Case 58-5-2
2021年3月18日 完成
前話(Case58-4)にて②を選んだ方はこちらからお読みください
死の瞬間に一大ミームとなった守り神の力を借りる。
『シバタ』の人間が居なくても彼には秘策があった。
【6月25日(水)・夕方(19:20) 抑川地区・太陽喫茶前】
『悪魔よ、悉く消え失せよ!』
その矛先は悪疫ではなく大地。
即ち篠鶴市そのものである。
「何を血迷ったんですかね!」
「そうでもないよ、今に見てると良いわ」
「彼氏さんを擁護したい理由はよぉぉぉぉく分かりますが、残念です」
悪疫の煽り目的のみの指摘であるが的を射ている。
篠鶴市という大きすぎる主語を前に八朝如きが抗えるはずもない。
結果として最初の『属性消去』が進まない。
(クソッ……!
どうすれば……!)
考える、だが結論は一瞬で訪れる。
そう、例えば篠鶴市全体ではなくこの場のみ消し飛ばせば……
「エリス、辰之中の発動を失敗させれるか?」
『えっ!?
や、やってみる!』
そう言ってたった1秒後、不完全な沈降帯のみが浮かんでいる。
ああ、これで上出来である。
『ふうちゃん!』
『しかし、手先に過ぎず……』
詠唱の途中で風景が割れ砕ける。
見えない足場の下に静かな内海のさざなみの音がしている。
「……ッ!」
倒れそうになる錯覚に抗う。
『洲端より、霊神湧き出でる!』
柴田姓の発祥として古語にある『洲端』
即ち英語で言うところのラグーンを上げる者もいる。
であれば、人ではなく『篠鶴市の昔の姿である内海』が呼べばいい事。
この街の運河の多さは、昔が海であった事を如実に語っている。
「全く、どいつもこいつも馬鹿ですね」
悪疫が二人の話を無視して、とうとう攻撃を開始する。
それとは別に砕けた破片の内、残っていたものをかき集まり、カタチを為す。
長髪半魚の疫病除けの女神・アマビエが姿を現す。
予想通り魔力不足でアマビエは微動だにしないが、それでも十分である。
『ッ!!』
彼女たちの一斉攻撃に間に合ったらしく
腸鞭の攻撃を受けても白化が発生していない。
「な……何が起こって!」
激しく狼狽している悪疫に三刀坂と鳴下が攻撃を仕掛ける。
今度は天然ナノマシンの再生が働いていないらしく、
腸鞭に纏わりつく罅の量が加速的に増えていく。
「ま、待て話を……!」
『Libzd!』
『十の幻日よ!』
最後の一撃もクリーンヒットし、腸鞭が砕け散る。
罰則により悪疫がまるで糸が切れたように倒れ込む。
「や……やりましたわ!」
「うん、うん……!」
それまで仲が悪かった二人が、それも忘れて諸手を握って喜びあっている。
八朝も肩の荷が下りたのか溜息を吐く。
ここに悪疫の愚かな野望は打ち砕かれたのであった。
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DATA_ERROR
xxxxxxxx xxx
Chapter 58b-b 月に名を - Amabie
END
これにてCase58……
あれ、2回目?
そう思ったあなたは正しいです
次話であるCase59は『2つ』あります
そういう事で来週の水曜までちょっとお休みさせていただきます
重ねてご迷惑をおかけいたします




