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Case 65-4

2021年4月22日 完成(遅刻)


 Ekaawhsとの遭遇戦を生き残り、篠鶴機関にて診察を受ける。

 そこで雨止(あめやみ)と出会い、掌藤親衛隊への勧誘を受け入れて……




【2月10日(月)・深夜(0:00) 篠鶴市内・某所】




『皆さま、ようこそ我等の円卓へ』


 全員が不透明な状態で月暈の円卓の席に着く。

 円卓にはクロースが敷かれているが、中心部が人の大きさぐらい盛り上がっている。


 用賀(ようが)の『三相雷神』の(ツモォク)に呼ばれ、妖精の身体を手にする。


 その性質上、端末(RAT)であるエリスをこの場に呼べなかったのは痛い。


『それでは掌藤親衛隊、第■■回定例会を開始いたします

 まず初めに、我々に新たな仲間が加わる事となッとことをお伝えいたします』


 司会も務める用賀(ようが)に促され、簡単に自己紹介を行う。

 だが、周囲の反応は思ったよりも冷ややかで嘲笑を含んだ視線を浴びる。


『では会員No.16

 君の適性を検討した結果、血途隊へと所属してもらいます』


 一見すると意味が分からないが、血途が畜生道を意味するなら答えは一つ。

 周囲がどよめく程恐ろしき『鬼神』の飼葉(かいば)の配下。


「……構わない

 だが理由を聞きたい」

『単にNo.3たっての希望でございます』


 用賀(ようが)は努めて公平な言葉を選んでいるが、表情は隠せない。

 要は『自己都合で休もうとする不貞な輩への断罪』という意味合いなのだろう。


 ふと、飼葉(かいば)からの視線を感じた。


『お前、休みたいらしいな?』

「都合が悪ければな」

『力の違いを分かっていないらしい』


 即ち、休みたいなら俺を倒してからにしろという事らしい。

 この条件は譲る訳にはいかないので『情報』を使わせてもらう事にする。


「ああ、だったら今からでもやるか?

 尤も、お前には俺の『罪』とやらは永遠に届かんぞ?」


 飼葉(かいば)は『見猿・聞猿』のデバフと『岩猿』の自己強化だけではない。

 その元となった『庚申の虫』によって相手の暴力を識ることが出来る。


 要は鹿室(かむろ)の『神託(ルーンキャスト)』と同じだが、封じる方法は余りにも有名だ。


 殺伐を生業にする武士が虫の出て来る庚申の晩は寝ずに過ごす。

 即ち、毎日後遺症(レフト)による『庚申講』を繰り返す八朝(やとも)には初めから効かない。


『ほう、それは楽しみだな』


 飼葉(かいば)から強烈なプレッシャーを受ける。

 余計に彼の闘争心を煽ってしまった所で用賀(ようが)が咳払いをした。


『さて、これで彼も『前の6月』の記憶がある事が証明されました』

「前の6月……だと……!?」


 即ち、この場の全員が市新野(いちしの)の正体を知っていた。

 同時にあの地獄を生還したという事実に武者震いが始まってしまう。


 ああ、彼らは(ただ)しく『転生者(チーター)』なのだと。


『では本題に入りますが

 前回の会議にて出された『真の黒幕仮説』なのですが……』


『クロでございました

 彼らと治安部門は物理的に繋がっている……即ち!』


 非常に嫌な予感がした。


 彼らに与することの最大の『欠点』が顔を覗かせる。

 即ち誰かの味方をする限り『誰か』の敵となる当たり前の真実が鎌首を擡げた。




『これより我々は異能部に対し宣戦布告を行うものとする!

 では、我々の採決を一字一句違わずに伝えてくださいね、異能部(クズ)




 用賀(ようが)が円卓の布を開き、中の人物を明らかにする。

 過剰すぎる猿ぐつわで容姿が分からないが、声は『七含人』も兼ねる『彼』のものである。


 全員が起立し、拍手を送る。

 一応八朝(やとも)も周囲に倣うが、もう気が気ではない。




 この瞬間に八朝(やとも)辻守(つじもり)の敵となってしまった。




『では、我々はこれより『ビッグブラザー作戦』を開始する

 各自持ち場に戻り、異能部のクズ共が絶滅するまで己の務めを果たせ!』




【2月10日(月)・深夜(0:23) 太陽喫茶・自室】




『やっぱダメだったじゃん!!』


 珍しくエリスに叱られている。

 最早面目も無く、ただ項垂れるしかない。


 まず彼らが『前の6月』を覚えていた事

 そして彼らの報復に、当の掌藤(たなふじ)がGOサインを出した事。


 全てにおいて八朝(やとも)の知る過去では無くなっていた。


『どーすんのこれ!

 ふうちゃん、辻守(つーちゃん)が必要だよね……もう敵じゃん!』

「そうなるな」

『もーホントに考えているようで何も考えていないんだから!!』


 実のところ、今の状況がプラスに働く可能性もある。

 だが、流石に今の状態のエリスに口答えする気は八朝(やとも)には無かった。


『……ふうちゃん、何か言いたいことあるよね?』

「特には無い

 本当に済まないと思って……」


『うそだよね?』


 もう既に有無も言わさぬ態度で迫られている。

 仕方なく、今の自分がやろうとしている事を話す。


「……あいつ等は『勝てば自由にする』と言った

 今からやって来る飼葉(かいば)を返り討ちにする」


 余りにも向こう見ずの案に自己嫌悪すら湧いて出て来る。

 だが、予想に反してエリスはいい反応をした。


『ホントにそれで自由になるの?』

「幸運にも実力主義の飼葉(かいば)の下だからな」

『だったらさっさとやっちゃおう!』

「待て

 俺が飼葉(かいば)に勝てる保証は……!」




『そんなの、死ぬ気でやればいいだけだよ!

 ふうちゃんが鳴下神楽頑張ってたの知ってるから大丈夫!』




 そう言っている間に自室が辰之中の侵食を受ける。

 星月夜の空の下に、巌の如き人影が佇んでいた……

次でCase65が終了致します

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