Case 57-4
2021年3月12日 完成
2021年3月14日 ストーリー変更
危篤に陥った咲良が七殺に救出する少し前。
新生『十死の諸力』の魔の手が太陽喫茶へと伸びていた……。
【同日同時刻付近 太陽喫茶・営業スペース】
「きゃああああ!!!」
「錫沢!?」
突如として太陽喫茶の玄関が轟音と共に吹き飛ばされる。
用事で外に出ようとしていた錫沢がその直撃を受けていた。
現在出払っている七殺、姉のそばにいる千早を除いた
異能力者の全員が音のする方向に構える。
マスターと奥さんを勝手口から逃がすのと同時に、下手人が姿を現す。
「よォ……『七含人』の後輩ちゃん」
「お前生きてたのか?」
「たりめーよ
あんなオバサン如きの攻撃にやられるオレじゃねーよ」
それは『空中交差点』の七含人であり、『異能部』の粳火明楽。
そして謎の赤い妖精に羽交い絞めされた錫沢の姿があった。
初めて会った相手に品定めするような視線と、謎の溜息を零す。
『辰之中も無しに異能力の行使……』
「通報するとこの娘の命が無くなるけど大丈夫かなぁ?」
粳火は嫌がる錫沢の身体に手を這わせる。
そのまま始める気は無いらしく、顔だけこちらに向ける。
「たとえ通報したところで、俺達には大義名分があるからな!」
「……十死の諸力の残党狩りって所だな」
「御名答だよ、流石だねハーレム君!」
エリスの障壁魔術と激しい雷が衝突する。
恐らくは■■の異能力であろうそれが障壁を黒焦げにしていく。
八朝も霧を展開するが今一情報がつかめない。
「エリス、分析は?」
「出来たけど……アレができる能力には思えないよ!」
分析結果には『落雷生成』のみ。
この凄まじい長さの放電を説明できるものじゃない。
障壁魔術の破壊と共に鳴下と三刀坂の攻撃が開始される。
だが全ての攻撃が『赤い妖精』によって阻まれてしまう。
(落雷、赤色、妖精……まさか!)
『■■!』
『Vrzpyq!』
心臓より火雷を抜き出して、■■に放つ。
すると一瞬だけの窒息にも拘らず、全ての『赤い妖精』が消え失せた。
心臓痛と罰則を振り切り、崩れ落ちそうになる錫沢に飛び込む。
異能力の身体強化が粳火の攻撃圏からの離脱に成功させる。
「な……!?」
「別名、レッドスプライト
息を吹く者の亜種であるなら、息を消せば忽ち消える」
意識を失っている錫沢をその場で寝かせ
エリスに安全なところに運ぶよう指示する。
「それが『異世界知識』なんですね……だったら!」
嫌な予感がして火雷から灯杖に切り替える。
街灯の影から迫りくる一閃を灯杖の突きで防御する。
「丸前……ッ!」
「久しぶりだな亡霊!
よりお仲間が増えて、嬉しい限りだ!」
「屠る相手を増やしてくれて感謝感激ィ!!!」
咄嗟にバックステップをする。
その目の前に渦の様な斬撃が走っていた。
「お前……まさか禁戸を殺したのか!?」
「何を言ってるんだ亡霊
そんなことをしなくても継承は『行われた』ではないか!」
自陣営がそうであれば、敵もまた然り。
三刀坂が改造後も使えるなら、彼もまた然り。
「では消え失せろ……『崩点斬』!」
掲げた切っ先の真上に洞の如き黒点。
そこからまるで栓を抜いた水のように万物が吸い込まれていく。
「お、おいおいやりすぎなのでは抗生!?」
「我が宿敵を屠るためには『一撃必殺』のみ
貴様こそ、油断が命取りとなったなァ福神!」
安全圏に運ぼうとするエリスの浮遊魔術と拮抗している錫沢はともかく
味方の筈の粳火まで巻き込んで、超重力の黒点が唸り声をあげている。
カウンターに掴まり九死に一生の粳火を丸前は嘲笑う。
「う……裏切者!」
「裏切ってなどはない
我が神聖なる決闘に貴様が邪魔なだけだ」
「死ね」
福神の指を持ってたナイフで切り裂き、黒点に吸い込ませる。
彼の身体はまるで糸をこよるように細くなっていき、黒点を周回する霧の仲間入りを果たした。
だがそれと共に黒点が烏落としによって破壊され
重力圏から解放された錫沢が鳴下達のいる壁際まで運ばれた。
「さて、始めようか亡霊!!」
まるで小さな子供に引き摺られた人形のような奇妙な動きで
椅子の間を縫い、机を吹き飛ばしながら八朝に奇襲を仕掛ける。
それでも灯杖の『相殺』によって弾き飛ばされる。
「芸がないな貴様も
その力、既に見切ったぞ!」
そういって丸前が刀を地面に突き刺す。
そうはさせまいと鳴下と三刀坂がもう一度攻撃を仕掛ける。
『天動斬!』
高速で回転する渦が、中途で輪に変わり
烏落としと過重弾を巻き込む。
「な……!?」
「貴様の灯杖より着想を得た
この礼は、貴様の粉砕によって代えさせて頂く!!」
「死ね、亡霊!!!」
次でCase57が終了いたします




