表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/582

Case 43-3

2020年12月27日 完成


 取り敢えずの所、『七含人』に関する一連の事件が終結を迎える。

 しかし、舌の根も乾かぬうちに鳴下(なりもと)が次なる『第三層』攻略を始める……




【5月26日15時30分 篠鶴学園高等部・地底探検部室】




「本当に待ちくたびれましたよ……」


 心労から解放された様な猫撫で声の杣根(そまね)部長。

 あまり聞きたくないような言葉であるが、鳴下(なりもと)には関係が無かった。


「では早速向かいましょう」

「なんと……!

 では一同お手伝いいたします!」


 部長の言葉を苦々しく聞き届ける地底探検部部員たち。

 取り敢えず、今回は威力偵察のみだから特に必要は無いと言って宥める。


 そして、まるで鳴下(なりもと)に引っ張られるように地下迷宮を進む。


「何だって急に……」

「当たり前ですわ

 この迷宮の先に十死の諸力フォーティーンフォーセズのアジトがありますので」

「何……?」


 曰く、昨晩の七殺(ザミディムラ)の証言が根拠らしい。

 正確にはこの迷宮の先にある『地下神殿』のどこかにアジトがあり、そこから繋がるルートを用いて奇襲を行うらしい。


(そういえばあの『異能部』も……)


 そうこうしている内に第二層の広間に辿り着く。

 だが、これまでとは違い本当に何もいない方の静寂が辺りを包んでいた。


 周囲探索・エリスの走査、いずれも目ぼしい反応が無かった。


「……本当にあの『エジプト壁画』がここの主だったらしいな」

「ええ、そうですわね」


 という事で次なる『第三層』へと足を進める。

 今までと同じように、1つ目(アステローペ)級すらいない迷宮を突き進み、第三層前の扉に辿り着く。


 手を掛けてみても、何かに引っかかって開かない。


「今回は鍵が掛かっているな」

「ええ、私の出番ですわね」


 そう言って1秒もしないうちに白蛇に変身する。

 そして上の方にあった通気口から侵入しようとする。


 あの事件以来、彼女の後遺症(レフト)であった白蛇化は任意発動できるようになった。

 即ち第二の異能力と化したのだが、皮肉にもそれまでの白蛇になる時間……つまり12時~17時以外は発動しなくなっている。


「おい、あんまり先に進むなよ

 今回は鍵を開けるだけでそれ以外は何もするなよ」


 白蛇は自慢げにふいっとそっぽを向き、通気口の中へと入っていく。

 後は、彼女が向こう側から鍵を開いてくれるのをエリスと共に気長に待つことにした。




【TIMESTAMP_ERROR 篠鶴学園高等部・■■■■■室】




 ふと目が覚める。

 机に突っ伏した後遺症で腕や額やらがヒリヒリとして不快だ。


 取り敢えず、広げていた教科書に目を通すが、今どの辺りなのか分からない。


(すみません……)

(あっ、p106だよ

 さては昨日夜遅くまで起きてたんでしょ)

(……そうかもしれませんわね)


 隣の席が親友であった幸運を噛み締める。

 そして机に広げていたものと教師の話の辻褄が合い始める。


 窮地から脱してしまうと、今度は『夢』へと興味が巡って来る。


(アレは確か八朝(おとこのこ)と一緒でしたわね

 ……後遺症(レフト)を使いこなすだなんて、私もまだまだですわ)


 余りにも都合のいい夢に■■は苦笑する。

 そうして、先生が当てた生徒が反応しないので何度か呼び掛けている。


(ねぇ、早くしなよ)

(えっ?

 何が、ですの?)

(『すずちゃん』が当てられてんじゃん)


 すずちゃん?


 聞きなれない名前に首を傾げる。

 やがて記憶の奥底から、それが『錫沢瑠香(すずさわるか)』である事を探り当てる。


(待って……錫沢(すずさわ)さんは別のクラスの筈よ!?)


 段々と混乱してくる■■に、先程の先生が教科書丸めてやって来る。


錫沢(すずさわ)

 さっさと答えんか!」

「何ですの!?

 私は錫沢(すずさわ)ではなく鳴下(なりもと)ですわ!!」


 その言葉に、教室中から声というか生気が消えてなくなる。

 目の前の先生すら青白い顔で怯えているが、やがて何かに気付いたのかぽつぽつと言い始める。




錫沢(すずさわ)お前……神隠し症候群になってしまったのか」




 先生の言葉に絶句するも、その後の対応がまずかった。

 まず、同情した同級生たちが私を気遣い、保健室へと連れていく。


 そして保健室の先生へと事情を説明すると、保健室の先生はすぐさまに端末(RAT)を取り出す。

 恐らくは篠鶴機関への連絡なのだろう。


 余りの突拍子の無さに、思わず口調が悪くなってしまう。


「何ですの!?

 皆して、大げさすぎませんか!?」

「何を言っているんだ?

 神隠し症候群は異能力症候群の重症例だ……錫沢(すずさわ)さんには悪いが『月の館』への送致手続きの邪魔だ」

「何ですって!?」


 身に覚えのない言葉の数々が、段々と■■の精神を削っていく。

 それでも最後に残された力でもう一度抗議する。


「私は鳴下(なりもと)家の廃嫡、鳴下雅(なりもとみやび)ですわ」

「何……だと……!?」


 今までは邪魔という感じの睨みが、今度は本当の憎悪が乗せられている。

 やがて保健室の先生がぶつぶつと言い始める。


「……せ」

「何ですの、さっきから貴方は!?」

「俺の娘を返せって言ってんだよこの〇女!!」


 端末(RAT)から電子魔術乱舞(グラムストーム)が迸る。


『……ッ!

 十の幻日よ!』


 (からす)落としはどうやら正常に発動したらしいが、それが彼の怒りを倍加させる。


「何ですの貴方!?

 この狼藉は看過できません、上に抗議いたします」

「やれるものならやってみろよこの殺人鬼が!!」

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ