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Case 65-2

2021年4月20日 完成


 Ekaawhsの急襲により窮地に陥る八朝(やとも)達。

 生き残った赤の他人の3人と共に化物(ナイト)に立ち向かう……




【2月9日(日)・朝(8:27) 篠鶴学園高等部・学園橋】




 消え失せた障壁の隙間から

 紫色の死の雨が横殴りに降り注ぐ。


 一つ一つが致死の毒……まずはこれを防がなくては話にならない。


『■■■■■!』


 そこに一人目の固有名(スペル)が放たれる。

 振り向くとやたらと格好付けたポーズをしているが、そんな暇は無いし意味もない。


 目の前に化物(ナイト)よりはるかに大きな『物体(アーム)』が出現し

 毒の雨の攻撃を完全に防ぎ切ったからである。


「な……!?」

「言ったろ、俺に任せろって!

 まぁ、デカすぎてマトモに振り回せないんだがな!」


 それでも毒の侵食は進行していく。

 このままでは意味がないので八朝(やとも)(taw)を三つ同時に発動させる。


(まずは補修だな

 壊れてしまっては『メイン』が潰れるからな)


 ふと横眼で、上級生が発動態勢を整えている。

 まだ飽和していないのか、飛び散る火花の色が赤色と温度が低い。


 それに気づいた上級生が首を振る。

 まだ耐えて欲しい、との事であった。


「えっ!? 回復しやがった!?」

「当然だ……俺の依代(アーム)には拒否反応が存在しない

 霧状にして欠けた部分を補修すれば、まあこの通りだ」


 それを訊いても相手はまだ反論している。

 だが、続いてこの異能力の概要を把握しなければならない。


 霧の中に(Fire)א()とそれらが八雷神(pit)に変容する様子を確認する。

 つまりは小アルカナの『棒の1(火の根源)』と大アルカナの『(神の家)』を意味している。


 これらには共通点というよりも補足説明という意味合いの方が強い。


 即ち、雷が『火の変種』或いは『神の力』だと語られた旧き時代

 人では抗えぬ強大な敵に対して振るわれる神々の武器たる……


雷霆(ケラウノス)……だと……!?)


 記憶遡行の頭痛がその推論が真実であると告げている。


 馬鹿みたいな仮説と現実が揺らぐ幻覚、二重の意味での頭痛が襲い掛かる。

 八朝(やとも)が驚いている間も、相手は言い募る。


「何だその顔、まだ足りないってか? だったら!」

「ちょ……!?」


 相手が更に『神器(アーム)』を召喚する。

 そのせいで(taw)が映す暗示内容が『1のスート(四大元素)』の乱発で解読不能(カオス)に陥る。


「お……やるねキミ

 僕も良い所見せたいけど……」


 上級生も負けじとチャージに力を籠めるが黄と白の往復から一向に変化しない。

 もどかしい状況の間、毒の回りもどんどん早くなっていく。


「残念だが『電力』が足りないんだ」


 その発言に気付いた八朝(やとも)が自分用に残していた1枠を用い

 (taw)を上級生の方へと差し向ける。


「これがパワーアップなのかい?」

「いや、事前調査だ

 ……『剣の5』って事は電力をどこからか奪っているのか?」

「ご名答、名付けて『簒奪発電』さ」


 発『電』という言葉を聞き、一つ道が開ける。

 だが、その為には雷霆(アーム)を所有する彼の了承が必要だ。


「……一ついい案があるんだが」

「ええい、何でも言いやがれってんだ!」

「今から罰則(ペイン)を受けてもらうが……」


 内容を相手に伝える。

 上級生の能力(ギフト)と、最初に出した神器(アーム)の相性。


 そのシナジーを発揮するには神器(アーム)を破壊せねばならぬという。


「無理には言わない、他の案も」

「……やってやるよ

 お前だって、さっきから罰則(ペイン)に耐えてんだろ?」


 相手の言葉に驚く八朝(やとも)だが

 最初の評価である『冷静沈着』が正しいなら、当然の洞察内容である。


「お前にできて俺に出来ない理由は無いだろ?」

「……本当に良いんだな?」


 お互いに悪い顔で了承する。

 時間は無い、急いで上級生に呼び掛ける。


「簒奪発電!」

「それは僕の事かい?」

「ああ、最初に出てきた依代(アーム)があるだろ?

 そいつを能力(ギフト)で吸い込め……そうすれば一気にチャージできる筈だ」

「それは……」

「本人からも了承を貰った!」


 上級生が八朝(やとも)達の顔を見るなり表情を緩める。

 そして、今まで隠していた本性の表情で指示に応じる。


 触れた瞬間に火花が最大チャージを表す『青』に変化した。


「ほほう、これは良い……実に良い!」


 抑えきれず雷の欠片がこちらにまで擦過してくる。

 まさにミチザネ(アルキオネⅢ)の『雷の雨』に匹敵する威圧感が雪崩れ込む。


『では終わらせよう……■■■■■!』


 最大チャージと共に他の依代(しょうへき)が霧に還っていく。

 その隙間から雪崩れ込んできた毒の雨を、余波のみで蒸発させていく。


 迸る神罰の如き一撃がEkaawhsを捉えた。


『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■』


 Ekaawhsが苦悶の声を挙げてもんどりを打つ。

 触手は自ら動かせない性質が幸いして、こちらに届いていない。


「さらに鏡の向こうも焼き尽くしてやろう!」


 雷はEkaawhsを貫通するや否や多岐に裂かれていく。

 そして鏡となり得る窓や水面に向かって無数に飛んでいく。


 大地まで燃やし尽くす能力(ギフト)の奔流が尽きた頃には

 Ekaawhsの姿もまた塵一つ残さず焼尽した。


「やったか!?」


 だが、残骸の鉄骨の中からぬるりと何かが姿を現す。

 それらはタイムラプスで日食を捉えたかの如き様子で空に出現した。


 どうやら上級生の異能力は鏡の向こうではなく

 鏡面のみ焼き尽くしてしまったらしい。


「な……!? まさか!?」

『ふうちゃん、これ『巻き戻す前』の……』


 皆まで言わなくても理解していた。


 生き残った人間は、あの太陽から人類を滅ぼしてもお釣りが来る程の危機感を。

 八朝(やとも)達は、400秒で北極星(コカブ)を落とす『ある妖魔』の異能力を。


「オイオイ……これが僕の『死因』だって!?」


 呆然と極光(オーロラ)紅炎(プロミネンス)を撒き散らす天星を見つめる。

 橙色の『星の死』が、自分たちでなくそれを支える大地に舌なめずりして睥睨するその様を……

続きます

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