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Case 40-5

2020年12月14日 完成


 掌藤(たなふじ)の助力により窮地より逃れる事に成功する。

 とはいえ負傷者が出ているので篠鶴機関に連絡して救助を待つ……




【5月22日19時26分 水瀬地区・水瀬神社社殿】




「ほらよ」


 掌藤(たなふじ)から拳大の大きさの『アルキオネの鱗』が渡される。

 丁度八朝(やとも)がレベルダウンした分がこのぐらいである。


「……要らんのか?」

「知ってんだろ、その程度じゃ足しにもなんねぇって」


 掌藤(たなふじ)が言っているのは位階(ランク)アップに必要な鱗の量である。

 彼女のT(1/3)級では、この拳大レベルがあと数百以上必要となる。


 という事で彼女の厚意に応える事にする。


「もう知ってんだろうけど

 七含人ってのは一部を除いて錫沢(すずさわ)の体の良い奴隷だって」


 掌藤(たなふじ)の呟きに無言で同意する。

 錫沢英丸(すずさわえいまる)が行った『酒池の儀』、或いは『口寄せ』と呼ばれるそれは魔術的な侵奪行為であった。


 脅しの材料としてはこれ以上に的確な魔術は存在しない。


(あれ……?

 召喚系の能力(ギフト)持ちって……)


 何か考え事をしていると、ふと変な本棚に突き当たる。

 『変』と称したのは外観とか雰囲気という話ではなく、帯に書かれている文字列である。


 『天文基礎』『JavaScript』『感染症の歴史』『エノク魔術手引き』……

 いずれもこの世界で存在しない体系の専門書であった。


「これは……」

「それが『七不思議』の正体です」


 今まで閉口していた柏海(かしみ)が本棚から1つ取り出してくる。

 帯には『世界の名作・あらすじ集』なるタイトルが記載されていた。


「七含人はこの世に存在しない特別な本を読むことで継承される

 私も本当はお父さんからこれを受け取ったのですが……」


 柏海(かしみ)が声を震わせてしまっている。

 これ以上言わなくても、彼女の身に何が起きたか容易に想像することが出来た。


「にしてもさ、アタシ等居る必要無くね?」

「お前が『空中交差点』の頭蓋を割らなかったらそうしても良かっただろうよ」

「お前も派手にあの男の肋骨折ってんじゃねーか

 本当にお前次から次に能力(ギフト)が湧いて出て来るよな」


 呆れ気味に掌藤(たなふじ)からそう言われてしまう。

 これが沓田(くつだ)であれば単なる愚痴だが、彼女の場合完全に疑いに掛かっている。


 然もありなん。

 八朝(やとも)錫沢英丸(すずさわえいまる)の力は思った以上に似ているのである。


「ご想像の通り、俺は能力(ギフト)以外も使ってる

 詳しくはこの本が書いているから、取り敢えず読んどけ」


 あの棚から見つけた『カバラ魔術』の本を掌藤(たなふじ)に渡す。


「なーんだ、お前も七含人かよ」

「いや、七含人じゃなくて転生者だ」

「はいはい、そういう事にしておいてやるよ」


 取り敢えずは納得してくれたらしい。

 だが、手の内が明らかになった以上、彼女に敵対しないように立ち回る必要があった。


「そうなんですね……異能力じゃない異能力ってまるで鳴下神楽みたいですね」

「……そういう物なのか?」

「そういうものなんだよ

 あいつら能力(ギフト)が無い癖に平気でアタシ等を圧倒してくる……お前や錫沢(すずさわ)みたいにな」


 そう言われて八朝(やとも)は少し考えこむ。


 『カバラ魔術』を始めとした『異世界知識(オカルト)』と取り敢えず名付けた存在しない知識体系。

 それぞれは無関係のようで実は隠れた所で現代文明の成立に不可欠な存在と化している。


 なのにこの篠鶴市には現代文明の象徴たる端末(スマホ)が存在している。

 ……誰かが、意図的に隠している可能性に辿り着きそうになる。


『へへーん! すごいでしょー!』

「お前には多分言ってねぇよ、座ってろ」

『あたし端末だから座れませーん』


 エリスが屁理屈で軽く流してくる。

 それだけで日常が戻ってきた気がして、ほっと息が吐ける。


「……千早(ちはや)は?」

「何だ?」

「だから、千早(ちはや)はどうしてんだって言ってんだよ」


 掌藤(たなふじ)がそっぽを向いて妹の心配をしてくる。


「コイツが五体無事って事だから特に心配する必要は無い」

『あっ! 昨日はすっごく安くうどんが食べれたって驚いてたよー』


 それはそれで気になる情報だったので後程聞いてみたい所である。

 そして、掌藤(たなふじ)が求めていたものもエリスで正解だったらしい。


「そっか」


 そんな弛緩した空気に、突如錫沢英丸(すずさわえいまる)の断末魔が割り込んでくる。

 一番近くにいた柏海(かしみ)が腰を抜かして倒れ込む。


掌藤(たなふじ)、頼む!」

「言われなくても!!」


 本当は柏海(かしみ)の介抱を頼んだはずなのに、戦闘用の妖精(エルフ)を侍らせている。

 仕方なくエリスに介抱を任せて、八朝(やとも)も近寄る。


「これは……!?」


 錫沢英丸(すずさわえいまる)の周りの床がボコボコと泡立っている。

 その中に人型、ないし人の手や足型の塊が湧き出しては崩れ去るを繰り返している。


 その能力(ギフト)に心当たりがある八朝(やとも)が苦虫を噛み潰したような表情になる。


「だに……ぐらの……グゾせがれ……が……!!」


 血を吐くような錫沢英丸(すずさわえいまる)の断末魔で、予感が正しかったことを悟る。


灰霊(グラフィアス)の本名……十死の諸力フォーティーンフォーセズか……!」

「な……!?

 おい、『谷座(たにくら)』ってコイツが乗っ取る前の七含人番外(口寄せの一族)だぞ!?」


 錫沢英丸(すずさわえいまる)は湧いて出て来る人型の塊の沼に身体を侵され、絶命した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 DATA_LOST




xxxxxxxx xxx

  Chapter 40-b   召喚 - The Covenant




END

これにてCase40、七含人と口寄せの秘術(終)を終了します


というか、この一話で派手に散る事となってしまいました

(まぁぶっちゃけ彼らがいるとこの先の展開がクソ面d……)


ええ、最後に現れたのがCase7以来のあの人です

彼は5月初旬……ミチザネ事件で死亡しない限り恐ろしい災いを齎す事になります


主人公はまた巻き込まれるのか?

或いは、そんな異常事態から真実を掴むことが出来るのか?


それでは次回もよろしくお願い致します

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