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Case 51-5

2021年2月10日 完成

2021年2月12日 誤字修正


 足跡の消えた壁は幻影魔術によるものであった。

 その次の日に上記に『有効』な技法を教えてもらった……




【6月22日(日)・晩(21:00) 鳴下地区・鳴下家本家】




 山中の豪邸故に、雑多な生活音などはない。

 そんな耳の痛くなるような静寂と暗闇の中で八朝(やとも)が例の壁の前に立つ。


 そして、目を閉じる。


(やはり見えないか

 ……だが、エリスが導き出した『道』は覚えている)


 この幻影魔術はどうやら『光』を使わぬ者を通してくれるらしい。


 それ故の閉目・電源落とし。

 即ち、八朝(やとも)はエリスのサポート無しで立ち向かう。


(まず一歩

 あの時は直線で行けたが、今回は構造が変わった)


 事前の調査でエリスから構造が変わっていると報告を受けた。

 曰く、正しいルートで進まないと文字通り壁に埋まって身動きが取れなくなるという。


(まずは前、左斜後、前

 そして右斜め後ろ……)


 僅か1時間前ぐらいの事であるが、それでも朧気となる。

 紙すらも使えぬ状況で頼れるのは自分の頭のみ。


 即ち、今まで記憶遡行を成し遂げた自分の力を信じなければならない。


(だが、本当に合っているのか?

 1日でなくそれよりも短いペースで変化しているとしたら……)


 そんな疑問が鎌首をもたげて足を止めさせる。

 だが、ここを超えなければ『食膳攫い』の行方を追う事は永遠にできなくなる。


(……いや、そうじゃない

 今はエリスの出してくれた答え()を信じる)


 更に1歩斜め後方右、前、左斜め後ろ

 最後に大きく前に一歩踏み出す。


 すると夜の冷気を感じた。


『ふうちゃん!』

「ああ、これで奴を追える」


 だが、もう既に足跡は探知範囲外に出て行ってしまう。

 落胆しているエリスに八朝(やとも)がもう一つ畳み掛ける。


「安心しろ、ルートは覚えた」

『でもまた変わるんでしょ?』

「いや、業務として行うなら数パターン程度の筈だ

 しかもその共通点もついさっき見当がついたところだ」


 そう言って八朝(やとも)が昨日の結界の抜け方を披露する。

 恐る恐る歩いている様子で、3回目の踏みで両足が必ず揃ってしまっている。


『どゆこと?』

「これは禹歩……陰陽道で伝わる特殊な歩法だ」


 方術を為すにあたって周囲に星の力を招来する必要がある。

 禹歩、或いは反閇の一歩には北斗九星がそれぞれ対応しているのである。


「先程のパターンは『歩豁落斗法』

 これも禹歩の一種で残り二つも覚えている」

『ってことはもしかして……』

「明日以降はもうちょっと早く追えるかもな」


 もう一度画面と拳を合わせて喜びを分かち合う。

 だが、これで終わっては勿体ないのでもう少し先を調べてみる事にした。




【6月22日(日)・晩(21:20) 鳴下地区・鳴下家本家】




 見取り図:

  ―壁―右L――部屋/部屋――十字――玄関

   十字右:――部屋/部屋――T字(×/W)

   十字左:―×―




「正面玄関があったな」


 それはあの朦朧とした視界の中で見たものと合致している。

 ここから外に出られるのかもしれないが、別に脱出は目的ではない。


 だが、棟梁の部屋の目印の一つである。


『部屋も多かったけど、何だろうね』

「おそらく一つは客間だろうけどな」


 外からの客をフェイク壁の向こう側に通すとは思えない。

 おそらくここにある部屋の大部分は外からの客用に拵えたものなのだろう。


『確か玄関から左に曲がって……』


 廊下を歩いてみると曲がり角の直前に戻される。

 どうやら棟梁の部屋は客から隔離された場所にあるらしい。


『あれ、おかしい……

 ふうちゃん確か棟梁の部屋って一直線に行けたよね?』


 語弊はあるが、ギミックを通ったかという疑問に対してははっきり否定する。

 だが記憶を頼りに進むと元来た道に戻される侵入不可廊下が待ち構えていた。


「記憶と違う……のか?」


 それも気になる点の一つである。

 あの時は男に連れられてすんなりと行けたはずなのに、そのルートが何故か思い出せない。


 一度元来た道に戻って考えを整理する。


「足跡は残ってたか?」

『うん、取り敢えずまた壁の向こうだった』


 またも怪現象が起きている。

 どうやらここの住人は白血球か何からしい。


「次の仕掛けも反閇って訳にもいかなそうだな」

『そうだね』


 今の所罠が仕掛けられている様子はない。

 だが、相手は電子魔術乱舞(グラムストーム)無しで異能力者と正面から戦える鳴下一族。


 何一つとして油断が許されない相手であった。


「まぁ、帰りに(taw)を放ってみようか

 凶はもう遅いし、次の足跡に期待……」


 そんな八朝(やとも)達に近づく足跡が一つ。

 思わず空室に身を隠し、人影をやり過ごす。


『危なかったね』

「そうだな、今日の所はこれで……」




「ふうちゃん……なの……?」




 暗い部屋の中で懐かしい声を聴いた。

 天ヶ井柚月(あまがいゆづき)の縋る視線が八朝(やとも)へと注がれた。

これにてCase51、『試行錯誤』の回を終了します


何か不便そうな邸宅ですね

広いのもあるし、ギミック付きの廊下がそこかしこに……


滅茶苦茶掃除が大変そう


さて、鳴下雅の情報を持っているであろう『食膳消し』にリーチです

壁は反閇で超えられると分かった今なら、じきに到達できるでしょう


次回は『応用』

それでは今後も読んで頂けたら幸いです

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