Case 04-5
2019年6月9日 完成
2019年6月18日 第一次修正
2020年4月24日 本筋との関係性が薄い為、削除予定
2020年7月13日 Case 04分割に伴い「断章1」を削除、Case 04-4に置換
2020年8月7日 異能力情報を更新
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期
この時間の駅は会社帰りよりも買い物帰りや帰宅部の客でごった返す。
この駅の北出口から広がる抑川旧市街は全国的にも有名な観光地である。
先程八朝と別れた鹿室は、寄る人波に従いながら電車へと乗り込んでいく。
【4月21日・15時55分 抑川駅・西改札口】
(しかし……『カマイタチ』ですか……。
これまた厄介なものに絡まれる運命なのですね、八朝は)
あの後、町を切り裂くあの人型の化物を『カマイタチ』と仮に呼称するように決めた。
八朝はこれ以外にもう一体別の人型の化物と戦ったことがあるらしく、聞いた時には驚愕を通り越して戦慄する程だった。
なので、アレに会ったら四の五も言わずに連絡しろと八朝に自分の連絡先を押し付けてきた。
これで八朝については一安心となった。
(でもこれさえあれば、ありとあらゆる異能力者から魔王の呪いを引き剥がすことが出来るだろう)
ポケットの中で黒い石らしきものを『Roonjmd』と唱えて握りしめると、先ほど手渡した暗赤色の石に変じた。
協力者より教わった作成法を改良し、異能力という才能を切り売りさせることで万能性と本命の弱体化を同時に為す。
これが伝令の石の正体である。
この石の異能力削減魔法を磨き上げればいずれ、一切の後遺症を残さない異能力の完治手段になるだろう。
(それにしても『異能力』ですか……
ここでも『イザナミ教』のような害悪が蔓延しているとは……)
それは鹿室の転生前の世界で日本中に蔓延していた邪宗の名前である。
大地は常に血に飢え、豊穣を常とするためには悪しき者をできるだけたくさん殺して生贄とすべき、というものである。
この邪宗の広がりは政権中枢まで及び、やがて鹿室の住む■■■が全て『浄化対象』に指定された。
それをされる前に首相の元へ忍び寄ると相打ちにてこれを殺傷せしめた。
これが鹿室の元世界の人生であった。
(あの声の主殿は必ず魔王が居ると言った。
そして僕もこの目で魔王を見た)
この決意と実行力を買われ鹿室も魔王殺しの転生者として第二の生を受けた。
高空から落ちて来た際に、辰之中の中心で影の触手で人影を捕らえ、真っ黒に汚染しているある存在を見かけた。
それが魔王である。
そしてこの汚染こそ異能力であり、魔王の呪いそのものである。
この地に降り立って数か月が経つ。
相変わらず非能力者は電子魔術乱舞を盾にした横暴を為し、異能力者は化物と後遺症の板挟みとなる窮地に陥ったままである。
(電子魔術乱舞はいずれ正すとしよう。
まずは後遺症の除去、その為にリシオンのレシピを貰ったからね……)
あの時の様子を思い出す。
ガラス瓶を貫通して赤い水が辰之中に染み出している様子は、死者のそれと見まがうレベルである。
思い出すだけでも身震いする。
満員電車の中で多少そんなことがあっても相手は何も思わない、鹿室この空間は割と思索に最適なものと思っている。
(それに鱗を手に入れるには、八朝君がちょっと邪魔だしね)
あの「危険だ」という言葉に秘められた思いを反芻する。
本音ではないものの口にすれば八朝の制御が更に不安定となる。
視線を上げて、ふと視界に入ったある車内広告を見つめる。
『異能力症候群患者の集う悪魔の町・篠鶴市の謎を解き明かす』
そう、魔王の配下とは悪魔なのである。
(ああ、僕が救い出してみせる……その為にも……)
魔王が化物であるなら、そいつが落とすアルキオネの鱗はもしかしなくても全ての異能力者を救済し得るアイテムとなり得る。
その為にも素材を集め、魔法を合成し、化物を倒し続ける。
しかしその為には力が足りない、上から2番目のO級でも足りない。ならば……
(前人未到の1/1級になってみせる!)
ある意味主人公よりも主人公らしく、熱い想いをもう一度灯すのである。
目を閉じて大切な人を思い起こす。
この世界の家族、学校の親友、八朝……数えるのが馬鹿らしくなるぐらいに多くの人が瞼裏に映る。
その顔が悉くのっぺらぼうである事を除いては……
【TIMESTAMP_ERROR ???・辰之中】
「どうしてアイツが……!」
仄暗い、下水道で隠者の如き少女が逃げ惑う。
もう後ろには何も追ってきていないのにも拘らず、それでも足を止めようとしない。
折角ここまで来れたのに!
8回の失敗を超えて予言された運命の世界に……!
(本当に忌々しい!)
少女は二つの悩みを抱えていた。
一つは『ある青年』の敵に回ってしまった事。
あの8回のうち実に7回もそれが原因で失敗している。
それを引き起こしたのはあの■■■である。
(今すぐ殺したい……!
でもアイツが死ぬと■■を殺せない!)
それがもう一つの悩みの種である。
8回転生して、その全てで先に■■■を殺してしまった事で、■■に勝てなくなった過去に歯噛みする。
忌々しい■■!
私の相手を泥棒のように奪っていく卑しい■■!
(それでも諦めない!)
少女はもう一度目深いにフードを被り直す。
嫌いな■■と同じ金髪を覆い隠すように、瓜二つの■■でなく自分に振り向いてくれる展開を夢想する。
その為にも、この少女には……
死んでもらう必要がある。
でも今はその時じゃない。
もう少し土台を築いてから、皆が認知できない程ゆっくりと自分を溶け込ませる必要がある。
そしてその為の踏み台だってある。
異能力者を抱える事で更に厳しくなった戸籍制度。
その裏をかいくぐるようにある組織が存在する。
それは非能力者の暴政から徹底抗戦を宣言して、異能力者による異能力者の為の千年帝国を築くことを目的とする組織。
十死の諸力
そして自分の名前、FFにて欠番となっている末席の名前を、扉を守る門番に伝える。
そうすれば今回も自分はこの組織に所属「している事」になるのである。
「十死の諸力・十三席……七殺のザミディムラが只今戻りました」
恭しく一礼する少女を裏の組織が暖かく出迎える。
扉が閉まる直前、もう少し明るい下水道共用区画の光を睨みながら、一つ、蚊の鳴くような声で宣言する。
「待っててね、ふーちゃん」
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使用者:鹿室正一郎
誕生日:7月21日
固有名 :Roonjmd
制御番号:Nom.183439
種別 :O・IGNIS
STR:3 MGI:5 DEX:3
BRK:5 CON:1 LUK:5
依代 :杖
能力 :魔法生成
後遺症 :不明
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■■■■■■■ 04■■ 分岐 - Point of IF
END
約1時間(3か月弱)振りとなります、斑々暖炉でございます
今回の話は鹿室に焦点を当てたお話になります
本来ならばCase 14ぐらいで退場予定でしたが、プロット変更によりそうならなくなりました
主人公との立場の違いが今後どのように響くでしょうかね




