表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
327/582

Case 59-1-53

2021年3月26日 完成


 Case59-1-4にて③を選んだ方はこちらからお読みください


 八朝(やとも)は一か八か何もしないことを選択する。

 一見自殺を望むかのような選択肢だが、果たして数秒先は如何に……




【TIMESTAMP_ERROR 篠鶴市地下xxxメートル】




『……ッ!!』


 ナイフが八朝(やとも)を逸れて地面に深々と刺さる。

 最後の一瞬に至るまで八朝(やとも)からの反撃が無い事に焦りを覚えているらしい。


『馬鹿なあり得ん!

 奴には一体何が見えているのか!?』


(……特には考えていないがな)


 戒律(ムルリジ)の独り言を外野から眺める八朝(やとも)

 自分でもこれは何の意味のない選択肢だと思っているが……


(な……!?

 時間が元に戻っている!?)


 気が付くと自分の視点が実体へと戻っている。

 地面には魔力が動いていた感触がほんの少し残っている。


『……ならば、暴くまでの事!』


 そう言って戒律(ムルリジ)が錫杖を鳴らす。


 目を閉じている状態で何も見えないが

 急に湿気が強くなったことから霧が発生していると悟る。


(典型的な幻術か

 『暴く』と言ったのだから、性質は俺の(taw)と同じ)


 やがて湿り気から、べた付く嫌な感触へと変わる。

 そして遠くから悲鳴が聞こえ始める。


(本当に何が起きている!?)


 だが、ここで目を開ければ折角の『何もしない』が無駄になる。

 見えない目を捨てて、耳だけを頼りに状況を掴む。


『ほうほう、これが奴の罪悪感

 だが妙だ……家はあるのに人の気配がまるでない』


『何だコレは……血か?

 であればサバイバーズギルトであるか』


 途端に八朝(やとも)が嫌な予感を覚える。

 罪悪感の根源たる、廃墟の、しかも血塗れの記憶……それはアレしかない。


(ここは鷹狗ヶ島か!?)


 しかし、それでも動かない。

 やがて、異変がすぐ傍で靴音を鳴らせる。


『や、やめてくれ

 俺は関係無いだろ……殺す必要は』


『死ね』


 肉の潰れる音、何故か酷く懐かしく気持ち悪い。

 この一幕は『記憶遡行』でも体感済みの『虐殺』の記憶。


『やめてくれ、死にたくない!』

『ぼぼおぼぼ僕は友達だったらろ、だkら見逃し』

『儂の選択は正しい

 いずれ貴様が我々と同じく……』


 虐殺の音がどんどんと戒律(ムルリジ)の方へと進んでいく。

 何かに気付いたのか錫杖が揺れて音を鳴らせる。


『敵が見えない!?

 何だ……これではまるで……』


八朝(やとも)が……殺しているのか?』


 今更になって狼狽する戒律(ムルリジ)

 やがて音の方向が変わっていった様子から逃げ惑っているのだと悟る。


(今なら大丈夫そうだ)


 目を開ける。

 そこに映っていたのは、あの『第三層』で見た酸鼻の光景。


 島中に殺した人間の血飛沫がこびり付く鷹狗ヶ島(こきょう)の姿。


「逃げたのは神社の方か

 曲がりなりにも向こうも勘が良いらしい」


 そして八朝(やとも)も神社へと急行する。

 その隣にある土砂崩れで半壊している実家……そしてその地下。


 戒律(ムルリジ)と、過去の八朝(じぶん)の姿があった。


『待て、ようやく分かったぞ

 貴様が我が『浄化』に抵抗できる理由』




『貴様はこの地獄を『正しい』と思ってやがるな!?』




『……』


 過去の自分は何も答えない。

 記憶が無いので、彼の思考を伺い知ることはできない。


 だが、今の八朝(やとも)は、明確に彼の非難に是と頷いた。


(当たり前だ

 俺から全てを奪ったこの島に、最大級の苦痛……を……?)


 唐突に正気に戻った八朝(やとも)が頭を抱える。

 全てをとは何の事か、記憶喪失なのか、それともこの島での……


『この人殺し

 ……いや人殺しすら生温い、この狗畜生が!!!』


『貴様は喋る事すら罪深い……

 その生全てを苦痛に転化できるよう、我も本気を出そう!』


『貴様に関わる全てから

 無限の『呪詛』を放たれて死ぬがいい!!!」




『お前も死人だ

 死人は生きてはならない』




 唐突に過去の八朝(じぶん)が何か異能力を発動させる。

 その瞬間に戒律(ムルリジ)の身体が骨だけを残して消滅した。


(な……!?)


 そして、視線はこちらに。

 どうやらもう一人いる事に気付いているらしい。


(まずい……ッ!

 何も覚えていないが、あれだけは食らってはならない!)


 逃げようとして、地上からの灯りがすでに途絶えている事に気付く。

 ここは幻覚の世界……であるなら一瞬にして出口が消えることすらあり得る。


■■(alp)!』


 応戦しようとして、ふと何かの声に気付く。

 どこかで既視感の覚える声に、全力で叫ぶ。


「ああ、俺は応じる!!!」


 その瞬間に八朝(やとも)の周りを複雑な魔法円の文様が満たしていく。


 即ち、『七含人』の番外たる『口寄せの一族』が放つ『招集命令』。

 たとえ世界の裏側でも一声で本殿へと瞬間移動させられる怪現象である。


『……』


 消えゆく霧と溶岩の世界の中で

 過去の八朝(じぶん)が何かを呟いた気がする。


 それを噛み締める事無く八朝(やとも)の視界が白一色に塗りつぶされた……。 




◆◇◆◇◆◇




 DATA_LOADING_NOW:00.0 %

  Expect:xxxxxxxxxxxxxxxxxx Years




xxxxxxxx xxx


  ■■■■■■■ 59-b   惨劇 - Terrible Disaster




END

これにてCase59、蘇る惨劇の回を終了致します


何がとは言いませんが便利ですよね、アレ


但し、使用するにも条件があり

神式で場を清める必要があります


分家では無理でも彼女なら或いは……

おっとこれ以上はナシです


次回は『青空』となります

それでは引き続き楽しんでいただけると幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ