表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/582

Case 48-5

2021年1月26日 完成


 市新野(いちしの)に再会し、『逃亡軍同盟』に誘われる。

 だが、ここでも八朝(やとも)はあまり歓迎されていなかった………




【6月15日(月)・夜(2:30) 地下迷宮(アトラスの塔)・第五層大広間】




「そういえば三刀坂(みとさか)七殺(ザミディムラ)は?」

「ああ、すみません

 彼女たちはどうしても時間の都合が……」


 そういえば今は十死の諸力フォーティンフォーセズとの抗争中だという事を忘れていた。

 恐らく彼女らは前線に行ってしまっているのだろう。


 一言礼を言って離れる。


「お前、ちょっといいか?」

「構わんが?」


 沓田(くつだ)に連れられて、奥の通路に行く。

 あの時の崩落の影響で辰之中が消え去っているが、その先が繋がらなくなっている。


「お前の噂は何回か聞いたぞ」

「……」

「最近まで頑張っていたのがどうして……」


  ①殺す

 →②殺さない


「ん、ちょっと光を貸してくれ」

「エリス」

『はいはーい!』


 照らされた八朝(やとも)の姿を見て沓田(くつだ)が絶句する。


「何だ……何かあるのか」

『ふうちゃん……これ見て』


 エリスのカメラ機能で自分の姿を見る。


 顔は黒く腫れ上がり、歯も欠損し、血がこびり付いたまま

 そして全身には痛々しい壊死の痕がびっしりと……


「これ、本当なのか?」

『うん……』


 思い返すと、あの訓練の間で一度も異能力は使わなかった。

 単に罰則(ペイン)以下の苦痛だと無視した末路が、この悍ましい姿であった。


 だがこれも明日には完全治癒しているのだろう。

 いつも通り、気にする必要は無い。


市新野(いちしの)がお前を連れて来た理由が分かったぜ」

「……」

「都合良い事言ってしまうが

 友達(ダチ)としてお前に言う……二度と戦場に立つな」

「……そういう訳にはいかない」


 沓田(くつだ)の反応の意味が分からない。

 なので、取り敢えず主張を続ける事にする。


「取り敢えず、ここには殺すべき奴が多い事が分かった

 誰もあれらに抵抗しないのであれば、俺が教官達を破壊するしかない」

「お前……何言ってんだ……?」

「よく考えてみろ、殺せば悲劇も止まる(・・・・・・・・・)

 そう……殺せば止まるんだから、全ての問題は鏖殺で解決できる筈だ」

八朝(やとも)!!!」


 思いっきり肩を叩かれる。

 ……コレも、どうしよっか?


「何にせよ、それを達成するには是が非でも戦わないといけない」

「……」


 多分、悲しそうな視線。

 でも憐れまれる理由が浮かばない。


「少なくとも5月の頃のお前は、悔しいが凄い奴だったよ

 でも今のお前はここの誰よりも十死の諸力(テロリスト)っぽいんだよ」

「……」

「これが終わったら『月の館』に連れて行ってやる

 神隠し症候群については俺が治すなって説得してやるから……」


「ああ、それは助かるな」


 最後まで沓田(くつだ)の表情が分からなかった。

 エリスも何故か一言も発しなくなってしまった。


 通路の先にまた懐かしい人影を見つける。


鳴下(なりもと)、久しいな」

「……ッ!?」


 挨拶した筈なのに鳴下(なりもと)に逃げられる。

 ああ、そういえば身体がまだこんな状態だっけか……忘れてた。


「おい、お前」

「何だ?」


 →①殺す

  ②殺さない


何だその武器は(おいちょっと待て)

 まだ教育がなっ(もう仲間だろ?)てないらしいな(頼むから助……)?」




 ……。


 …………。


 ………………。




「皆さんお集り下さりありがとうございます

 さて、作戦決行まで数時間を切りましたが問題は山積です」


  ①殺す

 →②殺さない


「まず、あちらに『太陽』がある限り僕たちに勝機はありません

 この地下迷宮を使い、最短経路かつ裏から奇襲しこれを奪還致します」


「次に教官たちの『死体漁り(コープスピッカー)』ですが

 私が開発した電子魔術(グラム)で防げます、是非とも共有してください」


 隣の人から資料を貰う。

 特に必要ないし、何故だか嫌な予感がするので斜め読みだけしておく。


「最後にこの作戦は『同士討ち』が起きないよう計画を進めています

 万が一にでも生じたときは、無理せず退却し僕に一報入れてください」


「それでは作戦の成功を祈願して、乾杯!」


 空々しい音が鳴る。

 飲むと喉が痛くてしょうがないので乾杯だけして後は遠慮する。




 大広間の宴会から離れ

 第五層の迷宮の出口に出ると音一つすらしなくなる。


 全てが懐かしい……あの時は確か必死で……

 必死で、一体何をしようとしてたんだろうか……?


『ふうちゃん』

「何だ?」

『ホントに大丈夫なの?』

「何言ってんだ

 この傷も明日には消えるし、体調も万全だ」


「さっさと

 鮃ケ迢励Ω蟲カの連中の臓物を撒き散らして……」


 端末の身体がこつりと額に当たる。

 凄く小さな声で、涙をすする声が聞こえてくる……


 ①■■

 ②■■■■


『……何があっても、ふうちゃんを守るから』

「それはこっちの台詞だ」


 何故か、自分の声に一切の抑揚が無かったような気がする。

 それもこれもあの作戦で教官共を血祭りにすれば解決してくれるだろう。


 自然と笑みがこぼれていった……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 DATA_ERROR


 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED

 NOT_ACCEPTED




xxxxxxxx xxx

  Chapter 48-b   宿業 - Defeat of Intellect




END

これにてCase48、『地獄の蓋』の回を終了いたします


これ、本当に大丈夫なんでしょうか……?

普段なら間違いなくDEADENDルート行きの状態なのに……


しかし、本当に誰かが『開けて』しまったんでしょう

いつか来る『記憶の災い』がほんの少し短くなっただけなのです。


次回は『闇』

それでは、引き続き楽しんで頂けたら幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ