Case 59-2-3
2021年3月24日 完成
『ペダル』の構成員としての曲橋と交戦する。
初めの内は手数で翻弄できたが、どれも決定打にならず、やがて……
【7月7日(火)・夜(21:26) 不明・大広間】
「くっ……!」
前方に糸で吊るされた岩が落ちて来る。
続いて後方より同じく■■……即ち質量で攻撃する何かの予兆。
右に避けて、高速で飛んできたもう一つの岩も躱す。
(……ッ!)
岩に初速度変更魔術を掛けて
攻撃に転用しようと思ったが、もう済に使用できる枠が無い。
目の前より■■……即ち、一撃必殺を標榜する相手の攻撃。
バックステップして、儀礼剣の斬撃から逃れる。
「手品はもうお終い?」
閉口するが、相手には筒抜け。
これ以上戦えばこちらの命が保証できない。
「貴方も随分と頑張った
神器解放も無しに私とここまで戦えるなんて」
「……生き残らなければ意味が無いだろ?」
「ええ、全くその通りね」
溜めの動作から、地平線までを断ち切る斬撃の縦波。
完全無欠の曲橋に唯一残された弱点だが、回避が精一杯。
(……次の回復で再使用できる枠は1つ)
異能力者が持つ依代の再生時間は約10分。
凍結と聖痕の2つでは更なる連携も期待できない。
待て。
(アマビエを召喚した時
俺は『篠鶴市』という環境を一時的に無効化できた……)
ならばと、着地と同時に焜炉で傷つけたのは地面。
足元に聖痕の黒い跡が残っていた。
「あら、とうとう気が狂ったのかしら」
と、言われたのでそうしてみる。
まるで駄々をこねるような情けない叫び声をあげて矢鱈滅多に焜炉を振り回す。
そうして『怖がっている』印象を付ける為に一歩ずつ後退する。
「逃げないでください
同じ学園生なので、慈悲は与えたいのです」
糸を躱し、斬撃波をやり過ごし、壁に当たり、ここに背水となる。
冷酷な殺人者の周りを、刺々しくも夥しい黒線が刻まれている。
「そうです、動かないでください……一瞬で終わりますので」
曲橋が儀礼剣を担ぎ、チャージを始める。
この致命的な隙を前に、八朝が拡声器のトリガーを握り込む。
だが、何かに気付いた曲橋がバックステップをする。
それでも可視化した『凍結』たる氷のエフェクトが彼女をすっぽりと包み込んだ。
「くっ……!」
体中を氷に巻き付かれる曲橋。
先程の袈裟斬りと異なり、今回は身動きしただけでも全ての『耐久値』を吹っ飛ばす。
それを察した彼女の視界の中で、予定通り八朝が糸に貫かれていた。
「……ッ!
やはり貴方の攻撃は読めません、褒めてあげます」
「ですがこれで貴方の生殺与奪権を握りました」
操られた焜炉の刃で心臓を一突きにし
後は拡声器のトリガーを握るだけで、不随筋である心臓は千々に裂かれる。
即ち、これも別の形の一撃必殺である。
「では、最後に貴方の『白紙の書』をお見せ下さい」
恐らくは『ペダル』における死刑執行に匹敵する『儀式』なのだろうか。
既に焜炉を手放した右手で、ポケットにあるメモ帳を投げ渡す。
「……分かってはいましたが
ここまでみすぼらしい『白紙の書』は初めてです」
続いて彼女の元に歩かされ、彼女の鞄をまさぐらせる。
手にしたのは金の装飾が施された立派な本であった。
紐解いた中身に見た事のない文字が躍っていた。
「その様子だと本当に『ペダル』のようね
どういうルートを使ったのかは分かりませんが、仕方はありません」
再び距離を離され立たされる。
左手に込められた力がどんどんと強くなる。
『辭の連綿に終止符を』
身体に凄まじい衝撃が入る。
心臓ではなく全身を押さえつける苦痛。
これは依代を砕かれた時の……
「八朝さん!」
もう既に精神力を使い果たし、自立すらままならない。
夢なのかどうか分からないが
地面に叩きつけられるよりも早く鳴下の腕に抱かれる。
寝かされると、地面に継続的な振動。
恐らくこれは三刀坂の闇属性電子魔術だ。
「縺ゅ↑縺溘b縺励°縺励※譖イ讖九■繧?s縺ョ縺雁ァ峨&繧難シ」
「縺ゅi縲∝ヲケ繧堤衍縺」縺ヲ縺?k縺ョ?溘♀荳冶ゥア縺ォ縺ェ縺」縺溘o縺ュ」
全然何を言っているのか分からない。
それでも意識を集中して聞き取ろうとする。
「縺昴l縺ァ縲∬イエ譁ケ縺悟?遞九?蜈ォ譛昴&繧薙r謫阪▲縺溘?縺ァ縺吶o縺ュ?」
「縺昴≧縺?縺ィ險?縺」縺溘i縺ゥ縺?☆繧九s縺ァ縺呻シ」
じりじりと後退する足音が聞こえる。
確かにこの場は逃げた方が良い場面なのだろう、だが……
「騾?£繧峨l繧九→諤昴▲縺ヲ?」
「騾?↓閨槭″縺セ縺吶′縲√≠縺ェ縺溘%縺昴%縺ョ迥カ豕√′隕九∴縺ヲ縺セ縺帙s繧」
「菴輔〒縺吶▲縺ヲ」
何も聞き取れない。
……ああ、聞き取るのがそもそも間違いだ。
今も砕けていない霧の形を見ればいい。
(蠍に庭と水を刻んだ女教皇……)
■■と■■は峻厳の柱の事だろう。
神殿の柱も描かれている女教皇が主であれば尚のことである。
そして蠍。
大アルカナでは『月』、原カナン文字では『猿』、星との対応は『うお座』。
それと左の柱として書かれる『峻厳の柱』と、魚座の元となった二つの河川の左……。
(チグリス川……?)
上手く頭が回ってくれない。
曲橋の言葉と何らかの関連性を見出した気がするが
それを上回るスピードで思考が錆びついていく。
「雋エ譁ケ縺後←縺?>縺?焔谿オ縺ァ豈泌ゥ?&繧薙?逡ー閭ス蜉帙r螂ェ縺」縺溘?縺狗衍繧翫∪縺帙s縺後?∬イエ譁ケ縺ョ蜉帙?縺薙?陦励?蟶梧悍縺ァ縺吮?ヲ窶ヲ縺ァ縺吶°繧会シ」
「縺オ縺悶¢繧九↑?√%縺ョ蜉帙′縺ゥ繧薙□縺題。?縺ォ蝪励l縺ヲ繧九°遏・縺」縺ヲ繧ら┌縺?剿縺ォ?」
「……」
「縺薙?繝壹?繧ク繧堤?エ繧頑昏縺ヲ繧後?縲主ョ梧イサ縲上→蜷後§縺薙→縺瑚オキ縺阪∪縺吶?√b縺?♀蛻?°繧翫〒縺吶??」
「遘√r騾?′縺励※縺上□縺輔>縲∽サ翫%縺ョ迸ャ髢薙?荳榊撫縺ォ縺励※荳翫£縺セ縺吶°繧」
「……」
「繧上°繧翫∪縺励◆」
「魑エ荳具シ?シ」
「縺ァ縺吶′雋エ譁ケ縺ョ蜷榊燕縺ッ繧ゅ≧隕壹∴縺セ縺励◆繧上?よャ。縺ォ縺?i縺」縺励c縺」縺溘→縺阪?隕壽ぁ縺ェ縺輔▲縺ヲ縺上□縺輔>縺セ縺」
そう考えている間にも、どんどんと話が煮詰まっていく。
少しして訪れた静寂により、逃がしてしまったのだと悟る。
「……心配しましたわ!」
鳴下にしては珍しく激情の籠った一言。
だが怒られているというよりかは、本当に言葉通りいっぱいいっぱいの所だったのだろう。
そして背に負ぶわれて、来た道を戻り始める。
「うちに帰しましょう」
そして再び八朝は後遺症を無視して意識を失った。
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Chapter 59-b 使命 - The Order
END
これにてCase59-2、『謎の勢力』回を終了致します
これから彼は一体どうなるのでしょうか?
少なくとも、これまで通り自由には暮らせなくなると思われます
大悪を滅ぼした代償にしては高すぎるような
さて、一体何が悪かったのでしょうか
次回は『窮地』です
といっても①を選択した続きとなります
それでは引き続き楽しんでいただけると幸いです




