Case 58-5-1
2021年3月18日 完成
前話(Case58-4)にて①を選んだ方はこちらからご覧ください
二人が作り出してくれた短い時間の間に決断する。
目の護符を選択し、継戦能力を上げることにした……
【?匁怦?抵シ墓律?域ーエ?峨?螟 懶シ茨シ托シ呻シ夲シ抵シ撰シ】
「どうして効いてないんだよ!?」
焦った悪疫が腸鞭を振り回し、無暗矢鱈に攻撃する。
前衛の三刀坂が冷静に腸鞭を弾き、致命的な隙に鳴下の烏落としが炸裂する。
如何に超人と雖も、烏落としが引き起こす『魔力弾き』の衝撃力を無視できない。
「くっ……!」
打つ手が無くなった悪疫が再び思考に逃げる。
天然ナノマシンの残量に任せた現実逃避で一発逆転を狙う。
(予想通り単に悪疫に強くなっただけ
『能力無効化』の方になって無いのが救い……!)
周りを見渡し、違和感を探す。
そういえば先程から八朝の姿が見えない……ならば探すのみ。
(ウイルスが単に病に堕とすだけの存在だと思うなよ!)
諸手を地面に付けると、毒沼のような領域が広がっていく。
警戒して三刀坂が距離を取ってくれたが、それ自体が罠である。
鋸刃印の系統樹
彼の体内に巣食う天然ナノマシンの正式名称である。
最大の特徴は『遺伝子の水平伝播』と『密度低下時に発動』の二つ。
即ち、目に見えている毒沼よりもその外側の方が危険なウイルスである。
(だが今回は『進化』を見るのみ!)
自分の体内の動きに集中する。
天然ナノマシンが引き起こす病変の一つ一つが具に周囲の情報を伝える。
『ネヴァ川』
『魔女裁判手引』
『水の試罪』
『ファティマの瞳』
『大旱十星』
『逢蒙殺羿』
『出藍之穢』
『阮籍清談』
『悪魔・運命の輪』
『王の■撃』
(……?)
文字で真意を探ろうとしたのが間違いであった。
それよりも体の変化……いや、突然読むがクローズアップされている理由。
万華鏡の如くありとあらゆる映像が流れ込んで……
(そうか『目」』か
成程……目を潰す方法なら!)
それこそ『天然痘』で構わない。
だが、相手はこの株に対して謎の耐性を持っている。
ならば、穢から取り出した株を使うとする。
元々の感染部分とは違うが、どちらも結膜に炎症を齎す。
『Sudbs!』
固有名を唱えた途端、鳴下と三刀坂が目を擦り始める。
耐えがたい痒みなのか、こちらを上手くとらえていない。
そこに2つの雷が直撃する。
彼女たちが影になっていたせいで気付くことが出来ず、両手を握り込んで確かめる。
(あれ……?
コイツ、麻痺を一瞬で解いたらしい)
こちらに走ってきているが、とんだお笑いである。
まぁ、彼女たちを殺す前に八朝を始末しても問題は無いだろう。
「馬鹿め、お望み殺して……ッ!!」
突如強い光を浴びる。
最後に見たのは青い絵文字を表示させてる端末画面をこちらに向ける光景。
だが次の瞬間、身体の底から沸き上がる炎症に倒れ、藻掻き苦しむ。
「がっ……!?」
「お前が最後まで俺を馬鹿にしてくれて助かった」
「ど……どういう……ッ」
「『目の護符』を調べていたことは既に分かっていた
だが、どうやら邪視の術は防げなかったようだな」
「な、なにを……っ」
「護符による依代強化は単なる餌
俺が企図したのは『ハムサ』の訳である「5」に纏わる神殺し」
「石打……だと!?」
どうやら悪疫はダビデ王の逸話を知っていたらしい。
本来なら目の方がやられるのだが、彼が『最後の天然痘』を選んだのが悪い。
目には目を、歯には歯を
主の崇拝者には主の護符を
もう既に悪疫を巣食う悪疫が
彼の命の灯火を消しつつある……
「……だが、勝ったと思うなよ?」
「諦めろ」
「は、は……はははははははははぐっ……ッ……ェ!」
篠鶴市から非能力者を消せそうとした悪疫が事切れる。
この瞬間に犯罪組織としての十死の諸力は崩壊した。
そして彼女達に巣食っていた目の病気も嘘のように消え去った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
DATA_ERROR
xxxxxxxx xxx
Chapter 58a-b 神殺 - Ayin Ha Ra
END
これにてCase58、『疫病』を終了致します
ついに『十死の諸力』を破り、物語も終盤へ
……メタ的に言えばBルート(第二章)も残り2話なんです
あ、そういえば『何か』を忘れてませんかね?
それだけは気になります
次回は『戒律』
それでは引き続き楽しんでいただけると幸いです




