Case 46-5-2
2021年1月16日 完成
(ふーちゃんが何を言ってるか分からない)
(でも、皆を守りたいのだけは……)
(それにあの影たちは……うん!)
【TIMESTAMP_ERROR 抑川地区・辰之中】
「ぐぁああああああああ!!!」
雹に頭蓋を肩甲と橈を色々と砕かれる。
風が止んだ頃にはゴミのように転がる八朝がいた。
『ふうちゃん!』
「落ち着……け……!
今は……柚月……を……!」
エリスは残存魔力を障壁生成に回す。
端末の落下を無視し、魚たちを振り払う。
『0x86』
再び、四足獣の大群が解き放たれる。
だが、想定よりも早く柚月が立ち上がる。
CON:1→5
LUK:4→0
『乙儀・伏吟飛蓬!』
柚月は杖を掲げるが斬撃は起きない。
だが、敵の攻撃の手が止まった。
「な……!?」
「わたしの■■■■は、斬撃だけじゃ、ない
身体が金属なら、その形も……!」
『ふうちゃん!』
エリスが急いで駆け寄り、障壁を再展開する。
苦痛によるダウンがもどかしく上体を起こそうとする。
『駄目! 今は休んで!!』
「だが今日中に『第五層』に行かないと全員死ぬぞ!」
『!?』
そして八朝が漸く敵の本性を口にする。
即ち『第五層』の呪いは『簒奪の呪い』
依代の一部を奪い偽物を作成し
本物は大広間の中に隠す。
これを倒せば能力暴走で死に至り。
放置すれば1日以内に『本物』となってしまう。
替えの部品しかない『テセウスの船』の如く。
或いは名前を皮切りに全てを失う『名無しの森』か。
『そんな……』
「うん、だから討伐……しなかった……」
柚月の言葉はやがて真実と悟る。
人影の身体が曲がり、頭が地面に刺さっている。
それは乙の字義である『曲がる』そのままに……
「……有難い」
「えへへ」
安全を得たところで今後の方針を確認する。
まずは大広間に急行する事。
そのためには2つの条件をクリアする必要がある。
・迷宮に目印を付ける
・マスターに見つかってはいけない
「だったら、境界まで……逃げたら」
「ああ、その方が手間が省けるな」
八朝達は学園の方向の境界へ走る。
およそ2、300mであるが、慎重に移動する。
別の化物にタゲられる可能性を潰していく。
そして漸く青の濃いエリアが見え始める。
これが沈降帯の境界となる。
『ふうちゃん、倒し方分かるの?』
「一応はな……
さっきやりかけた詠唱を本体にぶつければ……」
『でもあれ、識別名不明だよね?』
「これが終わったら何でも奢ってやるよ」
『もう……そんな事言わなくても……』
大いに不満だったのかエリスが愚痴を漏らす。
だが声は心なしか弾んでいた。
そして沈降帯を抜け、元の篠鶴市に戻る。
「八朝か?」
「!?」
目の前にマスターがいたのである……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
DATA_LOST
xxxxxxxx xxx
Chapter 46-b 第五層 - Thirty Oars
END
これにてCase46、第五層の回を終了いたします
今まで出てきたアトラス級は……
・舞踏の呪い、物語に巻き込んで殺す
・邪視の呪い、魔眼で身動きを奪う
・蟲毒の呪い、鷹狗ヶ島を模していた
・文字の呪い、詳細不明
・簒奪の呪い、偽物に段々と置き換える
ええ、碌な奴がいませんね
しかもギミックが360度ねじ曲がってるし
次回は『本性』
それでは、引き続き楽しんでいただけたら幸いです




