Case 50-1:流れを操る能力
2021年2月1日 完成
市新野がその本性を明かす。
命からがら鳴下と千早と共に異能部部室から逃げ出す。
【6月15日(月)・早朝(5:07) 篠鶴学園・某所】
必死に元の学園へと逃げる八朝達。
その後方で幾度も爆発が発生している。
(クソッ……追手か!
このまま逃げても埒が明かないし、どうする……!)
学園の混乱に巻き込まれず、更に市新野を振り切る策。
そんな都合のいいものが簡単に転がり込むはずは無い。
……だが、何かに気付いた。
「エリス、この通路と地下迷宮は繋がってるか?」
『ちょっと待って!
……うん、繋がってる!』
「何をするんですの?」
遠慮がちに聞いてくる鳴下。
その距離感に踏み込むことなく、続きを話す。
「ああ、化物に化物をぶつけるだけの話だ」
遂に直後で爆発が起きる。
万事休すと後ろを振り向いた鳴下に、驚きの光景が飛び込んでくる。
「……ッ!
え……沓田さん!?」
鳴下の指摘で、漸く人影の正体に至る。
油断したのか、沓田が何度も血を伴って咳き込む。
「だ、大丈夫……」
「近寄るな
……だろ、八朝」
無言で肯定を帰す。
寄生虫病に感染力は無いが、市新野の傾向を考えるとこれだけでは済まない筈。
咳から回復した沓田がこちらに強く笑いかける。
「何だお前、やっぱ嘘ついてんじゃねーか」
「……」
「ま、お前は一生気付かんと思ったけどな
……さっきはああ言って悪かったな」
沓田の謝罪に反論しようとして、再び咳き込み始めてしまう。
「おい、これ以上話すな
アンタだけでも地上に戻れば……」
「何だ、今度は俺を馬鹿にしてんのか?
この程度で異能力者が倒れるものかよ!」
確かに異能力者はある程度の怪我も自然治癒力強化で治る。
だが、市新野の異能力はそれをカットして絶命に至らしめている。
今笑っている沓田は既に手遅れである。
「そうか、死なぬとは良い事を聞いた」
その瞬間に危機を感じ、エリスに指示を飛ばす。
初速度変更で散開し、殺到した炎を躱す。
「……ッ!」
だが、この炎は光を浴びただけでも皮膚を爛れさせた。
「誰だ!」
「そうか、俺の名前が伝わってない奴もいたか
つくづく俺の不甲斐なさを呪ってしまうものだよ」
通路奥から大柄の男が現れる。
巨大な絵画ナイフを肩に掛け、周囲の風景から色が失われている。
そして傍らに翼の無い小さな竜が唸っている。
「異能部部長……!」
「ああ、だが今は違う
俺の真名は習坎……十死の諸力の第一席を拝命する者だ」
もう大して驚くことは無い。
異能部と十死の諸力が繋がっている事は直観的に分かっていた。
「異能部で十死の諸力だと?
お前、それでよく異能部の部長なんかやってんな、普通恥ずかしくてできんだろ!?」
「何を言っているんだお前は
最初から異能部は十死の諸力の間諜であったぞ」
さらりと異能部と十死の諸力の関係性を明かす。
こうやって自分たちに洗いざらい吐いているのは彼なりの自信の表れなのだろう。
この場で全員殺せば、漏れる事は無い。
「だけじゃねぇぞ八朝!!!」
死角からの攻撃に、思わず灯杖で対抗する。
たった一撃で破壊されるも、離脱してくれたお陰で九死に一生を得る。
下手人の正体は丸前であった
「待ってたぞこの時を!!
……何だ、違う女じゃねーか! まあいい……」
「お前もまとめてぶち殺してやる!!!」
丸前が剣を掲げ、切っ先から黒い球体を生じる。
あれは『巻き戻す前』の隠れ家で放った無限大重力天体。
だが、アレの無力化方法は知っている。
『■■!』
八朝がカオスの霧を呼び出して、ブラックホールを対消滅させる。
未だに莫大なエネルギーが解放されない理由は分からないが、これぐらいしか手段しかない。
「俺を忘れては困る」
いつの間にか異能部部長が目の前に現れる。
そしてその真上から先程の炎を吐いた竜が口を開けて光を集めている。
『竜息の火炎』
『Wytglc!!』
サラマンダーからの火炎が沓田の爆発に衝突する。
目を開けると全方向の壁に炎が広がっている。
いつの間にか距離を離した部長が舞うように周囲の色を削り取っていく。
「第五席の命により、お前達は通さない」
DappleKilnでございます
いつもお読みいただき誠にありがとうございます
今更驚く事ではないでしょう、結構フラグ撒いてたし
それに沓田もそろそろ命が危ういです
さて、主人公たちは万難を排して
目的地の『■■■■』までたどり着けるでしょうか?
それでは引き続きどうぞ




