Case 06-1:他人の夢に侵入する能力
2019年 6月18日 完成
2020年 5月21日 第一次修正完了
2020年 7月13日 第二次改修完了
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期
割り込み処理を開始
『おん あ び ら うん けん そわか』
認証しました
これより記録の再生を開始します
【日付不明・午前2時30分 西水瀬地区・自宅】
「あんなのイジメなんかじゃねーよ。 甘えんな」
まだ授業中、誰一人教室の外におらず静まり返った階段の踊り場。
誰かからそう吐き捨てられたのは屋上一歩手前の、人気の少ない場所であった。
そう、俺はイジメられているものだと思って居た堪れなくなったのだ。
それで教室から逃げ出すように出て行き、追いかけてきた「親友」にそう諭されたのである。
確かにイジメじゃないのかもしれない。
証拠に俺のいるクラスは他の同学年に比べて際立って仲が良く、イベント事では主導権を握れるほど有能な集まりなのである。
だからこれはイジメじゃない。
イジメが発生すればテレビで散々流されたようにクラスの雰囲気が悪くなってしまう、だから俺はイジメられていないのだ。
「……へへ、そうかな?」
俺は恐らく生まれて初めて心底から笑う事が出来た。
あの苦しかった日々は嘘のように反転し、クラスの皆に認めてもらったかのような感覚を得て顔がほころんだ。
こんなの、PCゲームでチャットしている時には味わえない愉悦に違いない。
「そ……そういうもんだよ。
ほら、皆が待っているぞ」
手を引いてくれる「親友」が、ちょっと見た事の無い様な顔をしてて更に面白い。
今日は多分今までで一番楽しい日になるんだという確信で足が弾んでしまう。
教室のドアを開けると、皆満面の笑みを浮かべている。
確かに「親友」の言った通り俺はクラスの一員として認められているんだと思う。
こんな、こんなまるで人の言う事全てを建前と勝手に断じて嘘つくか騙されるかしかできないような出来損ないの俺を、ちゃんとした人間として認めてくれるなんて……
繧ゅ∴繧薙?縺ゥ縺?∩繧?≧縺翫≧
「はーい、じゃあ授業を再開しまーす」
教壇の上に立った先生がそう宣言する。
教科書を開いて、今日の授業内容を音読し始める。
ふと気になって周りの様子を伺うと、皆楽しそうに授業を受けている事が分かる。
流石A組、優秀な人で一杯なんだろうな、授業すらも娯楽にしてしまうなんて。
そうして先生に当てられた俺はすくっと椅子から立ち、多分生涯最高の活き活きとした声で「親友」と瓜二つと噂される先生からの質問に答えた。
「縺九∴繧薙?縺ゥ縺?♀縺??√↑縺ソ縺阪j縺オ縺ゥ縺?♀縺??√♀縺翫d縺セ縺オ縺ゥ縺?♀縺??√%繧薙′繧峨?縺ゥ縺?♀縺??√″縺。縺倥g縺?∩繧?≧縺オ縺ゥ縺?♀縺??√※繧薙§縺上?縺ゥ縺?♀縺??√※繧薙§縺上&縺九d縺セ縺オ縺ゥ縺?♀縺??ゅ°繧?@縺ォ縺翫%縺ェ縺?◇縲ゅ°繧?@縺ォ縺翫%縺ェ縺?♀繧阪○縺ー縲√?縺薙≧縺ッ縺。縺ー縺ェ縺ォ縺輔°縺吶◇縲ゅ∩縺倥s縺ィ繧??繧後d縲√◎繧上°縲ゅb縺医f縺代?√◆縺医f縺代?√°繧後f縺代?ゅ>縺阪j繧?≧縲√>縺ャ縺後∩縲√&繧九′縺ソ縲√☆縺?°繧薙?√↑縺後↑繧上?√→縺カ縺イ縲√∈繧薙?縲ゅ◎縺ョ縺ソ縺ョ繧?縺ェ繧ゅ→縲√@縺サ縺?&繧薙*繧峨?√∩縺倥s縺ィ縺ソ縺?繧後d縲√◎繧上°縲」
「!?」
ハッとなって目が覚める。周囲を見渡すとあの時の教室ではなく、ちょいとゴミの多い俺の部屋。
バイトを始めて親から自立してようやく構えた俺の城が寝覚めの悪さに比例して余計に薄汚れて見える。
突っ伏した机の上にあるPCには今日もチャットが流れている。
俺が毎日するソーシャルゲームのチャット欄である。
実はこれでも俺はこのゲームの古参プレイヤーなのである。
「ハハッ、来世に乞うご期待っと」
自分の容姿と恋愛遍歴でイジられたのでそうチャットに返す。
その反応は大方の予想通りスラングを用いた爆笑表現から始まり、大喜利大会で安定する。
中には疑ってくるコメントを残す人もいるが、そんなもん実際に見ているわけじゃないから分かる訳が無い。
口が上手い奴だなぁと感心してしまう、口には出さないけど。
これが俺の日常である。毎日良く分からないものを配達させられ、上司から日本語を使えと毎日罵倒され、ヘトヘトになって帰宅し、ゲームをやってチャットを嗜む。
ほんの少し心苦しい事を除けば、俺の理想そのまんまの生活だ。
できるならこんなくだらない日々が続いて欲しいと思う。
電気の無い真っ暗な部屋をPCとエアコンの青白い光が仄暗く照らす。
不気味だけど不気味じゃない、俺の生活を支える2大柱の生きている証である。
ふと、またチャット欄を覗くといつの間にか政治談議に移っている。
この手の話題はギスギスしやすく個人的には嫌なのだが、それを口にすれば更に刺々しい空気になってしまう。
『まぁ、異能力者は見つけ次第殺処分が妥当っスね』
そうチャット欄に残すと、同意のメッセージが1,2個並んで表示される。
苦手な話題だが、相手の真似をすれば表向きの承認を得られる、これだけは素直に快感であると断言できる。
でなければもうこんな話題になんか参加せず、別のに移るまでゲームして暇潰す以外あり得ない。
「ホント、マジでこいつらそう思ってんのかね」
独り言を言いながら、恐らく自分と同じようにチャットしている面子の姿を想像して思案に耽る。
大分危険思想な発言なのだが、それすらも飲み込むここの住人。
相変わらず自分よりすごい奴って一杯いるんだな、と投げやりにそう思いながら狂ったように流れるチャット欄を静かに眺めてスナック菓子を頬張る。
そういや、なんでまたあの時の夢を見てしまったのだろうか……
ちょっと前にチャット欄でイジメられたことを告白してしまったから?
そういう漫画を見てしまったから?
それともイジメを苦に自殺してしまった子の記事を見て義憤に駆られてしまったからなのか?
何にせよ全てが懐かしい。
あの瞬間に俺の心は定まったのだ。
小さい時から会う人会う人全てが怖いって理不尽に感じ続けていた俺の本能に答えが見つかったのだから。
即ち、人間は相手を騙す生き物である。
そしてそんな人間が見せる善意や愛情といった人を慈しむ心は、相手を油断させるための罠である、と。
故に正しい人間ならば、俺の心を全く理解できず、俺の言う事は全く聞こえないものだ、と。
ふと思う、何故そんな結論に至ってしまったのか?
あの夢はどちらかと言えばいい夢であるのに違いない。
あの『親友』が本当の友情がここにあると教えてくれた掛け替えのない思い出のはずだ……どうしてそうなった?
考えれば考える程違和感が出てくる、でも根拠が見つからない。
きっとあの記事から感じた義憤で自分の記憶が歪んだのだと結論を下す。
そうして席を立ちトイレを済ませると、嘘のようにあの不快な感じが消えてなくなっている。
記事どころか単に我慢の毒に影響されたのだと思わず笑ってしまう。
ギシッと横たわった俺の身体を受け止めて、快適な寝心地を提供してくれるベッドの上でまたウトウトとしてしまう。
PC画面を思い出してみると、まだ丑三つ時であることを思い出す。
「まぁ、もう一回寝ればいいか」
ベッドの柵を握りつつ、目を閉じて意識を手放そうとする。エアコンから吐き出される涼しい風でようやく体の力が抜け始める。
願わくば、こんな日常が続きますように。
そう思ったのが最後、俺の意識はまた夢の中に引きずり込まれていった。
5時間振りです、斑々暖炉でございます(遅刻)
もういっちょ発狂回を追加します。
折に触れて変なものが入っても大丈夫なのであれば
ごゆるりとお楽しみいただけるかと……
因みに今回の話、補足しますと
十宮君の異能力、この話以降「人間」には全く効かなくなります
クオリアの崩壊ってつまりそういう事なんです(断定)
2020年7月13日追記
4000文字以内になるよう分割・構成変更しました




