表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/582

Case 54-3

2021年2月23日 完成


 鳴下(なりもと)が見たのは一番最悪な結末。

 未だに光明が見えない状況を八朝(やとも)と呆然とするのみであった……




【6月25日(水)・深夜(1:30) 太陽喫茶・1F屋内営業スペース】




 既に話し合いも終わり、屋内営業スペースとしての用は終了した。

 各々が割り当てられた部屋に戻っていく一方、鳴下(なりもと)八朝(やとも)だけがその場に残った。


「……まさかここまで酷いですとは」


 八朝(やとも)から聞いた詳細に絶句する鳴下(なりもと)

 確かに元十死の諸力フォーティンフォーセズが居たとはいえ、マスターの決定に抗おうともしない。


 それだけ強いという自負なのだろうか。


「マスターも色々あったとはいえ

 あのまま追い出しても弘治の離脱と復讐は回避できない」


 溜息を吐いて、情報が無い事を嘆く八朝(やとも)

 どちらにせよ十死の諸力フォーティンフォーセズに抗う力が無くなる点で変わらない。


「……そういえば七殺(ザミディムラ)の姿がさっきから見ないのだが?」

「あの方はいつもこんな感じですわ

 時折いなくなると思えば傷だらけで戻ってきて……」


 傷だらけで戻って来るという証言が気になりエリスを起こす。

 念のために彼女のアームを(taw)に分解して何が起こっているのか探ろうとする。


「貴方の異能力……本当に攻撃できない以外万能ですのね」

「2月ぐらいまではそうでもなかった

 思えば俺の『異世界知識(オカルト)』も、その時の事件が最初だった」

「ああ、そういえばそうですわね」


 2月の事件とは辻守(つじもり)から依代(あね)を取り戻したあの一幕である。

 異能力が変化したきっかけは咲良(さくら)から渡された『タロット』である。


 メモに挟んだそのカードを出して眺めると、ふと違和感に気付く。


「どうしたんですの、そんな顔で」

「カードが変わってる……!?」


 見るとあの時渡された女教皇(gaml)から(pit)に変化している。

 それを鳴下(なりもと)に見せても渋い顔をしている。


「どうした、何か変な所でも……」




「貴方……真っ白なカードを見せられても困りますわ」




 八朝(やとも)がハッとしてもう一度カードを見る。

 先程見えていた(pit)すら無くなり、寓画が真っ白になっている。


 急いでメモ帳を探ると、メモ帳まで真っ白になっていた。


「どういう事だコレは!?」


 そんな八朝(やとも)の様子を不安そうに見つめる鳴下(なりもと)

 そこにエリスの不安そうな人声が割り込む。


「ねぇ、この十字どう解釈したらいいの?」


 悩んでも無駄なので、エリスの要件を見る事にする。

 確かに霧の中から無数の十字が現れては消えている。


 他にも歪な8の字と、小文字の『オメガ』も見え隠れしている。


「……寓画由来ではないな

 一応、見覚えがある程度でいえば原カナン文字での署名(taw)だろうな」

「それは何ですの?」

「俺の異能力はカバラの照応であるヘブライ文字(ヘブル)を基盤にしてる

 原カナン文字はヘブルの祖で、照応するのは『基盤(Yesod)』と『王国《Malkuth》』のパス……」


 その瞬間にある事実に思い至る。

 (8の字)審判(オメガ)世界(十字)……いずれも王国(Malkuth)に繋がるパスである。


 王国(Malkuth)の称号は『最悪の母』『死の門』……

 そして、それらを裏付けるように横から見た棚田(nahs)までも現れる。


「何に気付いたのですの?」

七殺(ザミディムラ)の命が危ない……

 場所は恐らく薄暗い地下で、門のある場所」


 必死になって考えてみる。

 傷らだけで帰って来るなら恐らく戦闘した後なのだろう。


 今現在の篠鶴市での化物(ナイト)の分布は榑宮に集中している。

 これは十死の諸力フォーティンフォーセズとの戦いで住民が独断で呼び集めた結果だ。


 即ち、七殺(ザミディムラ)化物(ナイト)戦以外で窮地に陥っている。


「対人戦……?

 誰かを殺しているのか?」

「それはあり得ません

 ほんの少しでも隣で住んでいた私が証明いたします」

「それじゃあ一体……」

「よく考えてください

 今この場には1つの爆弾があります、そして少し前に彼らは解き放たれました」


 そして鳴下(なりした)が席を立ち、走っていく。

 それを追って着いたのは弘治に割り当てられた部屋の前。


 ドアは半開きで、部屋に入ると湿った夜風が入り込んでくる。


「やられましたわ!」


 弘治の姿が無い。

 彼は機関長を追撃しに行ったのは明白であった。


「今から外に出れるか?」

鳴下(なりもと)の裔たるもの、常在戦場を忘れませんわ」


 どうやら八朝(やとも)の方が準備が整っていなかったらしい。

 取り敢えず部屋に戻り、準備を整えてから玄関まで行く。


「先程七殺(ザミディムラ)さんの部屋へ行きましたらこんな……」


 置手紙の内容を見る。

 『さがさないでください、あなたも血まみれになります』


「……言語道断ですわね」

「そうだな、全員引き摺ってでもこっちに連れ帰ってやる」


 拳を合わせて、気合を入れる。

 自分が前線に出る訳にもいかないが、それでもゲン担ぎとして。


「待って!」


 振り向くと、三刀坂(みとさか)がそこに居た……

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ