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Case 49-4

2021年1月30日 完成


 『一つ考えがあるんだ』

 『信じてくれなくても構わない

  だが、もしも(taw)の表面に『鎖』や『ノズル』が現れた時は』


 『全力で疑ってくれ』




【6月15日(月)・早朝(4:51) 篠鶴学園・異能部部室】




 異能部のドアを開ける。


 内部の様子は『巻き戻す前』と殆ど変わっていない。

 部屋中央に魔力で磔にされた千早(ちはや)とそれに群がる謎の男たちを除けば……


八朝(やとも)!」

『目と耳を塞げ……■■(sad)!』


 室内に八朝(やとも)の花火弾が炸裂する。

 光を浴びた正面の男たちは忽ち『気絶』によって崩れ落ちる。


八朝(やとも)さん!?」


 市新野(いちしの)の声に一瞬だけ身体が硬直する。

 柱の影から現れても、警戒心は拭いきれない。


「独断だが援軍に来た」

「それは助かります!

 いやぁ、流石にこの状況は想定外ですので」


 市新野(いちしの)の指差した先、部屋の奥の数か所の隠し扉。

 そこから夥しい数の篠鶴機関職員がのそのそと出て来る。


 全員が焦点を合わさず、呻き声しか上げていない。


「な……何だよこれ!」

「恐らく操られているんです

 侵入者を殺す以外の思考が消された状態で……」


 ふらふらであるが、構えた小銃の射線は何故かブレていない。


「みんな物陰に隠れろ!!」


 八朝(やとも)の怒号に気付いて各々が物陰に潜む。


 そこに銃弾の雨が降り注ぐ。

 これ全て『死体漁り(コープスピッカー)』なら、あの場面で間違いなく全滅していた。


「近づこうとすると銃撃にされされてしまうし

 電子魔術(グラム)に至ってはこんな感じで……」


 市新野(いちしの)電子魔術(グラム)を投げてみる。

 最前列のが印形を組んで魔術を雲散霧消、その1秒後に再び銃弾の嵐。


 どうやら市新野(いちしの)も苦労をしているらしい。


「俺が最前列の奴をどうにかしてみる

 ……少々試したい事があってな、その実験体にする」


 簡単に概要を説明すると、即納得してくれた。

 という事で残り3枠を全て■■(samek)に回した。


 そして生成位置を変え、多方向から仕掛けれるよう調整を行う。


(妙だな……

 密教系であれば魔の気配とやらで勘付く筈……)


 この直前の思考で一部のプランを変更する。

 そして喉に魔力を込めて叫ぶ。


『Ghmkv!』


 幻影(samek)達が3方向から印形の男を襲う。

 男も瞬時に幻影(samek)達の本性を暴き、別の印を組もうとする。


『我等の(path)■■(samek)に非ず

 その本性を霧中より晒せ■■(sad)■■(digg)■■(taw)!』


 瞬間に幻影(samek)がそのカタチを変じる。

 真正面からは『気絶』の花火(sad)……だがこれは消し飛ばされてしまう。


 だが本命は飛び上がった■■(digg)の方である。

 落下速度は組み替える早さを超え、男の肩口から斜めに刺し貫く。


 そこに■■(taw)の霧が現れ、('yn)やら霧吹き(yad)のカタチを表面に生じる。


「今だ!!」


 霧による視界不良で射線は幸運にも全員を外し続ける。

 そこに皆の総力が押し込められる。


『Roonjmd!』


 雷を纏った魔法剣の一撃が全員を強かに打ち据える。

 この轟音で千早(ちはや)が目を覚ます。


「だ、駄目!

 そこには……」


『十の幻日よ!』


 更に鳴下(なりもと)による魔力消去で職員たちの身体を崩壊させる。

 ついでに千早(ちはや)の拘束も消し飛ばされ、地面にへたり込む。


『Wytglc!』


 沓田(くつだ)の渾身の力を込めた爆炎(ギフト)


 


 その狙いは市新野(いちしの)であった。




「……ッ!

 いきなり何をするんですか!」


 市新野(いちしの)が転がり倒れた体を起こして抗議する。

 確かに一見すれば沓田(くつだ)の乱心であった。


 だが、今は違う

 ……少なくとも『悪魔('yn)』と空の軍勢アエリアエ・ポテスタテスと対応する『隠者(yad)』が出てしまった今は。


「ああ、俺も最後まで信じたくは無かったが

 この気持ち悪い職員も、生徒の妙に深い眠りも、天然痘もお前の仕業だったんだな」

「そ、そんなわけありませんよ!

 何ですかその酷い濡れ衣は!!」


「じゃあ聞きますが

 どうして貴方だけここにいるんですの?」


 即ち、昨日の決行会で言った『多目的室』が嘘だったことを表す。

 そしてその多目的室の惨状の一部始終を鳴下(なりした)はこの目で見ていた。


 もう既に市新野(いちしの)は信じられていなかった。


「そ……それは……」


 しどろもどろになる市新野(いちしの)

 だが、それにしては彼から依然と妙にざわつく気配を感じる。


(待て……

 市新野(いちしの)が最初から裏切っていたとすれば……)


 その八朝(やとも)の思考を読んだかどうかは伺い知れぬが

 同時に市新野(いちしの)の口元が三日月状に『歪んだ』。




「決行式の時から君たちの死が決まっていたからさ」




 パチンと軽やかな音がする。

 それと共に湿った異音が2方向から聞こえてくる。


「あれ、おっかしーな?

 なんで鳴下(なりもと)さんも死んでないの?」


 恐る恐る仲間たちの方を向く。


「な……!?」


 沓田(くつだ)鹿室(かむろ)が血だまりの中で倒れている。

 全身に夥しい発疹……いや、動くミミズ腫れが見えている。


 恐らく、これは幼虫移行症による食道静脈裂傷……




「いやぁ、本当に彼らを連れてきてくれてありがとう!!!

 まぁ……本音では道中でキミが死んで満身創痍になってくれた方が有難かったけどね」


次でCase49が終了します

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