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Case 44-2

2020年1月1日 完成


 数日掛けてショックから立ち直った八朝(やとも)

 第三層の化物(ナイト)の情報を求めて学園洲にある図書館へ行く




【5月30日12時00分 篠鶴学園・図書館】




 図書館に到着した八朝(やとも)とエリスが手分けして資料を集め始める。

 捜索方針は『蟲毒』『近代法以前の冤罪事件』そして補足的に『鷹狗ヶ島の情報』である。


 最後のものに関しては『巻き戻す前』で既に知っているが、エリスが一番興味を示したものである。

 という事で残りの二つを本棚から探していく。


(……見つかりはするが量が凄まじいな)


 余りにも抽象的な方針にしてしまったせいで、両手で抱えるほどの本をピックアップすることになる。

 取り敢えず現在持っている本から探そうと、共用の机に本を乗っける。


「……隣、いいか?」

「どうぞ」


 誰かが座っていたらしく、一応断りを入れてから席に着く。

 数秒後に何かを落とした音がして、それから少し間を開けて開いたノートを渡される。


『貴方は八朝(やとも)ですね?』


 相席の人をよく見ると、掌藤親衛隊の用賀浩明(ようがひろあき)だと判明する。

 どうやら筆談がしたいらしいので、そのままノートに返事を書き込んで手渡す。


 以下は筆談の内容となる。


『その本は……見る限り『巫蟲の獄』についてですか?』

『そういう風に見えるが、単にどっちも調べているだけだ』

『また異能力でも調べてたんですか』

『いや、化物(ナイト)だ……地下迷宮の奴でな』


 この時点で用賀(ようが)が長考を始める。

 何かと思って彼の返事を待つと、意外な答えが返される。


『アトラスの塔のですか?

 それに見たところ第三層のですよね』


 顔だけで『ついてこい』と促してくる。

 どういった経緯で知っているのか不明だが、取り敢えず彼に従って案内してもらう。


 受付での手続きののち地下書架まで行くと、目の前にいたエリスがこちらに気付く。


『あっ! ふうちゃん!!』

「お静かに」


 受付の人に怒られてエリスが一瞬で黙る。

 その一幕ののち、用賀(ようが)に案内されたのは『異能力学集成』があった書架であった。


(ここは……)

(僕の両親は初期の神隠し症候群で特異的な症状……『失語症』の研究をしていました)


 それは『巻き戻す前』でも言ってなかった情報であった。

 異能力研究のアプローチで『失語症』を選んだのであれば、いずれかは辿り着いたのだろうか……?


(その研究の際に、患者から『失語症』と同じく特異的な反応も示していました)


 渡された異能力学集成の、示したページを開くと『鷹狗ヶ島』の記述が存在した。


(な……!?)

(彼らは学園の地下……『アトラスの塔』と言われた場所を『鷹狗ヶ島』と証言しました

 彼らは『大広間』を巧みに避けながら第三層へと至るルートを記憶していました)


(そしてここから数ページにわたって同じく患者情報ですが、もう一つ共通点があります)


 ページを捲っていく。

 八朝(やとも)には『患者全員が篠鶴市民』だという事以外読み取ることができない。


(ふうちゃん、これ全員篠鶴市民なんだけど……)

(いや、それぐらいは普通じゃないのか?)

(そんな事ないよ!

 だって他の異能力研究じゃ本州の患者情報も少しぐらいは混じっているのに……)


 その言葉に頷いた用賀(ようが)が言い放つ。


(その通りです

 神隠し症候群の99.9%が篠鶴市民なのです)


(僕の両親はこれ以上の追及はしていませんでしたが、僕にはあるものの共通点が見いだせます)

(共通点?)

(現実の物理現象では置き得ない共時性、そして篠鶴市に特異的に現れる……)


(まるで篠鶴七不思議みたいだな……と)


 余り自信なさげな用賀(ようが)の推測だが、八朝(やとも)の頭の中でカチリとパズルがはまる。

 錫沢英丸(すずさわえいまる)の招聘に最後まで応じなかった3つの『七含人』。


 それが人語を介さない化物(ナイト)であるなら、彼の前に現れなかった理由にも説明がつく。


(……大変ありがたい情報だが、どうして俺に?)

(貴方は女王の大切な妹様を守ってくれた人です

 正直貴方の事は死ぬほど嫌いですが、貴方に借りを作りっぱなしなのは更に不快です)


 大変説得力のある表情と共に呪詛を吐かれる。

 それでも第三層の化物(ナイト)の確信に近づくことができた。


(感謝する)

(感謝される覚えはありません

 貴方が親衛隊の仲間でない限り、死ぬまでゴミ扱いさせていただきます)


三刀坂涼音(みとさかすずね)を裏切った浮気者)


 そう言って用賀(ようが)が去っていく。

 すると何かに気付いたのかエリスが耳打ちしてくる。


(ねぇ、ふうちゃん……『神隠し症候群』なんて七不思議は無いよ?)


 思い返してみるとそうであった。




 ①渡れずの横断歩道(フォレストラット)

 ②化物(ナイト)隠しの寺社仏閣

 ③不老不死の鳴下駅東口衛士

 ④嘲笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)

 ⑤空中交差点の浮遊大岩

 ⑥■■■■■■■(篠鶴地下遺跡群)

 ⑦似姿のジンクス




(いや待て、6つ目は正確には不明じゃないのか?)


 何故か6つ目の篠鶴七不思議を思い出そうとして、猛烈な違和感を感じる。

 それはエリスも同じことだった。


(あれ……待って!?

 何か、確かに『篠鶴七不思議』だった気がするけど、そうじゃないような……)


 そして今すぐに確認すべき事項が判明する。

 篠鶴七不思議を生み出したとされる雑誌の初版本、そこに第三層の化物(ナイト)の全てがある。


(エリス……)

(うん、任せて!!)


 エリスが胸ポケットに入り込み、図書館の情報をハッキングして居場所を探し始めた。

続きます

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