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Case 65-3

2021年4月21日 完成


 上級生の放った『簒奪発電(ギフト)』は確かにEkaawhsを捉えた。

 だが、生き残った鏡の向こうのEkaawhが彼の死因たる『紫微大星』に姿を変え……




【2月9日(日)・朝(8:31) 篠鶴学園高等部・学園橋】




 上級生が呆然とする事無く、こちらを見ている。


「君は鏡の向こう側とやらをどうやって倒したんだね?」

「……『預言者』で死因が明らかになっている異能力者に、な」

「成程、確かにその方が良さそうだ」


 対して最後の戦意が折られた彼はもう一言も発していない。

 それでも破壊的な恒星はどんどんと大きくなっていき、空を白熱させていく……


「……ッ!

 ■■(Boaz)■■(Yachin)■■(Anpin)!」


 それらはカバラにて『柱』と呼称されるセフィラの集まり。

 即ち『杞憂』の故事に倣って、落ちて来る『空』を柱で支えてしまえという策略である。


 だが、地の四方に配する必要がある……これでは一つ足りない。


 (アーム)と天星がぶつかる。

 膨張スピードは収まったが、どんどんと柱の無い方向に逸れていく。


 あの規模の大きさだとたとえ逸れた所で……


「おい! しっかりしてくれ!

 今こそアンタの力が必要なんだ!」

「……」


 駄目だった。

 唯一四方を支え得る神器(アーム)が作れる彼は今も放心したまま。


「君、何をしようとしてるんだ?」

「あの星を止めようとしている、それだけだ」

「不可能じゃないのか?」

「いや、あと一つ

 北の方に神器に匹敵する(アーム)があれば……!」


 八朝(やとも)は歯噛みしながら転がり始める天星を見つめる。

 代わりに上級生がある異変に気付いてこの場から立ち去った。


(……まあいい

 俺は俺の出来ることを!)


 折れそうになる心を奮い立てて、破滅の空を睨む。


 星の光球が大気に触れ、上層大気が燃え上がった瞬間

 北方向に待望の柱が出現した。


「な……これは!?」


 上級生の去った方向を見る。

 先程まで恐慌に陥ってた女子が、身体を震わせながら異能力を発動していた。


「彼女が出来ると言ってたからね!」

「ああ、本当に助かった! ありがとう!!」


 泣き笑いでぐちゃぐちゃになった表情を向ける。

 ああ、これで少なくとも『全員』の生存は確定した。


 何故なら『辰之中』を作ったのは篠鶴機関。

 通報で待ってくれと言われた10分が、この瞬間に過ぎ去った。


『認証:0xffff

 非常脱出コードを実行します』


 電子音がこだまする終末の風景が、元の日常の青空に戻る。

 それでも、最後まで抗った八朝(やとも)達4人以外は皆回復死(コマトス)の瀬戸際を漂っていた。




【2月9日(日)・昼(12:44) 篠鶴機関・一般待合スペース】




 それから程なくして篠鶴機関の職員が現場の対応に当たった。

 驚くほど手際よく傷病者を回収し、生き残りの四人も念のために診察を受けることになった。


 犠牲者0人。

 機関職員曰く、エリスの迅速な通報によってこの奇跡が齎されたという。


 それでも本日は立入禁止となり、明日は全日程で授業中止(休日)となった。


「エリス、良かったな」

『いやぁ、でもこれってふうちゃんの……』

「俺は篠鶴機関(アイツ等)に知られるわけにはいかないからな」


 エリスに連絡が入っているかどうか確認させる。

 『依頼者・急用により中断』との1件のみが届いていた。


『橋の上に居たのかな……』

「助かっていると良いんだがな」


 そうすると彼らに近づいてくる影が一つ。

 後ろから『やあ』と陽気な呼びかけが降りかかる。


 先程の3人のいずれでもない上級生がそこにいた。


「誰だ?」

「私は雨止蓮司(あめやみれんじ)

 掌藤親衛隊のリーダーを務める者だ」


 自信満々に恐ろしい事を口にする。

 八朝(やとも)が不審な視線を返すが、お構いなしであるらしい。


「君があの橋での奇跡を指揮したと掴んでな

 しかも聞けば君も神隠し症候群(異世界転生者)ではないか!」


 今更ながら掌藤親衛隊がどういう集まりなのかを思い知る。


 右も左も分からない篠鶴市(異世界)にて世話をしてくれた女神(掌藤)を慕う集団。

 抜け駆けをするだけで、たとえ身内だろうが血の報復を加える危険思想。


「君も女王の助けを受けたのだろう、そうだろう!」

「……まあ、確かにな」


 『2つ前』の4月にて、最初から私的に依頼を受けていたのも

 掌藤千景(たなふじちかげ)のアドバイスによるものであった。


 部長はそれを止めようとしていたが、効率としてはこちらの方が上なのである。


「そこで君にも掌藤親衛隊の門戸を開こうと決定したのだ、どうかね?」


 余りにも予想に反して親切な親衛隊(彼ら)に拍子抜けする。

 だが、横でわちゃわちゃしてるエリスの話も聞く必要がある。


(どうする……やっぱ怪しいよ!)

(……)


 確かに裏がありそうな気がしてなくもない。

 血の粛清とあるだけあって、閉鎖的なのは間違いない。


 一つ、試してみる事にする。


「第二異能部のある時は招集を拒否していいか?」

「おお、それぐらいなら特に問題に無いぞ!」


 駄目だった、逃げ道が無い。

 だが、逆に入った時の利点を考えてみる。


 ……いつか来る『新入り』たる灰霊(グラフィアス)の排除。


「ああ、その条件で引き受ける」

『えっ!?』

「それはそれは!

 では、明日の午前0時に顔合わせだ……それには?」

「問題ない」


 という事で雨止(あめやみ)と別れる。

 そして、エリスから凄まじい勢いで言い募られる。


『ふうちゃん!?

 あの親衛隊だよ?』

「構わない、これで灰霊(グラフィアス)に睨みが効く」

『でもでも敵だったじゃん!』

「それぐらいの変革が必要なのかもな

 俺が3か月先に睡眠不足で脳死する未来を変えるには、だ」

『うぅ……』


 まだエリスは納得してないようだが背に腹は代えられない。

 青銅人が駄目になっても、こちらが機能すれば或いは……


続きます

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