Case 47-3
2021年1月19日 完成
エリスの『真・分析魔術』により最短距離をひた走る。
全員を見つけ出し、『第五層』を突破できるだろうか……
【6月12日(金)・夜(22:00) 地下迷宮・第五層大広間】
『この先だよ!』
「ああ!」
想定よりも1時間早く大広間に着き
八朝の声が自然と弾む。
だが、この先には未だに正体不明の『第五層』の0つ目級が存在する。
「引き続き行けるか?」
八朝が2人に確認する。
エリスも七殺も首肯で答える。
そして、大広間に侵入するが七殺が思わず呟く。
「なにこれ……
こんなの見た事が無い」
大広間の床・天井・壁に所狭しと光る紋様が浮かび上がっている。
「……だろうな
この文様は魔法円だ」
「魔法円って、魔法陣じゃなくて?」
「ああ、魔法円だ
しかも錫沢の『招集術式』と同じタイプ……」
「悪魔ではなく人を縛る外法の魔術だ」
それを聞いたエリスと八朝の視線(?)がかち合う。
お互いに頷き、やるべきことを行う。
『■■!』
『Pwczkcq cp Yse Opdi / Njkfi wl Nibbqi / Hnkugbth no Thtb He』
まず八朝の霧が空間に充満する。
探すべきは『異能力者』を表すであろう『魔術師』の四大元素のカタチ。
だが霧は一向に人の気配を捉えてくれない。
その為の切り札である。
時間が少々掛かるのが難点であるが
彼女なら壁の向こうの蟻まで捉えてくれる。
そして30分が経過する。
『駄目……
本当にここには何もない……!』
「そんな……」
当初の彼女らが言っていた事が真実であったらしい。
捕らえた人間を厳重な隠蔽の下に置いているのだろうか。
そして後ろから足音が聞こえ始める。
「馬鹿な……追いついただと!?」
後ろから数人ほどの人影が追いついてくる。
剣を構え、騎士槍を掲げ、弓を携える。
『第五層』が奪い、作り出した偽仲間達が一斉に八朝達に襲い掛かる。
『Hpnaswbjt!』
エリスが分析を中断して障壁を展開する。
たった一撃で3層ある障壁の最外層が粉々に砕ける。
「ふうちゃん!」
「クソッ! 本当に戦うしかないのか……!?」
三人とも『八朝より』格上の相手である。
そういえば七殺が先程から押し黙っていた。
「七殺……何か……」
「見つけた!!」
七殺がそう叫ぶと薙刀を構え、さらに奥へと走る。
(そうか、奇門遁甲か!)
七殺……柚月の異能力にある『方違』は全て奇門遁甲の用語であった。
この占いは特に『方位』を重要視し、吉凶だけでなく失せ物も探し出せる。
『乙儀・伏吟飛蓬』
七殺が薙刀の刃を地面に突き刺す。
それは先のエンカウントで化物の身体をひん曲げた能力。
だが、一度見た技は三人には通用しない。
「な……に……!?」
攻撃を中断した三人がそれぞれ大ジャンプを行う。
彼らを曲げる為に伸びた白色が空を切り、草臥れる。
「曲げるのはそっちじゃないよ!」
瞬間に白色が土を吸い上げ、白銀に輝く。
更に勢い良く伸び、人影達の足首に巻き付く。
そのまま地面に引っ込ませ、偽仲間達を顔面着地させて動きを封じる。
「助かる!」
八朝とエリスが七殺の元へと向かう。
その先はまるで図書館の書架のように分岐していた。
「手分けして探そう!」
手分けしてそれぞれの通路を捜索する。
その一つ目で鳴下を発見する。
「八朝さん!?」
「助けに来た! 今すぐこの戒めを解いてやる!」
「駄目! それを動かすと……!」
一瞬、戒めの魔力の気配が変じる。
その結び目を解いた瞬間、猛烈な苦痛に襲われる。
「ぐ……!」
「何をしているんですか!
手を放してくださいまし、そうじゃないと貴方が……」
恐らくこれも『同調』の一つ。
結び目という形を解くと、依代が砕けるのがセットになっている。
それでも、ここで止める訳にはいかない。
「ぁ……ああああああああああ!」
結び目を解くことに成功する。
その代償として八朝に罰則が襲い掛かる。
「貴方まで鹿室さんみたいな事をして……!」
|すかさず鳴下が解放してくれる。
確かにやや強引な彼のやりそうなことだ。
だが、相手が悪かった。
今の八朝には本物の『後遺症』がある。
「……! はぁ……はぁ……!」
「な……罰則を……耐えましたの!?」
今まで当たり前のようにやっていた『気絶無効』。
その重大な意味をこの瞬間に悟る事となった。
「……立てますの?」
「これしき……まだ大丈夫だ」
鳴下の手を借りる事無く立ち上がる。
だけど結局その手がしっかりと繋がれる。
「付いてきてくださいまし!
今、この危機を救えるのは貴方だけです!!」
続きます




