Case 48-3-2
2021年1月24日 完成
結局この場では八朝はこれ以上何も出来なかった。
そして学園に急造したであろう営倉に押し込められる。
【6月13日(土)・朝(5:55) 篠鶴学園・臨時営倉】
「よお、お前も初めてか?」
牢屋に押し込められていたうちの一人が声を掛けて来る。
その手には能力封印の手錠……最早見張りすら要らないらしい。
「初めても何も、何なんだここは?」
「お前……あの『訓練』も知らないのかよ
……ってお前『名誉卒業』の八朝風太じゃねーか!」
そう言って、声だけ弾ませて歓迎してくれる。
それ以外は言うまでもないだろう。
因みに仲間達とはエリスに至るまで全てバラバラにされている。
「ようこそ、『前線』へ
特にお前は歓迎してやるよ」
「そりゃどうも」
「……」
途端に機嫌を悪くする男。
いきなり手錠で頭を殴られる。
「……ッ!
いきなり何を……」
「お前こそ生意気な口をききやがって!
ここは軍隊だ『ですますございます』だろ!!」
何度も殴られて血までも零しているのが見える。
だが、あの罰則に比べれば屁でもない。
「いきなり殴る……奴に……丁寧もクソも……無いだろ!」
「これだから温室育ちはオツムがお子ちゃまのままで困るよなぁ!」
あの時の『男』のように『教育』と言いながら拳を振り下ろしてくる。
やがて殴るパターンまで覚えてしまう。
その隙を突いて、手錠で男の鼻をへし折り、そのまま片目を削る。
「……ッ!」
「お前こそ世間知らずも甚だしい
この程度の暴力で俺を折ろうだなんて片腹痛い」
男の代わりに八朝が立ち、全員を睨む。
それに呼応したのか全員が立ち上がる。
後は一方的な暴力であった。
言うまでも無く、人数の暴力で八朝が抵抗できない状態に陥る。
そこに耳障りなチャイムと罵声が割り込んできた。
「貴様等何をしている!!」
更に皆伝火属性電子魔術の爆炎が全てを吹き飛ばした。
衝撃で手錠が外れた事で異能力の自然回復が発動した。
「……クソが!
初日からやってくれたなSln.117287!」
更に複数回の『電子魔術』を受ける。
それでも意識を手放せず、朦朧となりながら看守らしき人物を睨む。
「貴様が運べ」
「断……」
「貴様が運べ」
「調子に……」
「運べと言っているだろうが!!」
結局無限ループになるらしいので了承することにする。
指定された場所……即ちグラウンドに伸びた皆を運ぶたびに教官に顔面を殴られた。
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「貴様のせいで全員が走っているぞ?」
「だから?」
「お前は謝罪という物すら無いのか?」
「少なくともアンタには無……」
再び『電子魔術』を食らう。
一瞬だけ、走っている人間が怯えた視線を投げかけた気がした。
「よーく分かったよ
貴様は的が相応しいらしいなこの十死の諸力が!」
再び顔面を殴られる。
そして教官が笛音一つで全員を集める。
「今日の訓練は実戦演習だ
絶え間なく能力を使用し、コイツに当て続けろ」
その言葉に全員がざわざわし始める。
だが再びヒステリックな笛音が全てを吹き飛ばす。
「1度も当てられなかった奴は徹夜で走り続けろ、これは命令だ!」
「十死の諸力に死を!」
教官の、初めて人間らしい埃ある言葉に全員が続く。
『十死の諸力に死を!』
『十死の諸力に死を!』
『十死の諸力に死を!』
「状況始め!」
続きます




