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Case 60-i-1:Commentout 2

2021年3月28日 完成&誤字修正


 またも真っ暗な空間に飛ばされる。

 嫌の予感を感じつつも、周囲を観察してみる。




【TIMESTAMP_ERROR ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】




(これは……)


 周囲を見渡しても特に暗闇以外の変化が無い。

 ああ、これでもう3度目だ。


 『創造神』が用意した『巻き戻し』の為の空間。


(大体何の為に巻き戻すんだ

 今回に至っては、ほぼ確定のものを思い出した筈だ)


 使命(オーダー)として出された『記憶遡行』のうち

 恐らく死の寸前に体験したであろう『鷹狗ヶ島虐殺』の記憶。


 八朝(やとも)が島中の人間を殺し回ったという忌むべき内容であった。


(これ以外に何があるんだ一体)


 と、息巻いてみたが考えれば考える程に穴が目立っている。


 例えば、何故島の人間がターゲットだったのか。

 感情のみは『復讐』と分かる筈なのに、証拠となる記憶(前日譚)が一切思い出せない。


 どうして彼らを狙おうと思ったのか。

 それに至る人間関係のトラブルとは。

 または盛大な勘違いなのか。


(家が半分土砂崩れに呑まれているのと何か関係が……?)


 だが、ここであることを思い出す。


 そもそも鷹狗ヶ島とは『地下迷宮』の『第三層(ナイト)』の筈である。

 即ち『創造神』の化物(Resh-He)と同じく妄想の産物の筈だ。


 それを『正しい』と思う自分の直観とは?


(……埒が明かないな

 そっちよりも先にこの空間を調べてみるか)


 八朝(やとも)(taw)を出現させて周囲を観察する。

 そう言えば『前回』は三刀坂(みとさか)がいた筈なのに、今回は誰もいない。


 『創造神』すら見当たらない。


(何が起こってるんだ?)


 (taw)の方も何もヒットしない。

 これでは手掛かりも何もへったくれもない。


(逆に『何も無い』という事なのか?

 それはつまり巻き戻し後がそうなのか、これ以上巻き戻しが起きないことなのか……)


 巻き戻しが無い……即ち死。

 原因は言うまでもなく後遺症(レフト)の不眠なのだろう。


(10日でも精神が狂うと言われているが

 俺の場合は100日以上……逆に何故生きていたんだ?)


 考えても考えても、ここから出れる手だてが無い。

 (taw)の方もぼんやりと『■■(digg)』『■■(nahs)』『■■(qup)』の字が……


(何だ、どういう事だ!?

 さっきまでは見えなかったはずなのに3つも文字が)


 だが、関連性の見いだせない組み合わせで読解に難航する。

 分かることがあるとすれば、ゲマトリア法で『154』になることぐらいか……


(154……11のオセロトル……

 確か4月の辺りは同じトレセーナ(オソマトリ)だった気が)


 胸ポケットにあった端末(RAT)の電卓で計算してみる。

 結果は4月17日……確定であった。


 更に4(digg)の所が5(haw)に変化した。


(時間が……経過している……!?)


 何もできぬまま文字が次々と変化していく。

 そして文字が『1のク(Resh)アウー(Lamd)トリ(Haw)』の所で止まる。


 即ち7月7日である。


(ここに来る前の日付……?

 いや、それよりも20日近く早い)




『それは君の命日さ』




 振り向くといつの間にか『創造神』がいた。

 目に優しい光輪(ハイロゥ)の光が、余計に苛々とさせる。


「随分と精度が低いみたいだな」

『人間如きの寿命にそこまでの粒度は求めてないよ』


 相変わらず蔑む様な返しである。

 それが自分の態度の鏡写しであるとは自覚するが、それでも許せない。


『まぁ、何にせよ君はどうあがいても7月までに死ぬ

 これは運命とかそういうものじゃなくて、不眠による多臓器不全でね』


 こちらに屈託のない笑みを見せる『創造神』。


『君、勤勉なのはいいけど

 流石に1時間ぐらい眠ったらどうかな?』

「……そういう風に仕向けた奴がよくもまぁ」

『えぇ……君がそう『嘘を吐いて』いたのが悪いんじゃないの?』


 善意でやったのでは、と言いかけた言葉を呑み込む。

 相変わらずの剝き出しの悪意に、相手をするだけでも疲れる。


「また巻き戻すのか?」

『当然、完全に思い出すまで巻き戻すよ!

 もちろん、同じ展開になってはバリエーションも無くなるからね……』




『攻略対象も鳴下(なりもと)さんから変えちゃおうね!』




 流石に酷過ぎる。

 表情を抑えることは難しいが、口車に乗せられる訳にはいかない。


「そうかいそうかい

 じゃあ、さっさと済ませてくれ」

『君、本当に理解してる?

 口だけそう言ってまた同じことをする気でしょ?』

「何も言ってないが

 随分と妄想が達者で」


 いつの間にか目の前までやってきた『創造神』にそう吐き捨てる。

 だが、彼の不遜な笑いは崩れない。


『そう?

 そういやこの空間の数字は見つけてくれたみたいだね』




『あれはね……君が『前と同じ運命を辿った世界』だよ』




 抽象的過ぎて一瞬判断に困る。

 『創造神』作業を止め、人差し指で八朝(やとも)の額を小突く。


 踏みとどまろうとしたが、勢いが止まらない。

 やがて『創造神』のいたところから落ちていく。


『特別に見せてあげよう

 君が『巻き戻そなきゃいけない理由』をね!!』


 やがて視界を埋め尽くす闇が、無限の光へと置き換わった。

続きます

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