Case 46-4
2021年1月15日 完成
2021年1月16日 修正
晩になり自然とお開きとなった。
夕飯を食べに住居側の扉を開ける……
【6月12日19時55分 抑川地区・太陽喫茶店内】
「……八朝はまだ来ないのか?」
「ん、ゆーちゃんも……だけど」
いつもの食卓に空いた二つの空間。
共通点は『異能力者』……まさかの事態を考える。
「あいつ等化物にタゲられたのか?」
「そんなはずないよ
化物は屋内に現れないって」
それは篠鶴七不思議の第二である『鳥居印』。
これが刻印された建物の中に化物が侵入できない。
原理不明だが非常に便利な七不思議である。
「じゃあ、アイツ等最後に何処にいたんだ」
「うーん……ドア開けたのは見たはずなんだけど……」
マスター、妻、咲良三人で顔を見合わせる。
明らかにあの二人は『ドアの中』に消えたのだ。
何故それに気付かなかった……!?
「すまん、晩メシは後回しで良いか?」
失語症の妻はマグネットボードで肯定を伝える。
マスターがカウンター奥から端末を引っ張り出す。
「がんばってねー」
手をひらひらさせながら咲良も思考を開始した。
【6月12日18時55分 抑川地区・辰之中】
「……ッ!」
ドアの向こうは辰之中の星月夜が広がっていた。
「そん……な……!」
ドアを見るが『鳥居印』は健在。
呆然と見る暇もなく、背中に寒気が走る。
『Ifebeim!』
『■■!』
柚月に続いて八朝も『分身』を。
視線の先、水平線が謎の霧によってぼやける。
『0x86』
「な……!?」
10進数で『134』とは何のことか。
意味不明な単語の下
霧は巨人に、巨人は夥しい四足獣に。
地を埋め尽くす足音が迫ってくる。
『庚尊・伏吟戦格!』
「!?
駄目だ……それでは殺せない!!」
四足獣の一匹が斬撃を噛み砕く。
驚く柚月を無視して指示を続ける。
「木と水が必要だ、特に大木をあの影に!」
『楓棗・青竜華蓋!』
手放された杖が流星の如く加速する。
影を確かに打撃した感触と共に異変が生じる。
即ち『第一の太陽』と呼ばれた影と獣は
その末路と同じ杖によって崩壊した。
「……すごい」
「あの影の末路が木と水だ
だが、これで相手の本性が……」
『Xxxxx!』
神の名を言う前に柚月が狙撃される。
駆け寄る気持ちを抑え、様子を確認する。
(罰則は無し、そして矢の追撃)
(痙攣が心なしか遅い……『鈍足』か!)
『狙撃』と『鈍足』の状態異常。
三刀坂の銃剣以外にあり得ない。
混乱しそうになる心を静め、エリスに指示を飛ばす。
「エリス!
幻惑が生きている間柚月を守ってくれ!」
八朝は固有名を会話に紛れ込ませて発動する。
合計3体の■■を影、銃、矢の三根本に向かわせる。
『Hpnaswbjt!』
エリスの障壁にありとあらゆる種類の攻撃が刺さる。
その間に柚月が属性スキルで体力を回復する。
火属性スキル唯一の欠点である硬直を障壁でカバーする。
一方で、八朝も仮説を検証する。
(一人目……ッ!!)
影の方に向かわせた分身が消される。
罰則の痛みに耐えながら機会を伺う。
(二人目接敵!)
瞬間に詠唱による『変更』を加える。
『我は祖へと引き返す
即ち非ざる九つの日霊を射殺せ、■■!』
狙撃手の方に差し向けたのは模倣の鳴下神楽。
鳴下神楽の魔力消去は化物の身体のみ傷つける。
即ち本当に化物かどうかの確認である。
(三人目……早すぎる!)
検証する前に接敵してしまう。
結果は後でエリスに聞くとして今は目の前の事態である。
『我は引き返す!
されど道は潰え、その身は黒き嬰児の懐に!』
三つ目は三刀坂に言いかけた仮説。
即ち相手が『第五層』の化物か否かを確かめる。
それぞれの攻撃が当たった事を確認して叫ぶ。
「エリス!」
『うん!
2番擦過、3番が部分的にダメージ!』
「ば……馬鹿な!?」
その瞬間に八朝の戦略が崩壊した。
化物は『アステカの太陽』だけではない……
もう一つ、『正規でないミノタウロス』が混じっている。
「そうか……千早か……!」
異能力は基本的に被ることは無い。
たとえ姉妹だったとしても細かな違いが出て来る。
同じ巨神でも、姉が北欧で妹は中南米。
『0x45』
しかも次に呼ばれたのは第四の水。
……洪水による物量攻撃を仕掛けようとしている。
『Hpnaswbjt!』
巨人の一撃が、浅い辰之中の水面に津波を引き起こす。
エリスが選択した鋭角の障壁が濁流を引き裂いていなす。
だが残った魚が障壁を齧り始める。
『■■!』
エリスに障壁を張り直させる。
今もまだ柚月は回復中で予断を許さない。
(クソッ……!
エリスが正しいなら、最悪今日中に……!)
皆が『第五層』に呪殺される。
あれは魔獣ではなく、迷宮に掛けられた呪い。
クレタ島から帰還した英雄が持ち込み
保存しようと躍起になった人々が引き起こした矛盾。
だが、目の前の剣を佩いた人影が現れる。
「な……にぃ……!?」
『Xxxxxxx!』
剣より解き放たれたのは雹を伴う烈風。
間違いなく鹿室の異能力である。
『我は星でなく卵を為す……』
この攻撃は2つの七不思議を利用する。
即ち『似姿のジンクス』による対消滅。
それを起こすために『笑う卵』で混在させる。
当たれば間違いなく目の前の化物を葬れる。
だが……!
①■■!
②…………ッ!!
続きます
丸数字は『xx-xx-〇』の〇の話と対応します




