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Case 46-2

2021年1月13日 完成

2021年1月14日 修正


 常連のおばあさんに言われた言葉が気になる。

 エリスと共に情報収集していると既に日が暮れていた……




【6月11日23時24分 抑川地区・太陽喫茶店内】




『メシはちゃんと食え

 妻が悲しんでいたぞ』


 ドアを開けると既に冷え切った晩御飯が置かれていた。


『どったの?』

「晩メシ食べ忘れてマスターが怒ってる」

『あー……』


 エリスがバツの悪そうな声を漏らす。

 日常も記憶探しの重要項目だが、これも無視できない。


 何故自分だけ『飛び級』になったのか。

 鷹狗ヶ島(第三層の0つ目級)を独力で倒した訳でもないが、名誉は自分のみ。


 おばあさんの最後の一言が無ければこうはなっていない。

 それだけ、マスターの気遣いが完璧だったのだろう。


「まぁ、先は長いし休憩でもするか」

『だねー!』


 空腹を感じる身体でも無いのにこの上機嫌である。

 曰く『味が無いとか拷問じゃん』という。


 傍らでエリスの分がブロックノイズに呑まれていく。

 これが彼女の妖精魔術(エルフグラム)……『良食は口に甘し(グルメ・コンバーター)』である。


『やっぱり冷めてるね……』

「まぁ、それが俺らが犯した罪の大きさなんだろさ」


 その傍らでノートが開かれている。

 行儀は悪いが、食事中に今まで集めた情報を纏めていた。


 ・『飛び級』制度は存在する

 ・だが異能部部員以外の事例が無い

 ・40代以前の卒業生並びに平職員の認知度が3%以下

 ・地下迷宮は意図的に封印された跡がある


「……」

『ふうちゃん、行……悪い……』

「そういうお前も計算中だろ、処理落ちしてんぞ」

『え……ちょ、先に言ってよー!』


 流石にエリスでも恥と思う事はあるらしい。

 これでおあいこという事で互いに思索の続きを行う。


(『飛び級』が俺に適用されるのが例外事項とは分かった)


 だが、最後の一つは一体何なのだろうか。


 地下迷宮は地底探検部より先に発見されている。

 それを示す『アトラスの塔』という名前。


 利害関係者の異能部……又は十死の諸力フォーティンフォーセズは無関係だろう。

 だが嫌な引っかかり方をする情報であった。


「……歯でも磨いてくる」

『こういう時この身体(端末)で良かったなーって思うよ』

「遠からず不便な方に戻してやるし気長に待ってろな」




 ドアを閉めると足音が響くほどの静寂である。

 民泊だった名残で暗がりの廊下の先に洗面台がある。


 コップを置くと真後ろから気配を感じた。


「……咲良(さくら)なのか」

「おーよくわかったねー、でも呼び方ちがうよ?」

「……姉さんの気配は独特なんだよ」


 振り向くと部屋着姿の咲良(さくら)がいた。

 彼女も歯磨きをするのか手にはコップがあった。


「あ、おはなしがしたいからここで待ってて」

「……そうさせてもらう」


 深夜に男女が同じ部屋にいる訳にもいかない。

 八朝(やとも)は大人しく壁に寄りかかる事にした。


 何度目かの水道の音がして、洗面台での用が完了する。


「それで話というのは?」

「んーとね

 多分晩ご飯抜いたふーちゃんなら分かってることだけど」

「マスターの事か?」

「ううん、十死の諸力フォーティンフォーセズの事」


 思わずドキリとする。

 異能力とほぼ関りが無い咲良(さくら)十死の諸力フォーティーンフォーせズ


 何も起きないことを心の中で祈る。


「……生徒会で得たのか?」

「そうそう、よくわかってんじゃん」


 サムズアップで肯定を示してくれる。

 だが、すぐに眉を下げて八朝(やとも)を見つめる。


「ふうちゃん、心配しなくてもわたし賢いからねー」


 信じられないかも知れないが、その言葉は正しい。

 何しろ『巻き戻す前』では掌藤(たなふじ)の彼氏を破滅させている。


 その強かさは生徒会長という役職にも表れている。


「それでおはなしなんだけど……

 十死の諸力フォーティンフォーセズの一人が『篠鶴機関』にいるよ」


 それだけでも衝撃的であった。

 だが、彼女は詳細までも語り始める。


 以下に判明した事実を書き記す。


 ・十死の諸力フォーティンフォーセズ結成の切っ掛けを与えた人物

 ・内部情報を駆使してアジトの場所を今でも隠蔽している

 ・その人物は自前で異能力の反応を『消せる』


「何処でそんなものを……」

「いちどだけお客さまで来たときにちょっと、ね」

「全く、本当に俺の周りは恐ろしいもんだよ」


 八朝(やとも)の悪態を咲良(さくら)が曖昧に返す。

 処世術の一つかと思っていたが、そうでもないらしい。


「そういうふうちゃんも聞いたよ

 あの地下迷宮を半分以上クリアしたって……」

「冗談だよな?」

「うん、ふうちゃんって女の子のお友達が多いからね」


 八朝(やとも)が面を食らったかのような表情になる。

 それでも咲良(さくら)はくすくすと微笑みながら話を続ける。


「おとこのこはおんなのこの為に強くなれるからね」

「……そういう訳じゃないだろ」

「ううん、意外とほんとうかもね」


 意味深な目配せをして更に八朝(やとも)を油断させようとする。


「エリスちゃんの妨害術式作ったのふーちゃんでしょ?」

「……」

「隠し方に『周期性』があるの

 わたし、そういうの勘でわかっちゃうから」


 咲良(さくら)が見せたのは『三日月と蠍と犬』が書かれたカード。

 それは形だけでも八朝(やとも)に新たな力を与えた神秘の一欠片。


 どうやら全てお見通しであったらしい。


「暫くは目を瞑っててくれ、全部思い出したら……」

「そんなこと言わずに明日の晩ごはんも一緒に食べようよ」


「それで『チャラ』にしてあげるから」


 咲良(さくら)はそう言い残し、自分の部屋へと戻っていった。

続きます


 ※今回は試験的に文体を変更しています

  以降もこうなる可能性があります

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