Case 43-1:斬撃を操る能力(Ⅲ)
2020年12月25日 完成
『壊乱の呪い』の討伐に成功する。
そして久々に七殺に再会し……
【5月25日15時59分 篠鶴地区・篠鶴駅(辰之中)】
「ふうちゃん!」
七殺に抱きつかれるが、秒で引き離す。
確かに状況は脱したが、辰之中である以上は新たな化物の乱入の可能性がある。
「すまん、まだ気が抜けないんだ」
「むぅ……」
ふくれっ面で抗議する七殺。
こうしてみると元十死の諸力の幹部だった頃が嘘みたいに見える。
だが次の瞬間、十死の諸力としての側面を見せる。
『庚尊・伏吟戦……』
『汝の赦しをここに!』
悲鳴を上げる身体に活を入れて、七殺を押し倒す。
金属生成の異能力の発動は止められたが、表情は依然と緩まない。
「何してんだ七殺」
「ふうちゃんどいて!! そいつ殺せない!!」
指差した先に、ようやく罰則から回復した市新野がのそりと起き上がる。
「うーん……
ってまた何が起きてるんですか!?」
一瞬で谷座と『壊乱の呪い』が撃破された状況を把握する。
だが、現在の脅威は七殺の方である。
「市新野が……俺の友人が一体何したんだよ!」
「友達なの!?
早く縁切って!! ソイツは……」
「悪疫だよ!!」
その名称に仰天した八朝が市新野の方を見る。
たとえ転生者と言えども、連日のニュースで伝えられる十死の諸力のリーダーの名称を違う事は無い。
十死の諸力第五席・悪疫のアポリオン
犯罪異能力者を率い、篠鶴市だけでなく本島でも大量殺人事件を引き起こした正真正銘の悪魔。
「な……そんな訳無いでしょう!!
知りませんよ悪疫なんて!!」
『そうだよ!
市新野くんの制御番号はアポリオンのものじゃないよ!!』
エリスの表示した画面を確かめると、確かに彼女の言った通り制御番号が違っていた。
それでも七殺が手を緩める事は無かった。
「それでも……ふうちゃんを守る為なら……!」
異能力の発動を感じた八朝が七殺を拘束していた手を解き、急いで距離を取る。
八朝の手の甲からしとどに流れる血が、彼女の本気を表していた。
『Vrgvac!!!』
初めて七殺の異能力が放たれる。
あの小さな身体から想像もつかない程の声量で空間を震わすと、巨大化した薙刀の刃が逆袈裟に放たれる。
『……ッ!
汝の導きし星辰よ!』
先程の慈愛の柱とは真逆の峻厳の柱を構築する。
瞬く間に八朝周辺が呪詛に穢され、淀んだ魔力が取り囲む。
それは八朝を切り裂かんとした七殺の一撃も同様であった。
「え……溶けて……?」
まるで八朝の身体を避けるように刃が反っていった。
薙刀を振り終えた頃には八朝の放った呪詛に巻かれていた。
「……ッ!
方違・騰蛇相纏」
薙刀で地面を叩くと、彼女に纏わりついていた筈の呪詛が綺麗さっぱり無くなっていた。
やはり、七殺は2種類の異能力を使い分けていると悟る。
一つは先程の固有名由来の金属生成……これは彼女の本来の能力である。
『巻き戻す前』にて見当違いと断じた『声量と金属生成の変換』がどうやら正しかったらしい。
もう一つは言うまでもなく柚月のと同じ『亜種奇門遁甲』。
だが柚月のそれとは異なり、七殺は必ず『庚』が絡んでいる。
それ故に火剋金となる先程の火傷の呪詛が効いたのであった。
「……俺はお前とは戦いたくない」
「でもふうちゃんもそれ長続きしないよね?」
七殺の指摘は正しく、呪詛は己まで呪いで侵してしまう。
段々と生命強化の効力が切れ始め、脂汗が浮き始める。
「大丈夫……私も折角会えたふうちゃんを殺したくない!」
その言葉に八朝の『助けてから一度も会えなかった』後悔の念が蘇る。
その間、戸籍も伝手もない彼女がどういった生活をしたのかありありと浮かび上がる。
やがて、呪詛すらも切れて八朝が力尽きる。
そこに七殺が近づいて薙刀を振り下ろす。
『Vrgva……』
『十の幻日よ』
あり得ざる鳴下神楽の一撃が七殺を捉える。
八朝が倒れたと同時に白蛇から戻った鳴下が起き上がる。
DappleKilnでございます(省略)
さっそくバトルが始まっていますね
しかも、彼女が『十死の諸力』だと知られてはいけない相手に……
これからどうなってしまうんでしょうか?
少なくとも何らかの代償は支払うことになるでしょう……
それでは引き続きよろしくお願い致します




