Case 55-4
2021年3月1日 完成
2021年3月2日 台詞追加
こんなところまでノコノコとお気楽な奴等ですね
まぁ、よく分からない『あの領域』に押し込むだけで済む話
さて、誰が電脳の王か教えてやるとしますか……
【ERROR 篠鶴機関・端末番号M01-036ET】
普段電脳内は『風雪』による雑音が絶えない世界となっている。
外部回線、バグの原因となるプログラム、経年劣化、人為的な攻撃……
だが『篠鶴機関』の領域ではそれが無い。
DMZにより外部から隔離れる構造、自動的に『部品』を取り換える機構。
そう、ここは電脳内での『楽園』そのものであった。
「エリスさん、もう近いのですよね」
『うん!
どこかにDBと繋がる遷移点があるから』
「にしては、本当に何もありませんわね」
『多分ここはシンクライアントの端末内だね
にしても、彼らネットワーク技術も無いのにここまで……』
現在の篠鶴市の情報技術は八朝の世界に換算して1930年代で止まっている。
だが、シンクライアントは20世紀末の技術であり
篠鶴機関の内外で凄まじい隔絶がある。
(誰がこんなのを『持ち込んだ』の……?)
もう一度イーサネットに戻ってみるも
シンクライアント端末を表す星が無数に存在するだけで状況が変わっていない。
「虱潰しでは駄目ですの?」
『駄目じゃないけど時間が掛かるし、DMZのような罠もあるし……』
「ではやはり『視る』必要がありますわね」
目を閉じて、精神を整える。
戦闘時のとは異なる粒度で、だが露光を長めに取る。
そうして鳴下は脳を鈍麻させながら世界の流れを捉える。
(……エリスさん曰く、流れが一定の星
だとすれば、あの二つの内のどちらかですわね)
一つは定期的に非常に多量の流れが出入りしている。
普通ならここで決定なのだが、エリスの判断を待つことにする。
もう一つは細々だが絶えず一定量が出入りする星。
エリスの注文通りであるが、非常に疑わしい。
それをエリスに話してみる。
『うーん、確かに多い方がそれっぽいけど……』
次の瞬間、黒箱の群れが平穏な彼女らに襲い掛かった。
何とか避けきれたものの、今度はまたも静寂に逆戻りした。
「な……何が起きたのですの?」
『わからない……これ、何もかもが分からない!?』
「そんな……」
エリスですら解析不能な攻撃はその後も何度も続いた。
最初はまたも真後ろからの奇襲、だが鳴下は平然と回避する。
続く奇襲も失敗に終わらせる。
(無駄ですわ
『黒箱』は発動する際に領域確保の為の『処理』も同時に走る)
或いはポインタと呼ばれる便利機能が
逆に鳴下達に味方しているのである。
奇襲、奇襲……奇襲に次ぐ『着地狩り』
自分を狙うと見せかけたエリス狙いも弓矢の一射で消し飛ばす。
「随分と賢いプログラムですわね」
電子の身体では流れない筈の汗を拭う。
少しずつ、相手も動きを学習したのかポインタの動きが様変わりし始める。
領域を確保するだけの『処理』が一定確率で混ざり、鳴下の認識を揺さぶる。
『大丈夫、それなら私にもわかる!』
次の瞬間、ポインタの視認機能に色が追加される。
データ量の多い赤と、その逆の青……これなら惑わされずに済む。
そして唐突に相手の攻撃が止む。
「エリスさん、他に何か……」
『多分これ人が操ってるプログラムだ』
「それは何が違うというのですの?」
『自動と違って線形的な予測が出来ないの
私も同じ理屈でルート構築していると言えばわかるかな?』
即ちエリスの予測が通じない厄介な相手だと分かる。
それでも事前のデータを読んで対策する事には変わらない。
「でも反応はエリスさんたちの方が断然早いんじゃないですの?」
『そうなんだよ、だから意識的遅延がある人力ではやらない
だからなんだけど、もしかして相手は私たちが直接乗り込んできている事に……』
「待って!
貴方の言うポインタの動きが変ですわ……」
報告を受けたエリスがミリ秒で予測を立てる。
それはエリスの仮説を立証させる『非論理的』な攻撃であった。
『……星を狙ってる!?』
急いで星に弓矢で狙いを定める。
急速に広がる『黒箱』の群れの傍らで、エリスの周りにポインタが集中する。
「な……!?」
会話できるほどの猶予は、この二方面攻撃への布石であった。
『目的地』か『頭脳』……どちらかを破壊できれば相手側の任務は達成する。
究極の二択を迫られる鳴下。
『私の事は良いから早く!』
私は……
①エリスの方の『黒箱』を破壊する
②目的地の方の『黒箱』を破壊する
次でCase55が終了します
また、分岐がありますので次回は前書きもチェックして頂けると幸いです




