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Case 47-4

2021年1月20日 完成


 大広間で再び偽仲間達(ナイト)に襲われる。

 七殺(ザミディムラ)の協力で通路奥まで逃げ切り、鳴下(なりもと)と合流する……




【6月12日(金)・夜(22:39) 地下迷宮・第五層大広間】




「これで、最後だな」


 よろよろと八朝(やとも)罰則(ペイン)の苦痛を堪えて起き上がる。


 通路を奔走すること半刻程度。

 エリアが広くなかったお陰で早めに全員救出できた。


 その際に枠を大半消費てしまい

 同時に2つしか出せなくなってしまっている。


 そして、事態が更に深刻な事も明らかとなった。


「もう1日も潜っているだと……!?」


 それは昨日の出来事と矛盾しているだけではない。

 辰之中の限界潜行時間の8時間をとうの昔に越してしまっている。


 だが鳴下(なりもと)達に化物化(メローペライズ)の兆候が見当たらない。


「あそこ、見える?」


 三刀坂(みとさか)の指し示した先に青の濃いエリアがあった。


 間違いなく沈降帯(アンカー)の境界である。

 溶岩さえなければ、安全地帯として使えたであろう。


「最初の内はあそこの先に逃げてたの

 でも今日の15時ぐらいかな……溶岩に塞がれちゃって」

「待て、そもそもその時間は太陽喫茶にいただろ?」


「え、そんなの知らないけど」


 八朝(やとも)が頭を抱えそうになる。

 だが、この『第五層』が偽物作成の力を持っているなら、確かに可能ではある。


「残り20分……」


 全員が押し黙る。

 八朝(やとも)の想定よりも早く、彼らを日常に帰せなくなったこの事態に。


 誰も、解決策が思いつかない。


「……にしても、本があるんだな」


 八朝(やとも)が通路の壁にある本の背表紙に触れる。

 手を取ってみると長い間ケアされてないのか埃やら塵が舞い上がる。


「ありますけど、中身真っ白でしてよ」

「真っ白……」


 八朝(やとも)が急いで本を開く。


「な、何をしているのですの!?」

「弘治の家にこれに似たような本を見かけた

 因みにその本は弘治と俺なら読めるらしい」


 そう言ってページの内容を隅々まで読み進める。


 所々紙魚に食われて不明瞭な部分があったが

 『異能力学集成』の『報告書』であった。


 周囲を見ると奇異な視線。

 漸く、自分が白紙のページを読み進める異常者のように見えていると気づく。


■■(taw)


 八朝(やとも)(taw)を呼び出す。

 やがて近くにいた鳴下(なりもと)がその真意に気付く。


「篠鶴機関特殊生物研究所……俗称『アトラスの塔』!?」


 皆が(taw)の中に駆け寄って本の中身を検める。

 文字が光って読める……鳴下(なりもと)が続けて読む。


「『第五層』『実験体A脱走』……

 『辰之中の根幹に関わる』『射殺命令』」


「『偽物作成能力』」


 それは『第五層』の化物(ナイト)能力(ギフト)と合致する。


「熱を発生させるので常に冷却水が必要

 幸いにも『エリア限定』の能力であり、捕獲できれば最小限に抑えれる」


 最後のページに『健闘を祈る』と一文があり

 150ページ程度がくり抜かれた中に銃弾が一つあった。


「これは……何ですの?」

死体漁り(コープスピッカー)だな」

「撃たれた相手の身体の中で魔力を吸い尽くし

 再使用できる篠鶴機関職員用の対異能力者装備ですね」


 鹿室(かむろ)の付け加えに全員が息を呑む。

 その中の大半は『巻き戻す前』の暴動で嫌という程見かけたのである。


「確かにこれなら『第五層』も倒せそうなのですが……」


 鳴下(なりした)が周囲を見渡す。

 やはりここには何もない。


「いや、見つけた」

『えっ!?』


 八朝(やとも)の物言いにエリスが驚く。

 やがて、(taw)の一部が『サソリ』に変じている事に気付く。


 サソリが少し進むも、直ぐに霧散してしまう。


「あの溶岩の方向らしい……

 だが少し待ってくれ、相談がある」


 八朝(やとも)が全員にある事を伝える。


 それは敵ならば利用するであろう『七不思議』と、それを勘案した作戦。


 今の今まで『捨て置かれた』理由を含め端的に話す。


「できますの……?」

「やるしか無いだろ、それに千早(ちはや)も頼むぞ」

「う……うん!

 やったことないけど、でも……!」


「気にするな

 寧ろ大雑把に作ってくれた方が有難い」


 その言葉に全員が驚く。


 そのやり方だと意味が無い。

 だが千早(ちはや)本人は『別の理由』で恐怖に打ち震える。


「大丈夫だ、『今回』は俺がそうさせない」

「……本当、です?」


 不安がちに八朝(やとも)を伺う千早(ちはや)

 正直に言うと自信は無いが、言い出しっぺがへばってしまっては元も子もない。


「ああ、その方が上手く行く……必ずな」


 千早(ちはや)がそれを聞いて決意と共に頷く。


「やはり私も付いていきますわ」

「な……だが……!」

「大丈夫ですわ

 私には『鳴下神楽』があるんですの」


 鳴下(なりもと)が、裏も表も無い自信を表明する。

 寧ろ、そっちの方が場の説得になったらしい。


「頼みましたよ、鳴下(なりもと)さん」

「うん……頑張っ、て!」

「まぁ『私達』も大丈夫だけど、こっちもこっちで戦力が必要だからね」


 七殺(ザミディムラ)が作戦の最後の穴を埋める。

 これで当面の目標が決定した。


八朝(やとも)君死なせたら絶対許さないからね」


 散開する前に三刀坂(みとさか)鳴下(なりもと)にそう呟く。

 

 どう返したのか八朝(やとも)には分からない。

 既にタイムリミットまで10分を切っていた……

次でCase47が終了します

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