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Case 60-0-2:Root B END2

2021年3月27日 完成


 Case59-2-3の続きとなります


 あの日に八朝(やとも)は最後の残党を狩り損ねる。

 篠鶴市は、アマビコ(アルキオネⅣ)と『ペダル』の脅威に晒される結果となった。




【7月末日 太陽喫茶・共用スペース】




『我々ノ『聖戦』ハ既ニ1か月ヲ超エ

 日本全土ノ非能力者ノ放逐ニ成功シタ』


『最早我々ノ悲願タル『異能力者の世界』ハ成ッタ

 ……ダガ、ソレデモ我々ニ楯突ク『愚者』ハ未ダニ残ッテイル』




『『ペダル』ダ』




『奴等コソ、異能力ヲ掠メ取リ

 新シキ世界ノ秩序ヲ標榜スル盗人デアル!!』


『『ワクチン』ヲ信ジテハナラヌ

 『白紙は書』ハ所詮『白紙』ニ過ギヌノダ!』


『来ルベキ未来

 全人類ニ平等ナ世界ノ為ニ不要ナノハ何方デアルカ?』




『ペダル』

『ペダル』

『ペダル』『ペダル』

『ペダル』『ペダル』『ペダル』

『ペダル』『ペダル』『ペダル』『ペダル』『ペダル』『ペダル』『ペダル』




『ペダル!!!』




『ソウ、盗人デアル

 盗人ニハ盗人ラシク『罰』ヲ与エネバナラヌ』


『アノ鉄屑共ニ裁キノ一撃ヲ!』


『因縁ノ篠鶴市ニテ

 奴等ノ『根絶』ヲ宣言シヨウデハナ……』


 テレビの電源が落とされる。

 そこはマスターらしい英断であった。


「勝手な事を言いやがる化物(ナイト)だなァ」


 マスターは煙草に手を伸ばそうとして苦い顔で止める。

 もうすぐ戦場となるこの町の未来を前に不味くなったのだろう。




 この町を取り巻く状況は1日単位で激変している。




 鳴下家当主の急死、金牛明彦による篠鶴機関の再建

 そこに人語を介するアマビコ(アルキオネⅣ)による宣戦布告である。


 要求は一つ。

 非能力者最後の砦である『榑宮』の虐殺。


 無論受け入れる訳にも行かず

 内外からの侵攻を職員、義勇兵、そして学園生達によって凌ぐ毎日。


 やがて、新体制の篠鶴機関が『異能力症候群の特効薬』である『白紙の書』を発表。


 『ペダル』と呼ばれる国際組織の協力の下

 後遺症無しに感知させる手段が漸く開発されたのである。


 その最中、アマビコ(アルキオネⅣ)がこの宣言を電波ジャックにて為したのである。


(大方、『ペダル』殲滅は建前で

 榑宮を主戦場にして非能力者を巻き込む気なのだろう)


 八朝(やとも)も先程から食指が動いていない。

 それにはもう一つ理由があるのだが、早速その話題が上がる。


「お前……『白紙の書』は何時にするんだ?」

「……まだ決めていない」


 それは分かりにくいが八朝(やとも)の拒絶表明である。

 マスターはどうしたものかと頭を掻く。


「お前さんの言いたい事は分かる

 『ペダル』を信用してはならない、最初は俺も賛成した」


「だが見てみろ

 篠鶴市から異能力者が次々と減っていっている」


「誰一人、お前みたいな辛気臭い顔をしているか?」


 そう言われて耳に痛い八朝(やとも)である。


 もう化物(ナイト)にも電子魔術乱舞(グラムストーム)にも怯えずに済む。

 少なくとも、クラスメートで未だに暗いのは自分ぐらいである。


「ああ、お陰で『戦争中毒者(ジャンキー)』と呼ばれるようになったよ」

「そうだろう、なら……」

「それでも、俺は『ペダル』を疑い続ける」


 そう言って食べ終わった皿を片付け

 そのまま学校へと行った。


 もうここ(太陽喫茶)には俺と天ヶ井夫妻(マスター達)しか残っていなかった。




【同日夕方 篠鶴学園・第二異能部部室】




「貴方、こんなところに居ましての?」


 軍用の装備を揺らして鳴下(なりもと)が扉を開ける。

 八朝(やとも)は部長の残した書類を読み進めている途中であった。


「もうそんな時間か?」

「ええ、あと1時間でアマビコ(アルキオネⅣ)がやって来ますわよ」


 窓の外は嘘みたいに平和な光景。


 だが、アマビコ(アルキオネⅣ)は『地面から生える』と称される通り

 宣言した時刻丁度に突如姿を現すのである。


「すまんが、遅れると言ってくれ」

「……銃殺されますわよ?」

「知った事か、どうせ俺はもうすぐ死ぬからな」


 その言葉に鳴下(なりもと)がムッとした表情になる。

 だが、これだけは真実なのである。


 人間が数か月も無睡眠に耐えられる筈もない。

 近いうちに突然心臓が止まると何度も説明しているのに納得してくれない。


 少し何かに悩んだのち、鳴下(なりもと)がこちらに近づいて来た。


「また『ペダル』ですの?」

「ああ、奴らは信用ならん……何故なら」


「『創造神』ですわね?」


 先に答えを言われてしまう。

 ああ、彼が『ペダル』を信用していないのは偏に『創造神』のせいである。


 彼が転生者を騙して化物(Resh-He)を使役し

 エリスを端末(RAT)の中に閉じ込めたのである。


 この『巻き戻す前の世界』すら『創造神』の悪意の結果である。


「……謎の物資輸送、ですか?」

「ああ、部長たちが一番怪しいと言っていたものだ

 何でも『中身のない書籍』を異能部が大量に取り寄せたのだからな」


 最終的には禁制品の密輸と締めくくられているも

 八朝(やとも)……どころか鳴下(なりもと)にすら違った意味を捉える。


「発注元が三刀坂(みとさか)さんのお兄さん……まさか!」

「ああ、奴はまだこの時は『異能力者の絶滅』を企てていた頃だ

 最初、奴が正反対の十死の諸力フォーティンフォーセズに与している理由が分からなかったが」


「今なら言える

 『ペダル』の『理念』と奴の思想が合致している」


 『ペダル』


 対異能力国際組織であり、篠鶴機関の『異能力症候群説』を支持する数少ない勢力である。

 病であるなら治る……即ち『異能力者の根絶された世界』と目指す方向性が一致している。


 『過程』はともかく、弘治が『白紙の書』を持っている理屈と合っている。


「……だから、何ですの?

 彼らは私たちから異能力(苦しみの種)を取り除こうとしていますのに」

「ああ、ただ『治す』だけならな

 奴らは『白紙の書』から異能力を放っていたからな」


 比婆の異能力完治と『ペダル』の構成員たる曲橋(くせばし)への継承。

 さらに、もう一つの証拠を明らかにするために鳴下(なりもと)にある紙を渡す。


「……比婆陽介の電子魔術(グラム)適性報告書?」

「結果を見てみろ」

「……な!?

 全てE-(最低)評価……!?」


 更に数枚渡す。

 多少陰謀論の域を出ていないが、奴らは完全な非能力者に『戻しきれていない』。


 いや、敢えて戻していないのである。


「幸運だったな

 何故か鳴下(なりもと)に『白紙の書』が不調で」

「え……ええ……」


 鳴下(なりもと)もある悩みを抱えていた。

 何故か彼女だけ『白紙の書』による治療が上手く行っていないのである。


 鳴下の血筋が邪魔しているのかはさておき

 彼女だけ取り残すわけにはいかない……これも八朝(やとも)が異能力を手放さない理由である。


「で、でも数か月で適性が戻るって……」

『残念だけど、それはあり得ないっぽいよ』

「エリス……見つけたのか?」

『うん、ホント意外だったよ

 まさかこの報告者の頭文字が単純な『printlnコード』になっていたなんて』


 printlnとはコマンドラインに変数で設定した文字列を表示するプログラムである。


 この報告書群は共通して本文の1文字目に奇妙な違和感があった。

 漢検1級……どころか繁字体レベルで見慣れない文字となっていたのである。


 改めてエリスに精査を頼んだ結果、隠しメッセージが見つかったのである。


「それは……どういう事ですの?」

『部長さんが残してくれたものだよ

 さぁ、わたしの画面に注目してね!!!』


 催促通り、エリスの表示させた画面を観察する……




  Nom形式の危険性

  星を使って異能力を制御する画期的な方式と謳われているが事実は異なる


  異能力から属人性を奪い、『白紙の書』に適応させやすくするのが真の狙い

  いずれ『持ち主』が、異能力無き弱体の篠鶴市を襲いに来るだろう……            




  これを読んでくれている異能部部員は直ちにSln形式に戻すように

  頼みましたよ、八朝風太……


   xxxx年5月xx日 異能部部長・里塚真白




「そん……な……!?」


 呆然とする彼女の呻き声は

 榑宮から響いた幕開けを知らせる異能力の轟音が掻き消した……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 DATA_ERROR




xxxxxxxx xxx

  NORMALEND4   開戦 - Open Combat





END


これにてRootBが(少々マシに)終了致しました


如何でしたでしょうか?


部長がSln型に拘る理由(書いてなかった)

『創造神』と『ペダル』の関係(敢えて書かなかった)


……何にせよ、こちらのエンドは新たな始まりとしてのエンドです。


篠鶴市が『アマビコ』と『ペダル』の抗争の舞台となり

主人公たちがその荒波に呑まれていくのですが、これ以上は書きません


本筋と全然関係なくなるからね(メタ)


あと、もうすぐ死ぬとは本当に『睡眠不足』だけでしょうか?

未来へループした時……まぁ、これはCase-60-0-3で触れます


それでは、引き続き章末をお楽しみください

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