリスに案内してもらっている。
「逃げるな卑怯者!」
「戦いに卑怯もクソもあるかよ!」
相手を逆上させる言葉を口にしたが、真意はそこではない。
詠唱の内容通りであるなら
尸を介して感覚機能を追い出す呪詛として働いている。
つまりは、認識しなければ尸が出ることは無い。
『■■■■■■……』
更にはエリスに『騒音』を出してもらっている。
飼葉の詠唱が届くことは永遠に無い。
だが、相手も囮を看破し、数々の罠を躱していく。
伊達に親衛隊のNo.3を名乗っている訳では無いらしい。
現在は相手が『岩猿』に固執する余り
八朝が足の速さにおいて僅かに優位を得ていた。
「貴様……沈降帯の外まで逃げるつもりか!?」
それは化物が使うバグった『辰之中』に対する用語だが
バグの原因が他でもない『辰之中』の決戦モードなのであった。
前方に濃い青色の領域が現れ始めた。
『■■■■■■■■■!』
最後の詠唱を振り切り、沈降帯を突っ切る。
『ふうちゃん、右右右!!!』
エリスの指示に従い、右に曲がる。
少しタイミングが遅れたのか左肩と壁にぶつかる。
その拍子に『見猿』の効果が切れ
沈降帯の外の全容が判明する。
「迷路……?」
上下左右に壁、真っ黒な壁に全てを遮られている。
幸いにも飼葉が追ってくる気配は無いが、一難去ってまた一難である。
『辰之中ってこんな所あったっけ?』
「俺は聞いたことは無い
だが、心当たりは一つだけある」
『え、あるの?』
「ああ、毒の雨を防いだ『神器』の異能力者だ」
それは橋の上でEkaawhsと一緒に戦ったうちの一人。
どういう理由でここに迷宮を展開しているかは分からないが
咄嗟に出した霧の反応が彼のものと一致していた。
「まあ、それにはここから出ないとな
連絡先が分からないにはどうしようもないからな」
◆◇◆◇◆◇
使用者:名称不明
誕生日:未調査事項
固有名 :未調査事項
制御番号:未調査事項
種別 :?.AQUAE
STR:? MGI:? DEX:?
BRK:? CON:? LUK:?
依代 :神器
能力 :未調査事項
後遺症 :未調査事項
Interest RAT
Chapter 65-d 敵対 - Opposition
END
これにてCase65、親衛隊vs異能部の回を終了します
という事で、余計な事態が発生してしまいました
一概に未来の記憶を持っている事が良い訳ではありませんね
辻守と敵対してしまう要素が出来てしまいましたが
この後、どう対処するのでしょうか……?
次回は『牛魔』
引き続き楽しんでいただけますと幸いです




