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Case 59-1-2

2021年3月25日 完成


 十死の諸力フォーティーンフォーセズが壊滅した。

 だが、嫌な予感が加速的に高まっていく……




【6月25日(水)・夕方(19:36) 抑川地区・太陽喫茶前】




「やったあああああ!!」


 鳴下(なりもと)三刀坂(みとさか)が我を忘れて喜ぶ。

 八朝(やとも)からしても胸を撫で下ろせる所……なのだが最後の言葉が引っかかる。


(勝ったと思うなよ、というのは一体……

 万が一を考えて天然ナノマシン(レトロウイルス)ごと無効化したのだが)


(何か、呆気なさすぎる……?)


 周囲を見渡してみる。


 彼女らに水を差すようで(taw)は使わなかったが

 それは八朝(やとも)の判断を遅らせる悪手となってしまった。


(……特に異常はッ!?)


 突然手を繋がれ

 どころか持ち上げられ胴上げされる。


「ちょ……!」

「今回の功労者様だぞ、もっと喜べー」

「そうですわね

 偶には羽目を外すのも如何かしら?」

「おっ気が合うじゃん!」


 という事で彼女らの満足がいくまで胴上げされる。


 災害ともいうべきミチザネ(アルキオネⅢ)を退け

 町に潜む癌の如き十死の諸力フォーティーンフォーセズが消え去った。


 何度も言うがこれで喜ばない奴はいない。


(……十字の道?)


 胴上げされたことで周囲の様子が更に鮮明となった。

 問題は北方向……あそこから何やら土煙が漂っている。


 あの地域に展開している軍や集団は存在しない。

 事実、激戦区の北東(榑宮)では戦火が収まり元の静寂を取り戻している。


(いや、その先か

 確か海……いや北東方向に篠鶴機関本部……)


 思い出すのはエリスが用意した電脳世界の妖精魔術(グラム)

 DB直前のDMZにて遷移の基準となる(ポイント)が二つ存在していた。


 そのもう一方には何があったんだ?


「……ッ!」

「あ、ごめんごめん

 調子悪いなら言ってよー」

「いや、すまない」

「謝るのも禁止ですわ、無礼講ですもの」


「そうじゃない

 今更だが思い出したんんだ」


 その言葉に二人とも楽しそうな雰囲気を無くしてしまう。

 今まで八朝(やとも)の言う『思い出した』にハズレは無い。


 例外なく、次の災害の兆候である。


「何が……ですの?」

「DB前に遷移点(ムーブポイント)が二つあったのは覚えているか?」

「ええ、確か軽い方と重い方でしたわね?」

「俺達は軽い方を選択してDBを見つけた

 逆に重い方には何があったんだろうなって」


「それを思い出した」


 二人に聞かせたのは身の毛のよだつ地獄であった。

 記憶ですらない、可能性の『全滅』の話に鳴下(なりもと)が眉を顰める。


「それは有り得ませんわ

 私たちはあの時点で死んでいませんでしょう」

「ああ、それも分かる……だが」


「それ、ホントの事だよ」


 三刀坂(みとさか)がそこに爆弾発言を投げ込む。

 空気を読んでいないというよりかは、何らかの『真実』を含んだ物言いである。


「どういう事だ?」

八朝(やとも)君……うん、『本物』の話だけど

 八朝(やとも)君の異能力は元々『未来予知』だったんだよ」

「そ、それが何ですの?」

「それも『確定の』じゃなくて『可能性全て』、しかも過去現在他人も含めてなの

 だから考えたの、もしかして今の八朝(やとも)君の『記憶遡行』が彼の置き土産だとしたら……」


 考える、確かに思い当たる節はあった。


 三刀坂(みとさか)の逆鱗に触れて殺される記憶。

 飯綱(いづな)の恨みを買い、血の一滴まで凍り付かされる記憶。


 そして、重い方を選び

 その先にいた『化物』の如き異能力者に心を破壊される記憶(かのうせい)


 全て、今の自分と矛盾している。


『うん、それで合ってる

 たった今重い方の要領の計算が終わったんだけど……』


 端末(RAT)の画面を覗いてみると

 プラマイ1で細かく変動している数値が表示されていた。


『100ペタバイト

 ……これは何ですの?』

『多分、これ人間一人分のデータ量なんだけど』


 その答え合わせをするかのように

 大路の先から異様な気配を感じてしまう。


(な、何だこの……動けない……?)


 異能力によるものでは決してない。

 単純な威圧感によって呪縛されてしまっている。


 それは残り三人にも言える事であった。


「……ッ!」


 向こうから何かが来る。

 今まで出会ったことのない……それこそあの『妖魔』以上。


 下手すればミチザネ(アルキオネⅢ)に匹敵するかもしれない。


『……ょ』


『……せよ』




『反省せよ』




 錫杖が鳴る。

 それだけで、今まで忘れていた『悪い事』が掘り起こされる。


 ああ、そうして全員を自尽に追い込んだのだ。


「……ッ!」


『反省せよ』


 そういう訳にはいかない。

 お前の反省とは即ち『惨たらしい死』なのであろうよ。


『言うではないか

 そこまでは求めていない、だが』


『当たり前の摂理を犯した者に、相応しき罰を与える』




『それが、第七席(ムルリジ)としての『戒律』である』




 その一言で彼の素性が判明した。

 壊滅したはずの十死の諸力フォーティーンフォーセズの最後。


 即ち闇属性電子魔術(グラムアンブラ)による精神掌握。


「エリス!

 俺以外を隔離しろ!!」


 大声でエリスを瘴気に戻らせ、障壁魔術を張らせる。

 そして指示通りに八朝(やとも)第七席(ムルリジ)のみ辰之中に送る。


「な……!?」


 あの青かった辰之中が一面の赤い灼熱の海となっていた。

 運よく足場があったものの、運悪く足場のない場所に降り立った場合命の保証ができない。


「……だが結果は変わらぬ

 貴様を『浄化』し、そして世界を『浄化』する」


 もう一つの錫杖(アーム)を取り出して交差させる。

 そこから発した音は、あの記憶遡行の死(デッドエンド)を超える精神的衝撃を齎した……



続きます

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